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09 完璧な帳簿の謎

翔とフリーデリケは、軍の在庫管理と経理システムに対する徹底的な調査を始めた。王宮の書庫の静けさの中、彼らは過去半年分の物資受領書や支出記録を精査していた。


「フリーデ、これが第1中隊から提出された記録だ。」翔は書類を広げながら言った。「見てみて、受領日や数量に不備がある。」


フリーデリケは眉をひそめて確認した。「本当に、これでは正確な在庫管理は無理ですね。記録が杜撰すぎます。もっと他の部隊の書類も見てみましょう。」


次々と提出された記録を調べると、どの部隊にも記入漏れや数量の矛盾が散見され、フリーデリケの不安は増していった。「こんなに不備が多いとは、どういうことなのでしょうか。これでは物資がどれだけ消えているのか、全く分からなくなります。」彼女の声には、苛立ちと失望がにじんでいた。


「どうして、こんなにも管理が崩れてしまったのか…。」フリーデリケは額に手を当てながら思案に沈む。

無造作に積まれた他の書類に目を走らせた。

「まだほかの部隊の書類も確認してみるべきです。これが一部隊だけの問題でない可能性もありますから。」


二人は他の中隊の書類にも目を通したが、そこにも同じような記入漏れや、数量の矛盾が相次いで見つかり、翔の不安はさらに増していった。各部隊の管理は軒並み混乱しており、フリーデリケの頭の中に次第に、無駄遣いや横流しの可能性が浮かび上がってきた。


そんな中、フリーデリケはふと一つの書類に目を留めた。「翔、これを見てください。」彼女が指差したのは、第2大隊から提出された記録だった。「ここには、受領日、数量、使用用途が詳細に記載されています。過不足が一切ないなんて、本当に優秀な管理ですね。」

フリーデリケは書類を確認し、驚いたように瞳を輝かせた。

「すごいですね。こんなに完璧な記録、他の部隊の記録とは比べ物になりません。ちゃんと管理しているところもあるんですね。感心しました。」彼女はその記録の正確さに、思わず賞賛の言葉を漏らした。


だが、翔は微妙に眉をひそめ、首をかしげた。「いや、待て。これはむしろ不自然だ。戦争中は何が起こるか予測がつかない。前線では物資のやり取りが複雑化し、混乱は避けられない。物資が余ったり、逆に不足するのは当たり前なんだ。」


「それなのに、この書類には一切のミスがない。まるで事前に全てが計画されたかのようだ。」翔の声は険しくなり、書類を睨みつけた。「過不足がないということ自体、かえって怪しい。」


フリーデリケも、初めはその整然とした記録に感心していたが、翔の指摘を聞くうちに不安が芽生え始めた。「翔、あなたの言う通りですね。この記録が完璧すぎるのは、何かを隠しているからかもしれません。むしろ、完璧であること自体が異常です。」


「第2大隊に何かある。」翔は言い切った。「この部隊を調べる必要がある。何か隠されていることがあるはずだ。」


フリーデリケは翔の鋭い洞察力に感心しつつ、これまで以上に真剣な表情を浮かべた。


「この軍の会計担当は一体誰なのか、知っていますか?」翔がフリーデリケに尋ねた。


「ええ、確か…ノルテン地域の領主であり、ルドルフ伯爵のご子息で、ルイス大尉が担当しているはずです。」フリーデリケは記憶をたどりながら答えた。


翔はしばらく考え込んだ。「ルイス大尉か。彼の管理する帳簿の物資の量が異常だ。戦争が続いている中で、どうしてこれほど多くの物資が記載されているのか、非常に懸念される。」


フリーデリケは同意したが、すぐに少し沈んだ表情を浮かべた。「そうですね…。でもルイス大尉はルドルフ伯爵のご子息。彼を召還するとなると、伯爵家との関係にも影響が出るかもしれません。」彼女の声には、ためらいがにじんでいた。


翔はそれを察し、少し静かに答えた。「たしかに、簡単なことではない。だが、このままでは彼の信用も危うい。私たちがきちんと真実を調べない限り、噂や疑念だけが広まることになる。」


フリーデリケは沈黙し、深い考えに沈んだ。彼女にとって、貴族間の関係は王国の安定にとっても重要であることを理解している。「ルドルフ伯爵は王国に忠誠を誓い、多くの支援をしてくれています。そのご子息を疑うような行動は、伯爵を傷つけることになるでしょう。」


翔は冷静にフリーデリケを見つめた。「それでも、この問題を放置するわけにはいかない。私たちは、王国全体の利益を守らなければならないんだ。」


フリーデリケは小さくうなずきながら、「あなたの言う通りです。真実が何であれ、私たちの手で明らかにしなければいけませんね。」と、決意を固めたようだった。


「私が王宮の財務部門に連絡します。」フリーデリケはすぐに行動を起こすことを決めた。


翔は頷き、「私たちがこの不正を明らかにし、適切な対策を講じることができれば、王国全体にとっても利益になるはずです。」と続けた。


フリーデリケは王宮に向かう準備を整え、「すぐに彼を召還して、真相を明らかにしましょう。私たちの手で、この問題を解決します。」その言葉には、少しの迷いと、それでもやらなければならないという覚悟が混ざっていた。

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