Windows11更新物語
自ブログ用記事の転載です。
にっくきWindows11アップデートに立ち向かう勇者、実は私の話です。
別にこんな話をエッセイにするつもりは無かったのだが、経緯が予想の斜め上すぎということになり、これは世の中と共有した方がいい情報なのかもしれん、と思いエッセイのネタにするのである。
以前にも触れたが、私は自作PC派である。
無論、メーカー製PCにお世話になったこともあるし、ノートなどもたまに使う。
が、様々な事情で信頼できるマシンとなれば自作機一択になるのだ。
昔話をすれば、ノートPCはよく壊した。
キーボード始めとした部品が華奢すぎた。
そしてキーボードなんて部品はたった一つキーの調子が悪くなるだけで、途端に効率が下がり、イライラと血圧上昇を招く厄介者なのである。
そして自作機がメーカー製よりもいい点は、新旧の間でデータの引継ぎをさせるのが容易ということがある。
別にそれほど重要ってわけではないが、整理された状態のデータがあると便利なことは多いんだよね。今はクラウドでの保存も増えてるが、クラウドに上げるほどじゃないけど、やっぱり保存はしておきたいデータというのがかなり多いのである。大部分は、人に関する情報だ。長く会っていない友人のことなんか、PCに残っている古いデータが無かったら顔も忘れてしまうだろう。
うちに写真アルバムなんてないし。
なので旅の記録やら、家の税金関係、不動産としての情報、葬式に来た弔問客の名前と香典額とか、手元にあれば何かと助かるみたいなデータが豊富に埋もれているのがうちのPCなのである。
そしてもっと重要なことは、データを探す手間だ。
日常の使い慣れた一連の動作で、必要なデータが必要なタイミングで自動的に提示される、このことが一番大事なのだ。
アプリがいくら使い易く進歩したにせよ、「またイチから学習させろって、ありえねぇー」のである。
だいたい学習させるってことは最初の回は、こっちが膨大なデータの中からそれを見つけてやらなきゃならないわけで、適当に決めたパスワードとかIDを思い出すだけでも大騒ぎになるのが必定なのだ。
またこちらのアプリに対する習熟度がゼロにリセットされるというのも問題だ。
例えばワープロ一つとっても、実のところ、世に様々なワープロソフトが溢れていても、マニュアルを確認せず、直感だけで意図通りに動かせるものは限られている。
同じ事はPCで走らせる他のアプリにも言えるわけで、いくらAIがアシストしてくれる、と言っても、機材の更新をすると使い勝手が一時的に悪化するのは避けられない。
なので、全部新品に切り換えるなんてことは、百害あって一利無しの愚策であり、ちょっとずつシステムの進化を図るのが賢明と常日頃から考えていた。
なので自作機なのである。
こういう状況なので、マイクロソフトの行うOSの更新なんてのは、ハードにできるだけ手をつけずに行い、それの影響を見極めた後、ハードに手を入れていく、というのが言わば常道と考えていた。
ところがである。
おととしぐらいから、これに暗雲が降りかかっていた。
そう、悪鬼ウィンドウズ11である。
周辺機器、部品のリニューアルは頻繁に行っていたが、CPUのような中核部品は古いままだったので、当然ウィンドウズ11の要求する水準ではなかった。
そう、愛機のCPUはインテルi7-7700K、いわゆる第7世代プロセッサーと呼ばれるもので、ウィンドウズ11は第8世代以降のプロセッサーにのみ対応するとされていたのだ。
マイクロソフトという会社の戦略を信じ切っていた私からすれば、これは青天の霹靂だった。
なぜかと言えば、マイクロソフトは、例えばDOS世代ユーザーを切り捨てず、DOSプログラムが動くウィンドウズ3.1を発表し、大きくなった会社なのである。ライバルのアップルが新型を出す度に以前のユーザーを全切り捨てしていたのとは対照的なこの戦略のお陰で大企業へとのし上がった会社だからだ。
なので、世間一般でも私同様にかなりの驚きをもってこのウィンドウズ11の発表は受け止められたようである。
が、ウィンドウズももはや昔の威光はなく、いつまでも古い戦略に囚われていては競争に勝てないのであろう。
それにハードが問題とはっきりしているし、ウィンドウズ10用のアプリやデータが使えなくなるという話では無く、そういう意味では被害は小さい。
だからまあ、今までそれでやってこれたことで良しとすべきだと理解はしたのである。
