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妄想国家ボクワイ

拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。


残虐な表現があります。

 




「ユリウス殿下は横暴すぎる。乳母だった人に処罰するとは」


「しかし殿下が可愛がっている子に、危害を加えたそうじゃないか」


「加えていない。ただ一緒にお茶をしようとしただけらしい。」


「睡眠薬を入れてか?」


「それは年寄りだから誤ってだろう………」


 偉く都合のいい言い分だわ。

 私達はチヨちゃんの部屋で、のんびりとお茶をしながら釣りを楽しんでいる。

 ボクワイ魚の雑音を聞きながら。

 横では相変わらずユリウス殿下は、魔道具を上機嫌で作成している。

 作りたい物が沢山あって大変だと大喜びだ。

 作っては煮詰まって、ボクワイ魚を刺激する毎日。


「しかしよく出来てるなユリウス。これマジいい。俺にもくれ!」


 手に持っている玉を挟み、ポチッと押すとビリビリと電気が流れる。

 ユリウス殿下はチラッと見て「そのうちな」と言って黙々と作っている。

 その玉はチヨちゃん用なのだった。


「あのユリウス殿下。さっきから作ってるそれ何でしょう?チヨちゃんにプレゼントするお人形ですか?ならもう少し可愛くしてくださいね。チヨちゃんが抱っこするんですから」


 私はそのブサイクな人形が気がかりだった。

 なんだよ。鼻だけトナカイの様に赤って、後は真っ黒な人形。ブサイクというより不気味だ。

 でもチヨちゃんがゴスロリファッションだったらイケるかも?!

 それはそれで有りだわ。


「チヨが抱く人形じゃない。これはお前が話した身代わり人形を作ってるんだ。でもなかなか難しいな」


 フ~…… とため息を吐いて手を止める。




 私達はあの会議の後、間者を魚に見立てた、釣りをする為いろいろと話し合った。

 その時にマリエ夫人が欲しいといったのが

 隠しカメラと盗聴器。

 在れば絶対便利なはずと言ったのだ。

 ボクワイは魔道具を使っていろいろとやってくれた。

 それならばこちらも目には目を歯には歯をだ。


 ユリウス殿下とマーベルは作成に従事した。

 実際殿下とマーベルの魔道具は抜きん出ているそうだ。

 今も作っている人形はチヨちゃんの代わりになればと作成している。

 鼻をポッチと押したら本人になるっていう例のヤツです。

 ふと思いついてこんなのがあったよね(アニメで)と言ったら、隠しカメラと盗聴器をあっという間に作って、日々人形の研究に余念がない。


 出来たらチヨちゃんの安全が格段に上がる。


「ホント好き勝手言ってるな。観察されて録音されてるとも知らずにw」


 楽しくてしかないと言いながら、護身用の玉をお手玉の様に遊んでいる。

 チヨちゃんは護身用玉を壁に投げている。

 バチバチという音と光を楽しんでいるようだ。

 ユリウス殿下は眉間にしわを作って考え中。

 さすがに難しいだろうな。

 私も人形を見ながら考えている。

 人形の大きさはチヨちゃんと同じ。重さも同じようにしてある。


「ユリウス殿下どこ辺りが難しいです?」


 魔道具は素人だが、何か思いつくかと思い聞いてみる。


「う~ん………チヨに視えながら動かすのはなかなか難しい様だ。映像を写す感じでチヨにしようかしたけど全体に投影するにはなぁ。それに動くとなるとこ大掛かりになる。だからいろんな方法で試しているんだけど………」


 そう言って、ガチャガチャと作業を再開するユリウス殿下。

 そっか、なかなか思うように行かないようだ。

 ウ~~~ン、別に人形じゃなくてもいいんだよね。

 チヨちゃんの代わりになれば良いのだから。

 チヨちゃんの安全確保が目的。


「ねぇ。まずどんな状況下で使用するのかな?」


 そう、チヨちゃんが全面にでる状況ってどんな時なの?そんな事ないと思いたいけど、もしもで準備しているのだ。

 ならば一体どんな時何だろう?

 私はユリウス殿下とマーベルに聞いた。

 申し訳ないが私は思いつかない。

 ユリウス殿下とマーベルも考え込んでいる。

 そんな状況にならない様に、いま現在も次々いろいろと罠まで仕掛けている位だからだ。


「なぁ……そんな状況起こるか?俺はないと思う」


 訝しげな視線を向けてユリウス殿下を見る。

 ユリウス殿下は目を瞑りジッと思案中だ。


「わからん。こんな時はアイツに聞くしかないな………」


 アイツ?


「うげぇ…… 俺アイツ苦手なんだよ。」


 マーベルは腰が引けている。


 アイツ??誰だ???

