表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/55

16 欲望が導く地獄

ノルデンの市場は、いつも以上に賑わいを見せていた。人々の声が響き渡り、商人たちの掛け声が混ざり合う中、特に目を引くのは食料の売買だった。市場の中心には、積み上げられた穀物や果物、干し肉が並び、それらは通常の価格の何倍もの値で取引されていた。


「本当に、こんな高値で買ってくれるのか?」


近づいてきた地元の商人が、信じられないといった表情で問いかけた。


翔は静かに頷く。

「もちろんだ。この値段で構わない。むしろ、もっと大量に用意してくれるなら、さらに上乗せしよう。」


商人は一瞬言葉を失い、目を輝かせた。

「そ、そんなに? こんなにいい話はない! よし、もっと集めてくるよ!」


翔は行商人と偽り、ノルデンの市場に入り込んでいた。彼の目的は、単に食料を買い取るだけではない。高値で食糧を買い占め、領内の備蓄を急速に消耗させる謀略を実行していたのだ。商人は半信半疑の表情を浮かべながらも、目の前の銀貨の山に心を奪われていく。


「これだけの量を買うとは、相当な金持ちだな…。」


翔は軽く微笑みながら応じた。


「価値は変わるものさ。今のうちに押さえておけば後で笑うのは俺たちだ。」


商人はその言葉に頷きながらも、まさか自分たちが策に嵌っていることには気付かない。翔は冷静に、市場全体が食料不足に陥る未来を計算に入れながら、着実に行動を進めていた。






翔がノルデンでの食料買い占めの報告を受けたとき、フリーデリケは静かに頷き、感心した様子で言葉を口にした。


「翔、高値で食料を買い取り、備蓄を減らす…そんな方法があったとは。さすがです。」


彼女の表情には驚きと同時に、彼の機転を称える感心の色が浮かんでいた。報告によれば、領民たちはこぞって食料を売り払い、予想以上の高値で取引されているという。それだけでなく、要塞にいる兵士たちさえも、個人で持っていた食料を売りに出し始めているとのことだった。


「要塞内の備蓄も減ってきているようです。領民たちも、いまは銀貨に目が眩んで喜んでいますが…やがて彼らの手元には食料が一つも残らないでしょう。」


翔は深い息をつき、続けた。


「これは領民にとっての地獄の始まりです。高値で食料を売ってしまえば、次に手に入れるのは不可能に近くなります。今は一時的な喜びに満ちていますが、その先に待つのは、飢えと苦しみです。」


フリーデリケも重く頷く。彼らの計画がうまく進んでいることに満足しつつも、これが領民にとって過酷な試練となることを理解していた。




お読みいただきありがとうございます! ブックマークや下の☆☆☆☆☆の評価にて応援していただけますと励みになります! どうぞ、よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