問題はいかに上手にアプリとデータとハードで作られている今の調和を壊さずに、ウィンドウズ11へとアップグレードさせるかである。別な表現をすればウィンドウズ11に見捨てられたCPUを新しいCPUにしつつその他の一切を保存するか、である。
これが私の立てた対応方針となった。
ネットでのこの問題に対する世間の対応を見ていると、もっぱらウィンドウズ11が対応していないPCにウィンドウズ11を入れる、あるいは古いマシンのハードを今後も有効に活かすには、という視点での対応策を探ったものは多いようで、Linuxにシステム変更を提案していたり、非対応CPUであっても裏技でウィンドウズ11にアップグレードする方法などが取り沙汰されていたが、私のように、今のマシンの対応していないCPUをどうしたら対応しているCPUに入れ替えるか、という対応を探ったものは見あたらないようで、かなり難しいんだろうな、ぐらいな感触は持った。
慎重に考えをまとめると、こういうことになる。
まず、現マシンをウィンドウズ11に対応したCPUを持つPCへとハードを進化させる。
それが完全に機能したら、それをウィンドウズ11にアップデートさせる。
問題は、新旧入り交じった部品構成で互換性とか、ドライバーが対応しているかどうかだ。
また、様々な規格の進化で、物理的に組み合わせができるかどうかも入念にチェックしないとダメそうだ。
このような大まかな方針を決めたのは去年の夏頃で、そこからひたすらPCとPC部品の情報集めである。スペックがどう代わり、今どんな部品があって、どのような価格で売られているか、旧部品でネックになりそうなものは何か、などなどである。
そんな情報で頭が満杯になった昨年末頃、具体的なやり方が浮かんだ。
きっかけは昔々の自作をしていた時の失敗の記憶を思い出したことである。
ウィンドウズ3.1で、386などのCPUがもてはやされていた頃だ。
こども用に使う2台のPCの分解を同時にやり、組み付けの時にハードディスクを間違えてしまったのである。
どちらもマザーボードから最初に読みに行くブートドライブである。CPUの違うPCに、対応していないHDDをくっつけてしまったのだ。
ところが、動いたのである。
もちろん安定的に使えるというものではなく、ハードのドライバーソフトが合わないところが多々あったせいだろうか、いきなり落ちたりする、不安定な動作だったが。
当時は、ウィンドウズ自体の性能も悪いし、ハードの規格もまだまだ整っておらず、ドライバーソフトなんかも機器ごとに好き勝手やってるようなものだったから、この結果は当然で、むしろ、ウィンドウズが立ち上がったことの方がよほどの驚きだったのだ。
CPUとそのCPUを制御するチップセットは、CPUメーカーがセットで供給している。
両者は別の部品だが、命令体系では一体化していないとまずいからだ。
ただ、ハードのバリエーション要求が市場にあるので、それに対応するため、マザーボードメーカーが多種多様なマザーボードを作り出し様々なハードウェアに対応できるようにしている。
マシンに電気が通され、CPUが目覚めると最初に読みに行くのがブートドライブである。
CPUとブートドライブの間の交信というのは、昔も今も、
「机を用意しろ」
「命令の辞書を読め」
「ハードのデータを覚えろ」
の三つだけだ。
最初はCPUが理解できる機械語のわずかな固有命令だけで書かれたプログラムによって辞書を開く場所(机)を用意させ、そこにでっかい辞書を開かせて新しい言語と辞書を覚えさせる。終わったらさらに大きな机を用意させ、さらに新たに読み込んだ辞書と言語で理解できるようになったより複雑な命令文によって次のステップに移り、また同じように理解できるエリアを増やす。
これを延々と繰り返すことで、最終的にはウィンドウズが立ち上がったり、大きなメモリー空間に何があるか、さらにはネットワークの先に接続された機器の制御も可能になるわけである。
そして昔と違い、周辺機器の規格化は凄まじい。多少のアラはあるだろうが、昔のように地図もないジャングルの中をさまようようなことにはならないだろう。
問題になるとすれば、まさにブートドライブの最初の認識と読み出しのステージが、共通でないとまずいということだ。
つまりマザーボードと呼ばれる小さなハードが集められた空間だけをチップセットに理解させ、CPUにデータをつなぐ役割を担うすべての始まりを担うプログラムが重要なのである。
データはハードディスクにあり、これはそのままキャリーさせ、そしてそのデータを扱うアプリはすべてブートドライブ上にあるんだから、ブートドライブが共通なら使い勝手は同じになるんじゃね?
