マリエの忘れた過去
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
不愉快な表現があります。
チヨママ ヒロインさんごめんあそばせ を読むと話がわかり易いです。
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ギルバート侯爵は、少し悲しそうな顔をして話し始めた。
マリエ夫人とはグラッセ領とボクワイの境で出会った。
どうも逃げて来たようで、身体が小さい事から子供だと思ったそうだ。
だから一時的に保護をした。
マリエ夫人は自分の事を話さなかった。
でも始終何かに怯えているようだった。
だから大丈夫だと安心させる様に接した。
一年二年と経つうちに、少しずつ本来の気質が出始め、ときおり笑顔を見せる様になった。
瘦せすぎた身体も、常日頃の食事で健康を取り戻していく。
素直でどこか芯の強さを感じさせる、そんなマリエ夫人に惹かれていった。
そしてもともと小柄な一族であり成人している事を知り、婚姻の願いをしたそうだ。
始めは断っていたらしい。
理由は迷惑をかけるし、子供も産みたくないという。
どういう意味かわからないが、自分は次男だから子は別にいいと言って、説得したそうだ。
最終的には根性負けして結婚した。
始めの半年間は楽しく幸せだった。
でも、ボクワイの姫が輿入れするような話が舞い込んで状況が変わって行った。
「確かあの当時、別の国の姫が輿入れの話だったが、ボクワイの横槍で立ち消えて、代わりにユリウスの母ハルアナになったんだよな。その時確か大量の魔石を持参金としたんだ」
「そうです。あの当時それを理由に先王は決められました。いまだにアレは悪手だったと思います。」
「そういえばバルトルも一目惚れしたと言って無理やり嫁に収まったな。」
「全て繋がっているとなると気持ち悪いですね。」
陛下と宰相様が当時を思い起こしながら話されていく。
「私の事なのに全然わからないわ。」
泣きそうなマリエ夫人。
そんな夫人を優しく抱きしめるギルバート侯爵。
「それまではホントに幸せだったんです。しかしバルトルの結婚以降はいろいろと大変でした。」
皆がジロッとバルトル子爵を見る。
「お前ちゃんと領地見てると、私に自慢して書類見せてたよな。あの当時は………」
「書類を綺麗に見易く書くことに苦慮して、満足する方ですからね。バルトル子爵は………」
白い目で見る陛下とため息交じりに言う宰相様。
「いるわよね。紙に書いて満足してわかった気になる人。やりました気分になる人」
クスクス笑うマリエ夫人。
小さくなっています。バルトル子爵。
「そしてマリエは事故で記憶喪失に………。子供も本来作るつもりはなかった。でもできてしまった。それはそれでマリエは幸せだと言いながら、悲しんでいましたが。」
ユリウス殿下がスッと立ち上がり隣の部屋に行く。
チヨちゃんが起きたのだろうか?
「それで当時のマリエは、どうして怯えていたのか聞いたのか?」
陛下がギルバート侯爵に聞かれた。
マーベル様が私に声をかける。
「喉が渇かないか?」
私は周りを見てうんうんと頷く。
マーベル様はユリウス殿下の所へ行って飲み物を準備する様だ。
緊迫した中でもマイペースな二人すごい。
「マーベル君が飲み物を準備してくれるようでよかったです。さすがに疲れます。」
フウとため息を吐く宰相様に
「そうだな、少し休憩を挟もう。バルトルも書くのが大変だろう」
と言ってバルトル子爵を見る陛下。
バルトル子爵も首をコキコキ鳴らし肩を揉んでいる。
皆さまお疲れ様です、私も心が疲労気味。
バルトル子爵は、休憩中もせっせと話を書いてる。
ギルバート侯爵が、それを見て補足している。
陛下も宰相様も足りない部分を書き足して貰っている。
気になって私も見てみる事にした。
とってもわかり易く時間経過で書かれ、横に当時在った事件など書いてある。
そして聞いた話を大まかに記載し、入れられる様になっている。
さらには、当時の国の内情を、隣に比較し易い様に書いてある。
「バルトルは書類構成や議事録の作成は天才的なんですよ。だから王宮では引っ張りだこなんです。」
つまりその特技で食っていける人なんですね。
「ただそれだけの人なんです。」
遠い目の宰相様。
とても必要だけどそれだけの人。奥深い………
マーベル様とユリウス殿下が飲み物を持って来た。
横にはチヨちゃんがユリウス殿下の裾を握ってちょこちょこと付いてくる。
”チヨちゃん可愛い”
とほんわかしていると陛下が
「チヨちゃん伯父ちゃんのとこでお茶しよう♪」
