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ガウェイン殿下毒舌 精神を苛む

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。

 




 怖いと思った。

 こんな怖い事を平然と言うガウェイン殿下。

 誰だよ。穏やかで優しい人柄だって言ったのは………

 静かに、とても静かにどこか遠くを見ているガウェイン殿下。

 その目はとても澄んでいて、先程までのセリフが嘘のようだった。

 スッと私達を見る。

 ユリウス殿下は怒りと嫌悪を抑えようと必死だった。

 マーベルに至っては私をギュッと抱きしめている。

 この抱擁は私の為なのか?それともマーベルの精神的なものなのか。

 そんなものどうでもいい。

 ただ疲れた。

 ここ最近ホントへとへとだ。

 でも調べれば調べるほど胸糞悪くなる事ばかり………


 ”手を緩める暇もないじゃない”


 ホント精神的に追い詰められる。

 この状況をホントどうにかしなくてはと焦るばかりだ。



 ガウェイン殿下はフウとため息を吐くと


「ねぇ。ちょっとお茶にしない?さすがに喋り過ぎて喉が渇いたよ」


 苦笑交じりに席へ促した。

 私達は話を聞いている間、座ったり立ち上がったり歩き回ったり大変だった。

 だって黙ってジッと聞くには辛すぎる内容だったから………

 ユリウス殿下はずっと座っていたけどね。

 こうしている間もチヨちゃんが心配だ。

 一応チヨちゃんの両親と騎士団長がいてくれるけど、奴らがどこかに潜んでいそうで全然安心できない。



 私がソワソワしながらドアをチラチラ見ている事に気づいたのだろう。


「ごめんねリディアーヌ嬢。チヨちゃん達が心配だよね。わかるけど、もう少し付き合ってくれないかな」


 困ったような顔をして、私を見るガウェイン殿下。

 でも実際相談を持ち掛けたのは、私たちなのだ。

 それに私達の相談は、まだ何も解決していない。


「ガウェイン殿下、申し訳ありません。こちらから相談をしておきながら、このような態度で」


 私は頭を下げて謝罪する。

 ガウェイン殿下によって、向こうの考えが多少わかった。

 これからどうすればいいのか、どうしなければならないのか。

 私達は相手よりも先に進み、阻止しなければならないのだ。



 私達はテーブルつきお茶を飲む。

 リラックス効果のあるハーブティー。ガウェイン殿下の側近が気を利かせて入れてくれた。

 私は側近たちに感謝の意を示す。

 ホント精神(こころ)がささくれ立っていたのだ。

 ユリウス殿下も飲んだ後ホッとため息をついていた。

 マーベルもそうだ。

 皆いろいろと疲れている。


「ホントこの状態は余り国としても良くないよね。全体的に後手に回っている気がするよ。その辺はどう思ってるの?兄上??」


 ガウェイン殿下は心の中を覗き込むような眼差しを向けた。

 それに対してユリウス殿下はとても静かに、でも毅然とした態度で見つめ返す。


「兄上気づいてる?僕は他にも気になる事があるんだ。どうしてそんなに古の地の一族は減ったの?いくらボクワイが馬鹿だとしても、繁殖管理ぐらいするんじゃないかな?だっていなくなったら、元も子もないのだから」


 やっぱり口から出てくる言葉はクソだった……

 とても短い穏やかな時間でした。

 側近の方は申し訳なさそうに頭を下げる。

 所詮王族だ。

 ガウェイン殿下もそういう意味ではマイペースなのだろう。

 両脇に座る男どもの空気は一気に悪くなる。

 ハア~……繁殖管理って………

 もう嫌になる。何もかも投げ捨てたくなる。

 でもチヨちゃんがその対象。

 腹の底から憤りを掻き立てられる。


 ”一体女を何だと思っているのかしら!”


 久しぶりに悪役令嬢リディアーヌ見参!!


「フフフ許しませんわ。ええ、目にモノを見せてくれますわ」


 そうよ。ホントに後手に回っているのですわ。

 何故ですの?マリエ夫人はちゃんと先回りしたのに可笑しいですわ。

 誰か修正しているヤツがいるのだろう。

 私はスッと目を眇めて考える。


「なんだかリディアーヌ嬢が変わったね」


 面白そうに見ているガウェイン殿下。

 側近は遠い目をして笑っている。

 何だか失礼ですわね。

 そう思いながら両脇の二人を見る。

 二人は私を見て、なぜか助けを求めているように感じるのだった。


 ”ホントにこの二人は………”


 ガウェイン殿下みたいに、苛烈になれなず何処か甘さのある二人。

 そのいい例が、乳母の命を取らなかったという悪手だ。


 ”あれは案外失敗だったかもしれませんわね”


 なんとなくそう感じてならない。

 彼から見た乳母はどんな人物なのだろうか?