より細かく考えると、ブートドライブをちゃんとマシンが認識するかどうかがまず重要になるということだ。
昔の失敗の時、あれが動いたのはマザーボードメーカーが同じだったから、と個人的には思っていた。
それならチップセットとCPUを動かすBIOSというプログラムが同一かどうかが鍵ということになる。
うちの現マシンのマザーボードは、台湾のMSI社製で、MSIはCPU/チップセットの2大メーカーインテル、AMDそれぞれのマザーボードをたくさん用意されているが、BIOSについては、どれもこれもアメリカンメガトレンド社のものを使っている。
そして私の現用機にも同じアメリカンメガトレンド社のBIOSが入っていた。
これだけ多種多様なマザーボードを製作している会社が、個別モデル毎に命令セットの中身を書き換えるというような非効率はやらないだろう。
ということになれば、うちのブートドライブは、ハードの規格が合う限り、MSIのマザーボードなら動くはず、と目星をつけたのである。
なので通常の自作作業とは違い、私の場合は、現マシンのブートドライブ(M.2SSD)、SATAのHDDを活かすのが大前提で、そこからまずマザーボードメーカーがMSIに決定したことになる。
で、ウィンドウズ10/11がどちらも動くCPUを選び、それに合うメモリーやグラボを選ぶという流れになった。
さらに現用機の現代基準から見て欠けている装備の補充や能力増強も図りたい、となるのは当然なので、以下の対応を行うことにした。
電源ユニットの容量アップ、
動作が怪しくなってきていた光学ディスクドライブのリニューアル、
WIFIの高速化(WiFi4→WiFi6E)
グラボの高級化
などを行うことにした。
マザーボードの入れ替えのおまけで、USB3.2 type C ポート新設もある。
少なくとも拡張性に関しては現代の新品PCに準じるものになるはずである。
ただ、BIOSが同じメガトレンド社だから必ず動く、という保証はない。
これは私の過去経験からのカンによる見込みだ。
なので、最悪のケース、この場合は、データファイルは活かせても、アプリの方はほとんど使えなくなる可能性が高いが、既存のブートドライブから立ち上がらなかった場合に備え、予備にウィンドウズ11のクリーンインストールをするためのM.2SSDを別に用意した。
年が変わり、予算を慎重に考慮した末に選んだ部品が2月の頭には一通り揃った。新規購入する部品に対する予算はアバウト10万円というところ。
現用機を解体し、部品をはずし、新部品を組み付けていくのだが、この作業自体は、それほど時間はかからない。
が、スイッチオンで、画面がちゃんと出るまでの道のりが長かった。
まず、新たに購入した850W電源ユニットが、初期不良品だった。
このズッコケ感はちょっと筆舌に尽くしがたい。
もはやコントである。
何にも動かないのである。
反応ゼロ。
マザーボードにまったく電気がいかないのである。
なんだこれ、で原因をいろいろ探し、犯人はお前か、となるまで二日ほど費やす。
まさか買ったばかりの部品が悪いなんて思わないよね。こんなこと過去には一度も無かったし。
で、連絡したら、電源ユニットというのは修理というのはありえないらしく、新品交換となり、それが届いて再びスイッチオン。
今度は反応した。
だけどおかしい。
マザーボード上のファンは動くんだけど、それ以外動かず。
何で?
しかもすぐ止まる。
フラッシュメモリーってのがマザーボードにはあって、どうもそこに変な記憶が残っていると起こる現象っぽい。
これは昔なら、マザーボード上のボタン電池を外すことで直る話だったが、今のマザーはそんなことしなくても、2本の電極をショートさせるだけで、同じ効果が出せるようになっている。便利になったもんだ。
というわけで、それを実施。
あれ、やっぱ直らん。
いろいろ悩んで試して、最後の最後に原因判明。
なんと最初からマザーボードに収まっていたボタン電池そのものが不良品だったようで、測ってみたら電圧が全然出ていない。
安物電池を甘く見るなかれ。
こういうこともあるんか?
現用機の電池を引越させたら、ちゃんと起動した。
が、マザーボードの一画がピカピカ光ってる、てコレ何?
よく見たらCPUエラーの表示。
今時のマザーボードには、CPUとか基幹部品の健康状態をチェックし、ダメだとお知らせしてくれる便利機能があるということをこれで知った。
よかったじゃねぇ、なんだ、コレは?
トラブルが一人前である証拠に、モニターには出力が来ない。
ただ、待てよ、エラーと騒いでるこっちのマザーボードの故障ということもありえるのでは?
もはや疑心暗鬼状態になった私は、さんざん悩んだあげく、いや、もう変なボタン電池の時点でアウトでしょ、ということで、マザーボードの返品を決定。
ホントのところ、この辺で、私のメンタルはもうボロボロ、なんか永遠に完成に辿り着けないんじゃないかと思え、生きるのが辛くなってきたのである。
翌週、新たなマザーボード(MSI製)を受け取り、もういい加減、動いてくれ、と念じながら、スイッチオン。
結果、無常にもモニター出力無し。
今度は何?
CPUエラーを告げるLEDランプはまたしっかり点いてるんだよね。
となると、これは欠陥とか不良じゃなくて、正規の動作?
何でCPUを認識しない?
