前途多難ですわ
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
そういえば私はユリウス殿下に聞きたい事があったのだ。
乙ゲーのヤンデレ監禁疑惑である。
現状違うというのはなんとなく感じるのだが、やっている事はほぼ同じ。
イヤそうせざる得ない事情があるから仕方ない。
それこそこれが強制力か!!
と考えるもよぎるが、余りに乙ゲーにこだわりヤツラに足をすくいかねない。
でも確認はしたい。
大丈夫だよね?大丈夫かな?!と無駄に考えたくはない。
本人がそんな気質があると理解すればいい。
マーベル様は、ほほ笑んで私を見ている。
私がさっきからユリウス殿下を見ている事に気づいている。
それに、チヨちゃんは歌を歌って声を出した。
なのに、チヨちゃんと私はおしゃべりした事がない。
ユリウス殿下は、チヨちゃんと話をしている?
マーベル様も最近話してないと言っていた。
チヨちゃんを見ると、ポケットから魔法棒を取り出していた。
そしてまたくるくるしながら遊びだした。
「さっきから俺を見ているが、何か言いたい事があるなら早く言え」
冷めた目で私を見て、お茶を飲んでいる。
確かにチヨちゃんが離れている今がチャンス!
よし言うぞ。がんばれリディアーヌ。
「私がマリエ夫人と同じ転生者だって話をしたわよね。そこで私あなたに聞きたい事があったの。ついでに乙女ゲームの話は、ユリウス殿下も知っているの?」
私は確認のために聞く。
サッサといろいろ確認したい。
「知っている。ついでにマーベルの馬鹿げたセリフも知っている。それがどうした?」
首を傾げていぶかし気に私を見る。
馬鹿げたセリフか………まさか自分にもあるとは思うまい。
そうだよ。まだその辺説明してないんだもの。
私はひきつった顔でユリウス殿下を見る。
マーベル様は、次の言葉が予想できて爆笑中だ。
眉間にシワを刻んでいぶかし気に見るユリウス殿下。
「それじゃあ、ここが乙女ゲームの世界という事で話始めても大丈夫?」
私が言うとチラッと見て頷いた。
私は一気にいう事にした。
もう全て一気に答えて貰おう。
「ユリウス・ドゥ・バッハシュタイン。 属性監禁ヤンデレ。 魅了と洗脳。 そしてユリウス殿下のキャッチフレーズは「二人の世界はどこまでも美しい」」
言い終わった瞬間、ヒーヒー言いながら床をぶっ叩いているマーベル様。
相当ツボってんだろう。
私はマーブル様を見た後ユリウス殿下を見る。
ユリウス殿下は氷の彫刻の様に固まり啞然としていた。
始めてみたかもしれない。
ユリウス殿下の現実逃避を………
******************
【 ユリウス視点 】
チラチラと見るリディアーヌ。
コイツが俺に恋愛感情で見ていないのはわかっている。
何か聞きたい事があるのだろう。
大体コイツが聞くことは、チヨに関連した事ばかりだ。
だから俺もコイツのこんな態度に平気でいられる。
顔にはどうしよう?でもサッサと終わらせたいという気持ちがありありだ。
だから俺は話を振った。
サッサ言えと
返ってきた話は現状知っている話だった。
だから馬鹿げたマーベルのセリフも知っていると悪ふざけで言ってやったら、マーベルが爆笑しやがる。
いつもそのセリフを言う時は大爆笑つきだった。
でも今回の爆笑はなんだか嫌な感じがする。
リディアーヌは俺のそんなセリフに、何故かひきつった顔で固まっていた。
そして硬直を解いて、再度確認するから頷いたのだ。
でも俺は少し後悔した。
だって俺にもそんな陳腐なセルフがあるなんて
「二人の世界はどこまでも美しい」
なんだそりゃ??俺が言うセリフなのか?!
