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12 異世界の電源

夜の静けさが王宮に広がり、翔はいつものように部屋の中で腰掛けていた。扉を軽く叩く音が聞こえ、彼は顔を上げた。


「翔様、失礼いたします。」

エリスが静かに部屋に入ってきた。彼女は毎晩決まった時間に訪れるようになっていた。

これがいつものことで、特別なことではなくなっていた。エリスも慣れた様子で、笑顔を浮かべながら翔に近づく。

彼女は丁寧に服を脱ぎ、翔の横に寄り添った。身体が触れ合い、温かさが感じられるが、翔はその感覚にももうすっかり慣れていた。彼女を抱くことは、彼の日常の一部として自然に受け入れていた。

エリスは翔に寄り添いながらも、時折優しく微笑んでいた。彼の体調や仕事の進み具合について、何か気遣いを感じさせるような言葉をかけることもあったが、翔はそれを特に深く考えることはなかった。ただ、彼女がそこにいることが当たり前になり、夜伽の時間もまた、彼の日々の一部として機械的に繰り返されていた。


翌朝、朝食の席でエリスが慎重に声をかけた。「翔様、お仕事は順調ですか?」


翔はパンを一口かじり、頭をかきながら答えた。「正直、進んでない。ソロバンは子供の頃に習ったけど、もう指が覚えてないし…」


この国にも、ソロバンのような計算器具は存在していた。役人たちはそれを使いこなしていたが、計算自体は効率的とは言いがたく、複雑な計算が増えれば増えるほど時間がかかる。そして何より面倒なのは、計算結果をすべて紙に記録しなければならない点だ。


「こっちでは計算って言うと、だいたいあのソロバンみたいなやつを使うんだろうけど、データを全部手で紙に書き写すから、管理が大変なんだよな…」翔はため息をついた。現代では、すべてデジタルで管理し、ワンクリックでデータを集計できるが、この国では紙束の山が増えていくだけだ。


「もっと効率的な方法があれば、仕事も進むんだけど…」と、翔はつぶやいたが、この世界ではそのような技術はまだ存在しない。彼の頭には転生時に持ち込んだノートパソコンのことがちらついていた。「あれが使えればな…」と、ふと思うが、電気のないこの世界ではただの重い鉄の箱にすぎない。


エリスは翔の困惑を察しつつ、そっと彼を見つめていた。


エリスは翔のつぶやきに首をかしげ、不思議そうな表情で問いかけた。「あれとは…何のことですか?」


翔は一瞬ためらいながらも、少し笑って言葉を選んだ。「ああ、俺がいた世界の道具なんだ。ノートパソコンって言って、いろんな計算や記録を一瞬でできる便利なものなんだけど、バッテリーがきれてるんだよね…」


エリスは首をかしげた。「バッテリー?」


翔はため息をつきつつ説明した。「バッテリーってのは、俺たちの世界で使われてたエネルギーの一種で、ほとんどの道具や機械はそれを使って動くんだ。だけど、ここにはそんなエネルギーがないからな…」


エリスは少し考え込むようにしてから言った。「それなら、魔石でなんとかなるかもしれません。魔石はこの世界で使われる動力源です。魔術学校にいる私の幼馴染がその魔石を扱っています。後で一緒に参りましょう。」


翔は少し驚いた。「魔石で…?それなら電力代わりに使えるかもしれないな。よし、頼んでみよう。」


翔とエリスは魔術学校へ向かい、エリスの幼馴染であるリリィに会った。リリィはエリスと同じ年頃で、明るい笑顔が印象的な女の子だった。

リリィは、柔らかな青色の魔法学校の制服を身にまとっていた。その制服は、胸元に大きな金色のボタンが飾られ、シンプルながらも高貴な印象を与えている。彼女の背中には、軽やかなマントがかけられており、マントの内側には魔法のシンボルが刺繍されていた。マントが風に揺れるたび、そのシンボルがきらりと光を反射して美しい。


「エリス、久しぶり!」リリィが元気に声を上げると、エリスも嬉しそうに応えた。「リリィ!元気そうね!」


翔は二人のやり取りを見ながら、少し緊張していた。リリィに頼むのは、ノートパソコンを動かしてもらうことだ。彼女が魔石に詳しいと聞いて、翔は期待を抱いていた。


「ねえ、翔さん。何を動かしたいの?」リリィが興味津々で尋ねた。


「これなんだ。」翔はノートパソコンを取り出して見せた。リリィは目を輝かせてそれを見つめる。「すごい!これがノートパソコンなの?どうやって動くの?」


翔は説明した。「このノートパソコンを動かすために、魔石を使いたいんだ。電力の代わりになるってエリスが言ってたから。」


リリィは頷きながら、「それなら、私が詠唱してみるね。」と言って、魔石を取り出した。

「おお、ついた…」翔は驚きながらも、ここが異世界であることを再確認した。「これで仕事が一気に進むぞ。」


ネットも使えるようだが、どこかの異世界のようなネットスーパーは存在しないらしかった。異世界メシは出来ないみたいだ。それでも、これで仕事が飛躍的に進むことは間違いなかった。



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