 チヨちゃんは連続で護身玉を投げ飛び跳ねて喜んでいる。



 ******************




「珍しいね?兄上から僕に会いに来るなって」


 にこやかに微笑みながら歓迎の意を示すガウェイン第二王子。

 どうしても強烈な性格のユリウス殿下と唯我独尊のアレクシス殿下に挟まれ影が薄い存在になり、とても不憫で損な人柄だった。

 実際、ガウェイン殿下は目立つことを嫌い穏やかに過ごしている。

 周りには世話を焼く人達が多く、皆に優しく朗らかな性格は、個性豊か過ぎる王族の中で癒しとなっていた。


「久しぶりだなガウェイン。元気にしているか?最近食事でも合う事もないな」


 それを聞いて、可笑しそうに笑うガウェイン殿下。


「だって兄上とチヨちゃんのラブラブを見ながら食事なんかしたら胸やけしてしまうよ。アレクシスはチヨちゃんと同じ歳だし、妹が出来たと無邪気に喜んでいるけどね。」


 何というか優しいんだか、嫌味何だか難しい人物だな。

 離れた所で話を聞きながら思う私。

 そんな私を見たガウェイン殿下はニッコリとほほ笑んで


「やあリディアーヌ嬢。アレクシスが世話になったね。大変だったでしょ?なんでか話を聞かないというか聞こえない?フフフ お疲れ様でした」


 ホント優し気で癒しな雰囲気持ってるんだけど……… 苦手だ。

 私はひきつった顔笑顔でカテーシーをする。


「お気遣いありがとうございます。いい経験をさせて頂けたと感謝しております。」


 目を伏せ無難な事を言う。

 何故かわからないが、敵にしたらダメだと思うからだ。

 そんな私を静かに見つめてニッコリと笑った。


「そう言えばマーベルとリディアーヌ穣は婚約したんだね。おめでとう。とても仲よさそうで良かったよ。フフフそんな嫌そうな顔しなくてもいいんじゃないかなマーベル」


 目を細め、手を口元に置いて笑っている。

 マーベルはツンと横を向いて知らんぷりしている。

 そんな態度とっていいの?!

 側近の人も睨んでいるよ!!


「相変わらずだねマーベルは。そこまで嫌わなくてもいいのに、僕は哀しいよ」


 そう言って眉を下げ哀しそうな顔をする。

 すると側近の人からの視線が鋭さを増す。

 マ、マーベル謝って!!


「ガウェイン。マーベルをからかうな。それより相談があってきたんだ。今いいか?」


 ユリウス殿下が、ガウェイン殿下に時間の確認をする。

 ガウェイン殿下はキョトンとした顔をし、少し考えて側近2名を残し退出させた。


「兄上が相談なんて珍しい。でもそれだけ重大で難儀な事なんだね。いいよ。僕で役に立つなら何でも聞いて」


 そう言ってニッコリと笑った。


 目は獲物を狙う鋭さの増した眼差しで、口元は楽し気に歪んでいた。




 ******************



 ガウェイン殿下に相談するために今までのあらましを話す。

 特に隣国ボクワイの話を重点的に話していく。

 ユリウス殿下は古の地一族の話をし、マリエ夫人とチヨちゃんが狙われている現状を話す。


「ねぇ、リディアーヌ嬢。僕はその乙女ゲームに出ているの?」


 ガウェイン殿下は私を見て聞いて来た。

 第二王子の事は何も知らない……… 

 イヤ、常日頃から存在感ないけれど?!


「そう出てこないんだ。残念です。僕にも陳腐なセリフあったら楽しかったのに」


 頬をプくと膨らませ不満げだ。

 えっ?欲しかったのキャッチフレーズ?!


「お前は以前よく会議に遊びに行ったりしていたから、もしかしたら亡くなった可能性があるな………」


 ユリウス殿下は静かな目で、ガウェイン殿下を見て言った。

 それを聞いたガウェイン殿下は楽し気に笑って


「多分そうなんだろうなと思ったんだ。母上が兄上を嫌うという事は、王位に関してのみだからね。兄上が王位に興味がないのはわかる。でもその周りは?未来の宰相はボクワイと繋がっているというしね。母上なら、隣国の影響を懸念するだろう。それに兄上がならなくてもアレクシスはあんな感じだ。国として最低最悪な状況だ。どっちに転んでもボクワイにとっては、楽しくて堪らないんじゃないかな」


 うっそりと嗤い、目を眇めるガウェイン殿下。

 えっ?ホントにこの人9歳?!

 めちゃくちゃ危険人物じゃない!!