余りにもショックで俺は生まれて初めて機能を停止した。
そこから再起動する為の動作は俺にはわからない。
だって今回が初めてだったから。
遠くでマーベルの馬鹿笑いが聞こえる。
アイツ後で覚えてろよ……
俺は仕返しを固く誓った。
******************
どうしよう……
ユリウス殿下が戻って来ない。
固まったまま動かない………
どうすればいいの?!
そんなユリウスを見てさらに爆笑するマーベル。
さすがにイラっと来た。
「マーベル様笑ってないでどうにかしてください。起動するにはどうすればいいのです?!」
「ギャハハハ…!! リディアーヌがユリウスと似た事言ってる!!」
「何ですの!!」
「起動って、起動って………ギャハハハ!」
ダメですわ。完全に笑いのツボにハマってますわ。
そして私も復活いたしましたわ。
ええそうですわ。
イラっと来て復活ですわ。
所詮悪役ですものね。いいですのよ。
しかしイライラしますわね。
横ではギャハハハと楽しそうに笑うマーベル。
こんなヤツに様なんていらないわ。
その前には今だ立ち上がらないロボットユリウス。
「早く復活して貰いたいですわ」
ガジガジと爪を噛んで、ウロウロする私。
そんな私を「可愛い」と言って抱きしめるマーベル。
「煩いですわよマーベル!」
イラっと来た私は、自分の腕を横に平行にしてそのまま腕を上げた。
マーベルの抱き締めた腕が外れた。
そのまま一気に距離をとり回し蹴りですわ。
ちょうど膝の裏を狙って蹴ったくれば、ガクッと崩れ落ちた。
「ざまぁみろですわ。」
フンと言って、次にユリウス殿下を狙う。
〇まを蹴れば一発起動するが、今後の事を考えればできるはずもなく………
水差しを持って顔に向けてぶっかけてやった。
もちろんユリウス殿下は起動した。
ぽたぽた落ちる水滴が本人のショック度合いを物語る。
だから私もそれ以上の突っ込みはしなかった。
約一名はそれどころじゃなかった。
私に蹴られたショックで機能停止したのだ。
嫌われたとショックを受けているらしい。
ホント話が進まないんだけど………
とにかくイライラする私だった。
******************
「すまなかった。ショックを受けるとあぁなるんだな。一つ勉強になったよ。」
疲れたような顔で言うユリウス殿下。
イヤカッコつけても全然カッコ悪いからね。
何てメンタル弱々なのよ。
私は頂いたお茶を飲んで一息ついている。
ホントに先に進まない。
「その、ひっついているマーベルはいいのか?」
そうさっきから、めそめそと嫌わないで~っと言って腕に抱き着いている。
お前は乙女か?!
私がそのまま無視していると、気の毒そうにマーベルを見るユリウス殿下。
そんな二人を見ると友人関係ってホントなんだなと思う。
とにかく先に進みますわ。
チヨちゃんはあちらの大人組に可愛がられている最中だ。
大人組も今は休憩中だった。
とにかく先に進もう。
「ユリウス殿下、私が伝えたいのは一言だけですわ。”監禁ダメ絶対”よろしくて?」
ニッコリと笑って睨みつける。
ユリウス殿下はひきつった顔をしている。
「現状は仕方ないと思っていますわ。今の状態も監禁に近いと思いますけど、二人だけじゃないから良しとしますわ。ええ、二人だけの世界は美しいなんて馬鹿なセリフ吐きたくありませんものね」
そう言って、嘲り交じりにほほ笑んだ。
チヨちゃんの広い世界は私が守りますわ。ええ、絶対!!
