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13 革新と怒りの狭間

翔はノートパソコンを操作しながら、国の財務データを次々と処理していた。彼の指先がキーボードを走り、複雑な計算が瞬く間に完了していく。フリーデリケは、その精密な作業に感心し、驚嘆の声を漏らした。


「まるで魔術みたいですね。あんな速さでデータを整理できるなんて。」フリーデリケは、目を丸くしながら感心していた。


翔は苦笑いを浮かべつつ答えた。「まあ、魔術みたいなものだよ。このノートパソコンのおかげで、作業のスピードが格段に上がったんだ。これを使って、これからの財政改革を進めていくつもりだ。」


「具体的には、どう進めていくのですか?」とフリーデリケは興味津々で尋ねた。


翔はノートパソコンの画面をフリーデリケに向け、流れるデータを指し示しながら説明を始めた。「まずは税制改革だ。国民に重税を課すのではなく、裕福な貴族や商人、特権階級に対して公平な課税を行う。贅沢品や豪華な建築には特別税を導入するつもりだ。さらに、税収が確実に国庫に納められるよう、徴税システムを強化して、ノートパソコンでリアルタイムに監視する仕組みを作ろうと思う。」


フリーデリケは考え込んだ後、少し厳しい表情で続けた。「それは確かに公平ですし、国全体の財政を立て直すためには理にかなっていると思います。でも、特権階級に対する課税強化となると、彼らからの反発は避けられませんよね。特に貴族たちは、彼らの富や権力を守ろうとするでしょう。」


翔は頷き、真剣な眼差しで彼女に答えた。「それは覚悟の上だ。改革には痛みが伴うことは避けられない。特権階級への課税が増えることで不満は必ず出るだろう。しかし、今のままでは国全体が破綻しかねない。彼らにもその現実を理解してもらうしかないんだ。」


フリーデリケは少し不安そうに翔を見つめながら言った。「それでも、貴族たちは自分たちの利益を守るために反発するはずです。特に影響力の大きな貴族ほど強硬な態度を取るでしょう。」


翔は眉をひそめ、口元を引き締めた。「わかっている。それに対しても対策を立てなければならない。だが、改革のためにはまず、課題をしっかり見据え、彼らに納得してもらうための根拠を示す必要がある。改革を進めるためにはデータが力になる。これだけの状況分析を示せば、彼らも無視はできないはずだ。」


二人は、その夜遅くまで改革案を練り続けた。特権階級への公平な課税制度、徴税システムの強化、そして国全体の財政を安定させるための手段が次々と立案された。翔はノートパソコンを駆使しながらデータを整理し、具体的な数値や計画を示しつつ、彼らの意志を固めていった。


貴族会議の日、翔とフリーデリケは財政改革案を持って、宮廷の会議室に集まった多くの貴族たちに提案を行った。会議は厳粛な雰囲気の中で始まり、翔が慎重に計画を説明する。


「皆様、本日は国の未来を担う重大な改革案を提示するためにお集まりいただきました。現状、この国は戦争の長期化により財政的な危機に直面しています。国を立て直すためには、税制改革が必要です。特に、裕福な貴族や商人の皆様には、公平な負担をお願いしたいと考えています。」


しかし、話が進むにつれて、貴族たちの反応は冷たくなっていった。


「特権階級に対する課税強化だと? 我々の富を狙っているのか?」と一人の貴族が憤慨した声で言い放った。


「そうだ、戦争で疲弊しているのは我々も同じだ。我々の財産を削られることが、国のためになるというのか?」別の貴族が追随するが、その声にはやや疑問を含んでいる。


「翔殿、贅沢品や豪華な建築への課税は、まるで我々の生活を攻撃しているかのようです。」と、別の貴族が少し皮肉を込めて言った。「我々は国の繁栄に貢献してきました。それを忘れてもらっては困ります。」


すると、ルドルフ伯爵が立ち上がり、厳しい口調で言葉を続けた。「翔様、我々貴族は長い間、この国の繁栄と安全を支えてきました。そして今、我々にさらなる犠牲を強いるというのですか? 貴族としての誇り、我々が築き上げてきたものは無視されるのでしょうか?」