 戸惑っている私をチラッと見て、ニヤリと笑いウインクした。

 それに対して威嚇するマーベル。


「リディアーヌ、コイツはガウェインは国を第一に考えて行動をする。その為に動くような人物だ。この歳でな。そこは徹底している。」


 ユリウス殿下の説明を戸惑い気味に聞いている私を、楽し気に見ているガウェイン殿下。

 そんな殿下の周りで何か作業し始める側近の二人。


「フフフ慣れて貰うしかないかな。ごめんねリディアーヌ嬢。僕自身そんな気質なんだ。人間観察が何よりも趣味だから、あんまり注目を集めたくないんだよね。」


 とおどけた様に言って、側近から書類を貰った。

 よく見るとガウェイン殿下だって、ユリウス殿下やアレクシス殿下と同じ位整っている。

 なのに余り注目を集めず穏やかで優しいと言われている。

 でも実際はかなりの曲者だ。それも化け物級の………


「リディアーヌ、ガウェインは王らしい王なんだよ。だから俺達兄弟はコイツがいる限り、好き勝手出来る。」


 ユリウス殿下はそう言って愉快そうに笑った。




「さてさっき言っていた隣国ボクワイの事なんだけど………うん、妄想国家ボクワイでいいかな?」


 楽しそうに妄想国家って、なかなかイタイ国だ。

 側近たちも隠れて笑っている。


「以前変な動きをしていたから調べていたんだ。でも今回の話を聞いて、ある意味確信を得たよ。ありがとう兄上。この早い段階で判って良かった。それにマリエ夫人の活躍がなければ、こんな良好な状態じゃなかっただろう。それを踏まえて、僕はマリエ夫人とチヨちゃんを徹底的に守護すべきと思う。実際、ボクワイの手に落ちたら、世界的に痛手なのはわかるからね。」


 そう言って一枚の紙を私達に渡した。

 その紙には古の地一族の歴史というかボクワイの歴史が書かれていた。



 もともとボクワイのある場所は古の地一族が住んでいた土地だった。

 そこにボクワイの先祖たちが来る。

 理由は当時から抜きん出てた魔道具の技術を学ぶ為だったという。

 始めは良好な関係だったんだろう。

 しかし、どんなに学んでも古の地一族ほどの技術には届かない。

 そのうちどうしてなのか?

 秘匿する技術があるのではないかと疑い始める。

 教えて貰った義理を忘れて

 古の地一族は人がいい性格をしている。

 素直に何でも乞えば教えてくれる。

 だかボクワイの者達は、それが欺瞞に映った。



「多分決定的になったのは、その魔石などを発掘に使う魔道具の存在じゃないかな。それを見てやっぱり秘匿した技術があるんだと思たんだ。そして理由を聞けば、その一族の血だと言う。ボクワイの者達は思たんじゃないかな?こいつらを手に入れてば、自分達の欲しい魔道具や魔石は使い放題だ。だって地一族は素直なおバカさんだから、有効活用するのは親切心だとでも考えたんだろう。」


 クスクス笑って話されている内容は非道そのモノだった。


「ガウェイン笑うな」


 ユリウス殿下は不愉快そうに言う。

 マーベルに至っては、睨み付けて今にも襲いそうだ。


「フフフごめんごめん、どうしても相手の気持ちを考えて話すと、相手その者になった気持ちになるものだから」


 全然悪びれる事なく、平然とした顔で確認するガウェイン殿下。


「さてこれが過去ボクワイの話だ。では今現在はどうなのかな?多分享楽に耽って、それこそ理想に取りつかれてんじゃない?自分の国の王女を平然と犠牲にして、また昔の様な生活をと思うはずだ。そしてそれを叶える(もの)が、この国には2つも存在する。どう思う?もともとは自分達の国に合った(もの)だ。更にはそれ以上の存在、自分達の理想を実現できる(もの)が現れたんだ。欲しいよね。堪らなく欲しくて、どうしようもないんじゃないかな?そして邪魔をするそんな国なんてめちゃくちゃにしたくて堪らないだろうね。」


 目を見開き口の端を上げて愉し気に嗤い、気持ち悪くなるような言葉をドンドン吐いていくガウェイン殿下。更には……


「フフフ……あはははは!!」


 と突然笑い出した。

 もう、なにがなんだか…… 

 私はプルプル震えて涙目だ。


「お前突然笑い出してどうしたんだ!!」


 ユリウス殿下は怒鳴った。

 マーベルは私の肩を抱いて宥めてくれる。


「アハハ!だって兄上が言った世界の頂点って言葉が、フフフ…… なるほどと思ったら。ああ、可笑しかった」


 そう言って、涙に濡れた目の端を指で拭っている。


「どういう意味だ?」


 イライラした目をガウェイン殿下に向ける。

 それでも気にせず、人の悪い微笑みをうかべている。


「もう古の地一族はいないんだろうな。死んだ後貴重な血は絞り取って、今も細々と動かしているんだろうね。フフフ……多分新鮮な(もの)ほど力があり、黒が多いほど半永久的に動く、そんな魔道具じゃないのかな。魔石の算出量を見ると、なんとなくそうなんじゃないかと思うよ。それに算出によっては、世界の影響力も変わっていくだろう?だから世界の頂点って、そんな意味じゃないかな?マリエ夫人もチヨちゃんも女なんだから、それこそ増やそうと思えばいくらでも増やせ「言うな!!!それ以上言ったら許さない!!!」」


 ユリウス殿下は怒りに満ちた憎悪に溢れる目でガウェイン殿下を見ていた。

 そんなユリウス殿下を見て、ガウェイン殿下は冷え冷えとさせる嘲笑口元の乗せ言うのだ。


「まるで寄生虫のようだね。我が国に住処を作らせてはダメだよ。駆逐かな?国全体を見ても、対した犠牲じゃないよね」


 そう言って影の様に黒い微笑みを浮かべていた。





読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)

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