ユリウス殿下は私の言いたい事がわかったのかコクコクと頷いている。
どうやらユリウス殿下相手にストレート勝ちをしたようだ。
そんな私を尊敬の眼差しでみるマーベル。
「それと気になる事もありますの。チヨちゃん歌いましたわ。声が出せるのにお話しない。何故ですの?ユリウス殿下はチヨちゃんと会話してますの?」
ユリウス殿下は目を見開きそして迷いがある目をした。
そしてため息交じりに言った。
「時々必要ならしている。チヨはお話は疲れるから嫌だと言っている」
その話を聞いて眉間にしわが寄る。
「ユリウスそりゃどういう事だ?」
マーベルが怒り交りな声を出す。
知らない何かがあるのだろう。
「話せると話しかけられる。断るとしつこい。とにかく面倒だと言っていた。」
何なんですのそれは ………
「俺の失敗だ。俺が王妃の所にいている間、部屋から連れ出そうとした者が何人もいる。それも部屋付のメイドだったり騎士だったり…… 変だろ?そんな状態だから誰も信用できない。父も王妃もそりゃあ苦慮した。でもそんな出来事ばかり起こるから罠を張ったんだ。」
眉間にしわを寄せ苦味つぶしたような顔をする。
「なんだよ。」
マーベルがユリウス殿下の方を見て催促する。
そんな四面楚歌な状態で頑張ったユリウス殿下。
「魔道具を使われていたんだ。チヨの部屋近く関わる者しか通らない場所に、アクセサリーを落とし拾ったやつが洗脳される。城の奥深くした事で逆に利用されたんだ。後で届ければいいと思ったんだろうな。その間に洗脳がどんどん深くなる。処罰された者達も訳がわからなかっただろう。仕事に対して真摯な者達だったのに」
「人でなしの所業ですわ。信じられません。何てことしてくれますの!」
チヨちゃんお話しないのは、自分を守る為でしたのね。わかりましたわ。
「でもチヨは基本のんびり屋だからな。アイツが気付く前に、なるべく終わるようにはしていたんだ」
スルッと恐ろしい事を言うユリウス殿下。
こっちもなかなかの人でなしだった。
「しかしよくわかったな。ユリウス」
「俺は洗脳している状態は可視できるんだ。とにかくそんな感じだったから、俺一人でチヨといる状態にしたんだ。いいだろ♪ついでに魔道具も作り方を習って日々撃退。楽しかったな♪♪だから乳母が出てくる事態になったんだろうw」
アハハと皮肉気に笑うユリウス殿下。
日々撃退するために研究し魔道具を作成し、溺愛している子を守り抜く。
乙女ゲームのユリウス殿下より、こっちのユリウス殿下は日々充実しているのだろう。
うん、病んでいる隙もないって事かしら?
ある意味、健全育成をすることになったようだ。
マーベルに揶揄われて笑っているユリウス殿下。
この二人。本来の乙女ゲームでは絡みが全くない。
でもこうやって二人を見ると凄くしっくりと来る。
フム………BLって感じ?
ウ~~~ン、そうじゃないなぁ。
なんか阿吽の呼吸みたいなそんな感じ。
ホント親友なんだなと思う。
だから乙女ゲームに違和感を感じる。
あれは主人公ヒロイン視点なんだよね。
という事はヒロインの前で二人は会ったことがない。
でも別のところでは会っている。
……… なんだかこちらがしっくりくるわね。
二人の性格を考えても凄くしっくりと来る。
”ストーリーを主人公視点から離して考える必要がありそうだわ。”
お茶を飲みながらチヨちゃんと大人組を見てみると、陛下とバルトル子爵がいなくなっていた。
”仕事に戻ったんだろうな”
なんだかんだと忙しい人達だから。
特にバルトル子爵は引っ張りだこだろうな。
そう思いソッと健闘を祈る。
「そういえば、俺は煩わしいと話半分で適当だったが、ハルアナが変な事を乳母と話してたかも…… 」
乳母のあれこれを考えていたユリウス殿下ふと呟いた。
そういえば殿下の母親は隣国ボクワイの王女だった。
「とにかく存在そのものが嫌な女だったなぁ。ン~何だったか?かなり記憶の片隅に追いやってるな。アイツら王位に付けと言ってただろ。それからいつか世界の頂点に立つとか?馬鹿かと思ったが…… どうしてそんな事思ったんだ?そういえば偉く自信満々だったよな??だから心底馬鹿にしたんだが………」
そう言うとユリウス殿下は考え込んで静かになった。
世界の頂点って何?!
また変なワードがでて来た?!
もうヤダ~~~……
前途多難で泣けてくるリディアーヌだった。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)