番外編短編・女刑事の独り言
私は女刑事。自分で言うのも何だが、かなり優秀。キャリア街道爆進中。おかげでアラサーになった今も男の影はない……。
まあ、そんな事より仕事だ。
今はとある詐欺事件を追っていた。アラサーからアラフォーの多くの女性が被害を受けているらしい。詐欺師は「ワクチンが擬人化した存在」と訳のわからない事をいい、麻薬漬けにして判断力を奪い、結婚してあげると嘘をつき、騙しているとか。なお麻薬は料理に混ぜ、徐々に幻覚を見させているとか(まるで茹でガエルだ)。
高井歩美というブラック企業勤めのアラサー女も被害者。同時に加害者でもあり、会社の金を横領していた。正直、こういった事件は複雑だ。特殊詐欺にあった女性が、周囲から自己責任だと責められ、詐欺師になった事件もなかなか夢見が悪かった。
そうは言っても仕事!
高井歩美は現在行方不明。まずは彼女を追う事が事件解決の糸口になると思っていたところ。
家に帰ったら、不審者がいた。不法侵入だ。
相手はかなりのイケメン。背も高く、BLアニメのキャラクターのような雰囲気。
普通の女だったら、このイケメンにキャーキャー叫ぶかもしれないが、私は刑事だ。すぐに誰かわかった。あの高井歩美を騙していた詐欺師じゃないか。なぜ私の家へ?
考えられる事は一つだけ。私にハニートラップを仕掛け、事件を有耶無耶にしようとしているのだろう。実際、刑事が犯人に取り込まれ、事件解決が大幅に遅れたケースも知っていた。
「繭香さん、可愛いね。俺、ワクチンが擬人化した存在なんだが、行くところがないんだ。ねえ、助けてよ」
詐欺師は上目遣いをし、チョコレートのように甘い声を出していたが、騙されない。
男が一瞬の隙を見せた後、急所をつき、あっという間に倒した。
すぐに男は逮捕され、余罪も多数。高井歩美も撲殺し、田舎の湖に沈めた事も発覚した。
「バカだね。騙される方が悪いんだよ。高井歩美が死んだのだって因果関係不明だから。ふふ、ねえ、刑事さん、実はこれからまた疫病騒ぎが始まるんだが、次は茶番ではなく、水道水に……」
「うるさーい! 変なこと言ってないで、被害者に謝罪しなさい! この詐欺師!」
男はまともに供述せず、イライラさせられた。おかげでとても忙しい。プライベートでイケメンと会話する機会はますます遠のきそうだった。