伯爵の声にはただの不満ではなく、明らかな敵意が込められていた。

フリーデリケが翔に小声でささやいた。「伯爵は、ルイス少尉が銃殺されたことを根に持っています。それが彼の態度をさらに硬化させているのでしょう。」


翔は冷静に言葉を選びながら応じた。

「伯爵、あなた方がこの国に果たしてきた役割は大変重要なものです。しかし、今私たちが直面しているのは、国全体を救うための戦いです。。富の再分配は、国民全体の安定を図るために必要なものです。すべての階級がその重荷を分かち合わなければ、国は未来を失ってしまいます。」


「国を救うだと?」別の若い貴族が口を挟んだ。

「だが、国を守っているのは我々だ! 庶民に何ができるというのか? 我々こそが国を支えてきた。そしてそのために、命を賭けてきたのだ。なのに、負担は平等だと?」


別の貴族が鋭い声で追い打ちをかけた。「そうだ。庶民が何を知っている? 国を守るために戦っているのは我々だ。なのに、なぜ我々の財産が標的にされるのか?」


翔はその怒りを受け止めながらも、冷静なままであった。

「皆さんがこの国のために犠牲を払ってきたことは、十分理解しています。しかし、今我々が直面しているのは、この国全体を救うための戦いです。特定の階級が独占的に富を蓄え、庶民との格差が広がることは、国家の分裂を招く危険があります。だからこそ、共に国を再建するために、全員が力を合わせるべきなのです。」


ルドルフ伯爵は依然として怒りを込めたまま言った。

「我々が築いてきたものが脅かされていると感じるのは当然だ。贅沢品への課税と言っているが、それは我々の文化や誇りに対する攻撃にほかならない。財政改革の名の下に、我々の地位を奪おうとしているのではないのか?」


翔は穏やかに答えた。「誇りや文化を守ることが重要であるのは理解しています。ですが、それを維持するためには、国全体の安定が必要です。私は、皆さんの協力を得てこの国を未来へと導きたいと考えています。」


伯爵は沈黙したが、その表情にはまだ怒りの色が残っていた。他の貴族たちも口々に反論を続けた。


「翔殿、この改革案は、私たちの歴史を否定することになりませんか? 我々の貢献が報われないなら、今後も国に尽くす理由がありません。」


翔は深く息を吐き、毅然とした態度で言った。「改革は必ず痛みを伴います。しかし、皆さんの力がなければ、国を救うことはできません。どうか、その未来のためにご理解を賜りたい。」


貴族たちは互いに顔を見合わせ、戸惑いや反感を浮かべつつも、議論は終わらなかった。


会議が終わった後、フリーデリケは翔に近づき、心配そうに言った。

「彼らの反発は予想以上に強いですね。特にルドルフ伯爵の影響力が大きい。このままでは他の貴族も彼に同調してしまうかもしれません。」


翔は疲れた表情で頷きながらも、決意を新たにした。

「そうかもしれない。しかし、どんなに反発があろうとも、改革は進めなければならない。国の未来のために、そしてすべての国民のために。」


二人は今後の対策を練り直す必要性を感じ、会議室を後にした。


後日、フリーデリケと翔は静かな書庫で税制改革について話し合っていた。外では秋の冷たい風が吹き、窓にわずかな雨が叩きつける音が響いていた。二人の会話も、どこか重苦しい空気に包まれていた。


「特権階級への課税案、これが国を救う一歩になるかどうか…」翔がため息混じりに呟いたその時だった。


突然、書庫の重い扉が勢いよく開かれ、一人の兵士が息を切らせて駆け込んできた。顔には緊張と焦燥の色が浮かび、額には汗が滲んでいる。


「フリーデリケ様、急報です!」兵士は荒い息の中で何とか声を絞り出した。「ルドルフ伯爵が…ノルテンで反旗を翻しました!」


一瞬、時間が止まったかのような静寂が二人を包んだ。フリーデリケは信じられないという表情を浮かべ、唇が震えた。翔も言葉を失い、目の前の兵士を凝視した。



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