 チラッとガウェイン殿下を見る。

 何処か愉しげに私を見つめている。


「ガウェイン殿下質問ですわ。貴女から見たユリウス殿下の乳母はどんな方ですの?」


 そう質問するとホントに愉しそうな顔をして笑った

 。




 ******************




 ガウェイン殿下は言う。

 ユリウス殿下の乳母アマラは、見た目は弱弱しい眉を下げた困った顔がトレードマークのような老女だった。

 ハルアナ王女もユリウス殿下も苛烈で独善的な性格をしているから、それがより際立って目立つ。

 アマラだけじゃなくその娘カロリーナも、儚げで大丈夫ですからが決まり文句な女性。

 その姿を見染めたのが、次期宰相予定のクレメンテ・ドラノア侯爵だった。


「クレメンテはホントに気の優しい男なんだ。それこそ捨て猫を拾って帰るような人物だ。だからストーリーに出て来るクレメンテには違和感を感じる。」


 確かに捨て猫を拾うなって貴族では珍しいですわね。


「屋敷にはそりゃあ沢山の猫がいるらしい。よく子猫いりませんかと同僚に聞く姿を見ていたよ」


 ガウェイン殿下は思い出すように話す。

 しかしそんな姿もカロリーナと結婚してからあまり見なくなる。

 いつも何処かコソコソし、辺りを窺うような素振りをする事もある。


「変だなと思ったよ。だから何度か猫の話を振ったんだ。」


 でも返ってきた答えは()()()()()()()()()


「理由が子供が生まれるからだって言ってたけどね。肝心の子供はいないよね?」


 とにかく変な違和感から、カロリーナをよく観察するようになる。

 それによって面白い事がわかったそうだ。


「これは僕しか知らないことかもしれないね。」


 そう言って書類を渡される。

 そこに書かれている内容は………


「カロリーナがボクワイ先王の娘……… 」


「フフフ…… 子供のお遊びで調べた割にすごい内容だよねー♪」


 とても自慢げで楽しそう。

 という事は乳母は先王の愛人関係となる。


「ホントに面白いだよ。ハルアナ王女が苛烈の割に、あの二人に逆らう事がないんだ。むしろ逆らう隙を与えないんだ。困ったようにしながらね。兄上はホントに気付いてなかったよ」


 それを聞いてユリウス殿下は顔を青ざめる。


 ”やっぱり悪手だったんだわ。”


 私はため息しか出なかった。



 私は心に誓う。

 チヨちゃん、わたしは時に暗殺者にもなりますわ。

 あんな不気味な事をされるなら全て破壊し尽くしますわ。

 ええ、ボクワイなんて国必要ありませんの。




「それにね。これはさっきの話の続きになるかもしれないけど、マリエ夫人は子供を二人も生んでいる。ついでに黒髪だ。チヨちゃん何て真っ黒だ。この違いは何だろうね?ボクワイが欲しい子供が二人も生まれたんだもの。」


 つまりマーベルも狙われている。


「お前は何を言いたいんだ?」


 ユリウス殿下はガウェイン殿下を睨みつけている。

 マーベルもそれは同じ。


「ホントに気付いてないの?答えはとっても()()なものなのに」


 そう言って嗤っているが、ホントに何だろう。

 私も答えがわからない。


「ガウェイン()()というのは、あのバカげたセリフのことか?」


 ユリウス殿下は挑む様に言っている。

 えっ?あのキャッチフレーズがなに??

 ガウェイン殿下はせせら笑う様にいうのだ。


「兄上相談内容だけど、それこそ二人だけの世界がより安全なのかもしれないよ。その方が世界はより美しく見えるはずさ」


 そしてマーベルを見て言う。


「君だってそうさ。君も狙われている。という事は君の相手だって、一緒に狙われるのさ。一緒に地獄に堕ちるんだ。だからね。ゲームの君は正しかった。逆ハーレムだから安全なんだよ。もちろんそれは、兄上も同じだけどね。ホントにゲームの君たちはとても賢い」


 そう言ってほほ笑んだのだった。


 マーベルは私を見ている。

 そりゃそうだろうな。

 一緒に地獄に墜ちてくれとも言われるのかしら。

 何か私に応えを求められてもね。

 男どもはガウェイン殿下に撃沈された。

 つまりだから、会いに行きたくなかったのだろう。

 ココは私が頑張るしかないのですわ。

 男どもは役立たずだ。



「ガウェイン殿下、余り二人を苛めないで下さい」


 私は一応窘めた。

 実際ここ最近二人は頑張っているのだから


「フフフごめんねリディアーヌ嬢。どうしても腹が立ってね。だって乳母は生きている。おかげで全て後手に回っているんだ。殺せばカロリーナを担ぎ出す絶好の機会を兄上は潰したんだ。」


