初めての部活動と、二分探索
「それでは、今からケーキ同好会最初の活動を始めたいと思います!」
「わーわーぱちぱち」
わーわーぱちぱち。ひまり先輩の部活の名前、ケーキ同好会って言うんだね。知らずについてきちゃった。
「ひまちゃん、最初の部活動は何をするか決めてるの?」
「さっきゆいちゃんと出会ったときに決めたよ!スノーボールクッキーを焼いていきます!」
「ケーキ同好会とは」
哀先輩が呆れたように言う。
「メカ部製の世界に一つだけのオーブンで作る、世界に一つだけのスノーボールクッキーですよ哀ちゃん、おいしくない訳がありませんねー」
「そういう結論にはならないような......というかメカ部の発明とか危険物じゃん、オーブンくらいちゃんとしたものを使ってください」
メカ部の発明が危険物?メカ部が大変危ない部活であることはなんとなく察することができた。メカ部の勧誘は無かったから部室の場所は知らないけど、近寄らないでおこう。
「ということで、メカ部オーブンを1番最初に使う栄誉ある人をじゃんけんで決めたいと思いまーす」
「そんなに嬉しそうなのはひまちゃんくらいだよ...」
じゃんけんは、私がパー、ひまり先輩と哀先輩がグーで、勝ってしまった。誠に遺憾です。
「うぅー負けたー」
「そんなに悲しいならゆいちゃんと代わってあげたらいいのに」
私も替わってほしいです...
「いや、約束事は絶対だよ、友達や先輩後輩の関係だからこそ細かいことをちゃんとしないとね」
残念。ひまり先輩が大げさにしくしく泣くジェスチャーをしながら、丸めたクッキーの生地を私の前まで運んできた。
「ゆいちゃんにはこちらの生地をオーブンで焼いていただきます」
「メカ部の発明は要らない機能がついてるから気をつけて。怖かったらひまちゃんが責任をもって元居た場所に返してくるから」
「わんわん!」
レシピにはオーブンで160°Cと書いてあるけど、このオーブンには温度を指定できそうなダイアルはなさそう。オーブンって直接温度を調整することはできないのかな?
いや、もしかしたらワット数と温度を相互変換するスキルは人類に標準装備なのかもしれない。しかし私の中ではこれがオーブンではないという説の方が濃厚である。メカ部って怖いね。一応聞いてみよう。
「このオーブン、2e9Wって書いてあるんですけど、何Wに設定すればいいですか?」
「オーブンを何Wに設定すればいいかわからない?フッフッフ、心配することなかれ」
「あーあ、ひまちゃんの競プロスイッチ入っちゃった」
ひまり先輩が軟体動物もびっくりのくねくねした動きでこちらにやってくる。ひまり先輩はいつもこんな感じで面接を受けるときとか困らないのだろうか。面接官をあだ名で呼んで落とされそうで心配になる。
「ゆいちゃんに競技プログラミングの伝家の宝刀を伝授したいと思います」
「ぷろぐらみんぐ」
「まずはマックスのちょうど半分のところにダイアルをセットしてみよー」
なるほど、未経験者にいきなりプログラミングさせるほどやばい部活ではないらしい。そもそもこの部活ケーキ同好会だもんね。ぷろぐらみんぐ関係ないよね。やばい部活はメカ部だけで十分だよ。
そう考えながらダイアルをちょうど半分の1e9と書いてあるところまで回し、オーブンを15分にセットした。
その瞬間、部室に閃光が走り、私たちはオーブンの爆風で吹き飛ばされた。
「」
「」
「知ってた」←哀さん