改めてMSIの公式サイトのFAQで公開されているありとあらゆる書き込みをチェック。
日本語は少ない、というか日本サイトには技術的な相談コーナーがなくて、本社のページへのリンクがあるだけ。なのでコメントは英語と中国語がほとんどだけど、中国語はお手上げなので、もっぱら英語のものを読んでいく。
M.2まわりでトラブルが多いようだが、症状はこれとは違うようだが……
M.2は現用機でもブートドライブに使っている、ソリッドステートメモリも使えるドライブで、従来のSATA接続のものよりもはるかに高速でデータのやりとりをCPUと直接できるという特徴がある。
だから当然なのかもしれないが、このスロットはCPUスロットに一番近い場所に置かれているのだ。
なので、M.2スロットに異常があればCPUの異常灯が点灯するというのは理解できる話なのだが……
もしや、古いマシンのブートドライブに使っていたものだと感づかれて、ダメ出しされた?
いやたかがマザーボードにそんな高度な知性があるわけがない、と気を取り直し、とりあえず、LED警告灯に関してはマザーボード上のCPUに近いエリアが影響しているみたいだな、ということで通電状態を維持しながらいろいろ出し入れを試す。
え、まさか、お前が原因?
実はウィンドウズ11導入ということで新たに用意していたTPM2.0モジュールというのがあって、よく分からんまま、CPUソケットのすぐそばにあるTPMソケットというところに突っ込んでおいたのだが、それがCPUの認識阻害をしていたのである。
それを引っこ抜いたら、とたんにLEDが消え、起動し始めたのである。
メール(英文指定です)でMSIテクニカルにTPMソケットの使い方教えろと連絡したら、すぐ回答が来た。
要するに古いマザーボードにあったTPMソケットと、今回の新しいマザーボードのTPMソケットは別物なのである。
ややこしいことに、ウィンドウズ11の要件とされたTPM2.0についてはこのソケットを使う必要は無く、BIOSの設定だけでクリアできるとのこと。
この新しいTPMソケットは新登場のTPM規格に対応したものだそうで、従来品との互換性はないというご託宣。
そんな話、初耳もいいところだし、だいたい話が紛らわしすぎる。
まあ、新旧モデルの間の綱渡り改造する人間しか関係ない話だから知られていなくても当たり前ではあるのだが。
とにかく意外な邪魔者の出現には驚かされたものの、目論見通り現用マシンで使っていた懐かしい壁紙のウィンドウズ10の画面が立ち上がったのだ。
アプリもデータファイルも元のままなんだから、CPUが変わっても画面は昔と何も変わっていないのである。
BIOSさえクリアできれば、という当初の考え方は間違っていなかったようで、ドライバーソフトで異常が検出されることもなく、CPUだけが見事ウィンドウズ11対応のものに置き換えることが出来た。
それにしても、今まで自作してきたPCの台数は10機を超えているはずだが、新品の不良品しかも複数に当たったことは無かったよ。品質管理は今どうなってるんだろう。
とにかくCPUの入れ替えは無事完了した。
さすがマイクロソフトと言うべきか、ウィンドウズ10状態で最初に立ち上がった後、ネット接続したら、その途端に、「このマシンはウィンドウズ11が適用可能です。ただちにアップグレードすることをお勧めします云々」みたいなメッセージがデカデカと表示された。まあ、こういう状態にするために今まで苦労してきたわけだが。
で、一通りの機能検査と調整確認し異常がどこにもないことを確認した後、いよいよウィンドウズ11へのアップグレード開始である。
M.2ソケットの高速性が寄与しているのが大きいのか、ダウンロードしてからインストール完了までの時間は、今まで経験してきたOSのアップデートより大幅に早くなったと思う。
で、22H2なるヴァージョンのウィンドウズ11になっていた。
で、何故か一晩ほったらかしで様子を見ていたら、翌日にはウィンドウズ11 24H2というものに進化していた。いきなり最新版にならないのは、何か理由があるのかな。
とにもかくにも、これでマイクロソフトからの早くアップグレードしないと不幸になります、というお知らせから解放されたわけである。
構想から実現まで半年以上かかっちゃったけどね。
なお、あくまでも個人の勝手な推測で行った対応である。
たまたまうまくいった特殊例という可能性もある。
逆に、こんなの実は当たり前だよ、ということなのかもしれない。私が知らなかっただけで。
とにかく、これを信じて何か損害を被られたとしても当方は一切責任を負わないのでその点よろしく。
ps. その後、最新24H2のヴァージョンにすると、WiFi接続された他の部屋のテレビ、スマホから写真や動画ファイルが見れなくなることが判明。こんな役立たずはいらん、ということで22H2に戻した。
なるほど、いきなり24H2にしなかったのは、マイクロソフトもこいつは危ないと思っていた、ということか。まったくこの会社は昔からお客をモルモットにしたがるんだよな。
ウィンドウズ11の最新版24H2については、いろいろと謎が多いようですが、本稿にて取り上げた動作不全の原因と思しき新たな情報を執筆状況報告させて頂いております。