 確かにそうだから何とも言えない。

 そんな二人は機能停止状態に陥っている。

 ホントため息しか出ませんわね。


「この二人は今ほっときますわ。とにかく…マリエ夫人が狙われる理由は何ですの?いえ違いですわね。何ですの?」


 ガウェイン殿下は静かに私を見ている。

 見透かすような澄んだ目をしているが、その目が少しづつドロッと濁りを増していく。

 それは余りにも気持ちいいものではない。


「リディアーヌ嬢はホントにチヨちゃんを助けたいんだね。僕はそんな君を尊敬するよ。この二人は余りにも役立たずだ。君がいてくれてホントによかったと思うよ。そうだね。後はマリエ夫人だけど、前のマリエ夫人が答えているんだ。君たちはそれに気づいていない」


 答え??前のマリエ夫人???


「マリエ夫人は言ったじゃないか。子供は産みたくない。でも生まれて嬉しい。だけど悲しい。それそのものが答えなんだ。愛している人の子供ができるのは嬉しい。でもそれによって悲しい事が起こるから子供は産みたくない。どうして古の地一族は減ったんだろう。それは愛している人と子供を作れないからじゃないの?それこそ「子供は愛の結晶」ってものじゃないの。」


 た、確かに陳腐ですわね。//


「だからリディアーヌ嬢。貴女に聞きたい。マリエ夫人がいなくなった後グラッセ侯爵はどうなったの?僕はそれが気になるんだ。」


 ガウェイン殿下に言われて目を見開いた。

 ギルバート侯爵は気落ちして生活破綻者となり廃爵、その後はわからない。

 いや待って、いつ頃廃爵になったの?

 というか存在感そのものがあいまい………

 もしかして侯爵もマリエ夫人の後連れ去られた。

 私はゆっくりとガウェイン殿下を振り返る。


「やっぱりそうなんだね。という事は、兄上も手の上で転がっている様なもので、ついでにマーベルにも番ができてボクワイは嬉しいって事なんだ。チヨちゃんだけじゃなくて、君たちの身の安全も考えないといけないじゃない?と僕は思うけど」


 私は茫然とした。

 だってチヨちゃんとマリエ夫人を守ると思っていたのに


「リディアーヌ嬢。言っていいものじゃないけど、繫殖させようとするならペア飼育が基本じゃないかと思うんだ。相性もいいからね。」


 私はガウェイン殿下の言葉を遠くで聞きながら、地獄の扉が足元に開いたような錯覚を覚えた。



 そんな私を包み込むように抱いたマーベル。

 申し訳なさと悲しさで泣いている。

 それが私には引き裂かれる様にツラい。

 だってマーベルは馬鹿みたいにヘラヘラしているキャラなのだ。

 こんな泣いている姿なんて見たくない。

 必死に抱き締めて、泣きながらごめんて謝っている。

 ユリウス殿下も怒りに溢れていた。

 今までの比ではない。

 だってそうだろう。まさか踊らされていたなんて………

 自尊心の強い人なのだ。

 私だってこんなに腹が立ったことはありませんわ。

 人を何だと思っていますの。何様ですの??

 それも、他国に対してする事ではなくってよ!!

 そんな私達を見ながらガウェイン殿下は言った。


「君たちの怒りは凄くわかるんだ。だって僕も凄く怒っているんだよ。我が国を何だと思っているんだろうね。養殖場とでも思っているのかな?それにゲームの僕を想うと凄く悲しくなるんだ。どれだけ悔しさと無念さに倒れたのだろうってね。僕の手で民を幸せにする事も、何も出来ずに逝ってしまうだ。それまでの僕の努力も想いも、自分勝手な欲で無理やり奪われる。絶対許さない。ここまでコケにされて許される訳ないじゃないか。」


 そう言うとスッと私達を見る。

 凄まじい怒りに、その目は狂気の染まっていた。


「だから僕は、国そのものをどうにかしようと思うんだ。だってあっても害悪しかないじゃないか?そうだろう?僕はそう思うんだ。滅した方が世界の為になるはずだ。だから君たちは、この国にいる害虫を即座に駆逐して貰うよ。僕は害虫がいる今の状況が心底嫌なんだ。」


 ガウェイン殿下の浮かび上がる残虐な微笑みと、毒を含んだような空気が部屋いっぱいに支配した。










読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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