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懐古

 その日は、少しばかり暑い日だった。


 高校の創立記念碑のそばに腰を下ろして、木陰で涼むことにした。グラウンドに降りていく新入生の集団を眺める。友達を誘って部活動体験に行くのだろう。グラウンドの隅は、上級生の部活動を見学する新入生でにぎわっていた。


「どうしたの?」

私が一人で座っていたからか、心配して声をかけてくれたのだろう。

「暑かったので、涼んでいたところです」


彼女は私の横に座る。

「名前は、なんていうの?」

「灰崎ゆいです」

「私のことは、ひまり先輩って呼んでね?」


彼女はすれ違う人一人一人と挨拶を交わしながらも、私を気にかけてくれているようだった。


「部活動体験、行った?」

「何個か。でも、どれも私には合わなかったです」

「そっか」


彼女は、少し申し訳なさそうな顔を見せた。

しばらくの後、彼女は何かひらめいたようだった。


「もう帰る時間だったりするかな?」

「別に、大丈夫ですけど」


桜の花びらを躍らせる新しい風が、何かの始まりを予感させた。


「もしよかったら、私の部活に遊びに来ない?まだ人が集まってないから、本当は同好会なんだけどね」


私が困っているのを見て、彼女は私が決断をするのに十分な情報がないことに気づいたようだった。


「よし、私の好きな、スノーボールクッキーを一緒に作ろう!絶対おいしいから、先輩が保証します!」

「いいですよ」


本当は帰るつもりだったが、それでも誘いに乗ったのはほんの気まぐれだった。


「あ、ゆいちゃん、はやく行こう!哀ちゃんと部室の整理する約束してたの忘れてた!」

彼女は私の手を取って、走り出した。


今思えば、この日が、私の人生の分岐点だった。

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