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「なんて斬新な注意喚起なんだろうって思ってた」と心優しい同僚は語った

作者: さとう あか

 私はOL、しがないOL。特にスキルがないので秘書検定二級を勉強中のOL。でもこんな舌打ちしたい時もある。


 チッ。


 現在秘書検定を勉強中の私は誰にも聞こえぬように心の中で舌打ちをする。決して周りに聞かれないように。


「3人も貯金してボーナスが出れば買えるわよ!」と某ハイブランドの五十万はするバックを見せつける。


 何回も聞いているので大丈夫でぇ〜す。と大声で言い返したかったが、腐っても先輩なのでそうはいえなかった。


「じゃ、お先〜」


 ブランドバッグを見せつけるようにしつつも大事に抱えて先輩は帰っていった。


「何回、聞かせるつもりなのよ」

「ホントだよ」


 そう同僚と話しているともう一人の心優しい同僚が諌めるように言う。


「いや、私たちのこと心配して何回も言ってくれているんだよ」


 あの話を聞いてなんでそんな気持ちになるのだろうか。私は『自慢ばっかして他に話すことないのか』なんて気持ちにしかならない。同じような気持ちになったのは私だけではないようだった。


「なんでそうなるの」

 

 と、もう一人の同僚が確認するかのように問いただす。


「いや、だってあれレプリカでしょ」

 

 なんてことないように心優しい同僚は言葉にして放った。サラッとなんの気もなく放った言葉に一拍反応が遅れた。え、どういうこと?


「SNSで注意喚起みたよ」


 そう言って彼女が見せたのは県警のSNSだ。

 ほんとだ。先輩がもっていたような某ブランドバックがのっている。


「ここのつくりとかそのまんま」


 そうやって見せてくれた箇所に私は驚いた、あの先輩が持っていたバッグそのまんまだった。やばい!ほかにいうことあるだろっていう気がするけど驚きすぎてやばい、しか言えない。見せてくれた比較の画像を見ると本物と先輩の持っていたレプリカの差が大きい。ヤバい、エグい。なんて言葉しかでないくらいに。


「なんて斬新な注意の方法なんだって思ってた」


 本当に注意の為だと思っていた同僚はどうすればいいのだろうか、と少しばかり悩んでいるようだった。同僚の悩みとは裏腹に、私たちはあれだけあったイライラや先輩への怒りがしぼんでいった。そして新たにざまあ、と大声で笑いたい気持ちでいっぱいになった。


「言ったほうがいいのかな」


 そう心優しい同僚の彼女は心配していた。だが、私の心は決まっていた。それは私だけではなくもう一人の同僚も同じようだった。


「私たち後輩がいうとかえって気を悪くさせるかもしれないしさ」

「そうそう、そしてこんなにSNSとかで周知されているんだからそのうちわかるんじゃない?私たちが言わなくてもさ」


 後輩に注意されて素直に受け取る人ではないことは確かだし、それが今まで散々自慢してきた某ハイブランドのバックのことになれば余計にこじれる。それに我々が言うよりも本人がニュースや何やらで知るほうが傷は浅いのでないだろうか。それに、散々自慢しているものが真っ赤な偽物でそれを後輩に指摘されたとあってはこれからの会社での生活に関わってくるのかもしれない。そんな保身もある。

 心優しい同僚はどう捉えたのかわからない。


「それもそうだ」


 が、あっさり肯定した。

 

 今までの先輩を知っているからなのか、できれば関わりたくないのかもしれない。指摘したら『なんでもっと早く教えてくれなかったの』と理不尽に詰め寄られるかもしれない。



 次の日も、またその次の日も。先輩はレプリカのバックを自慢した。

 こうやって模倣品はよくできているから気をつけるように、と実物付きで注意してくれている。そう捉えられたので、自慢うぜーと思っていた話を心穏やかに聞くことができた。


 一月経った今では、いつになったら気づくのだろうかということでサワサワしている。ニュースを確認するは大事なのだと現在進行形で身をもって実感している。




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― 新着の感想 ―
[良い点] こういう事例に近い出来事を身近で体験した事があるので、楽しく読めました。 [一言] SNSで注意喚起されるぐらい有名なのに気づかないのは中々だなぁ。
[良い点] 面白かったです。 先輩は知らなければずっと幸せでいられるのでしょうが、 おそらくは知ってしまう日が来るのでしょうね。
[一言] わかる!共感ですわ! 私の先輩は、ド○キで偽物買って気づいてオコでした。 先輩はバックの中身入れ替えが面倒で程良いバックを買う人。 私は読書等で重いのでバックは軽い物派。 当時は、先輩のブラ…
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