とニコニコしながら呼んでいる。
それは宰相様も同じだった。
チヨちゃんはちょこちょこと陛下達のとこに行き抱っこして貰い、覚ましたミルクをユリウス殿下から貰っている。
手を添えて手伝う陛下、めちゃくちゃご機嫌。
マーベル様が横に来てお茶をくれた。
お礼を言うと笑って隣に座る。
「さて、少し休息も入れたし先に進もう。バルトル大丈夫か?」
「ああ、書き終わった。」
陛下がチヨちゃんをナデナデしながら聞いて、ギルバート侯爵に先を促す。
「では、マリエが怯えていた理由ですが、マリエは古ノ地と言われる一族の出です。ボクワイの先住民族で、加工技術は神がかり的で凄く、魔道具を作り出す技術力もマネできないものでした。しかしボクワイの王族は目先の益に囚われ、その一族に無理難題を次々に要求し疲弊させていく。マリエは一族が助け合って逃がした唯一の生き残りらしいです」
「古ノ地って幻の一族じゃないか?」
「ええ、ボクワイの王族は家畜のように、王城の奥深く飼っていたようです。ろくに世話もせず、奪うだけ奪って誰一人いなくなり焦っているのでしょう。魔道具も魔石も手に入らなくなるのですから」
「どういうことだ?」
「魔石を発掘する魔道具のメンテナンスと起動には古ノ地の血が多少必要なんだそうです。そして黒目黒髪に近いほどその力は強くなる。だから必死なのでしょう。マリエを奪い飼育しようとでも思ったのでしょうか?」
ギルバート侯爵の目がギラギラと獰猛な目で嘲る様に笑う。
怒り狂っているのが凄くわかる。
「こんな話は私一人知っていればよかった。マリエにはそのまま忘れ、知らずにいて欲しいと思ったんです。生き生きしているマリエを見るのが何よりも嬉しかったのに、邪魔をする者達がいる。ただ自分勝手な欲望のために、人を人と見ないクソみたいな者が!!!」
「旦那様………」
青ざめたマリエ夫人。
そしてマーベルを見る。
マーベルは瞳はギルバート侯爵と同じ青。
髪は黒だけど、体型も顔もこちらより。
マリエ夫人の瞳はヘーゼルナッツの色だ………
「だから執拗にチヨちゃんを狙うのか………」
陛下は呆然と青ざめ、手はチヨちゃんの耳を塞いでいる。
宰相様のこぶしが凄い状態になっています。
私は余りに重い話に若干現実逃避中………
私こんな重い話はムリ~~~…… 。
そうやって現実逃避をしているとマーベル様が私を抱き上げた。
「フヘッ?!」
驚いて変な声がでる。
「ブハッ!なんだよその声」
そう言って私をそのまま膝上に置いた。
こ、これはお膝で抱っこではないです?!
更に抱き込まれ揺すられる。
なんだ?!なんだ?!!
「ちょっと癒しくれねぇか」
と耳元で囁やかれソッとマーブル様を見る。
目には憎悪や憤りが見え隠れしている。
だからこんな私が役立つのならと、私も届かない腕を回して精一杯抱き返した。
その間もいろいろと話していたけど、さすがに先の話で消化不良を起こしたみたい。
私の耳には聴こえない状態を作っている。
チヨちゃんは大丈夫なのかなと思いマーベル様に聞くと、耳にイヤホンみたいな魔道具をユリウス殿下が付けたそうだ。
これもユリウス殿下が作ったらしい。
ワイヤレスイヤホンみたいに曲が流れる。
時々ユリウス殿下は転生者ではないかと思う時がある。
城ではいろいろと吹き込む困った奴らがいるからだそうだ。
もちろん陛下もイヤホンの存在は知っている。
でも無意識の動作だったのだろう。耳を塞いだのは………
確かに幼子に聞かせたくないからね。
私は5歳ですが、それはスルーです。
でも消化不良気味なのはホントなのです。
私達は子供ですから、4人固まって話をポシャってます。
必要なら呼ばれるでしょう。
しかしボクワイなんて恐ろしい国なのでしょうか。
そんな国の存在を何故教えてくれなかった。
おのれポンデリングめ………
思わず呪詛を吐く私。
だいたいボクワイって何!
全然頭になにもない。
ホントに何もないのかな………
わかり易く整理し書かれているバルトル子爵の書類
これだけで食っていける人の書類を見たら何か思い出さないか?
そう思い抱っこを解いて膝上から降りようとする私。
しかし今だマーベル様の抱っこはとけていない。
「マーベル様 バルトル子爵の書類が見たいです」
私がそう言うと、そのまま抱き上げてバルトル子爵の所へ行く。
バルトル子爵は先程と違う紙に、今話している内容を記入していた。
だから借りていくことにする。
ホントによくできた書類です。
そのまま子供スペースへ行くと、
チヨちゃんが私にお菓子をくれた。
もうこれだけで私幸せ。
ハァ~チヨちゃん私の天使。
絶対守るわ。どんな手を使っても絶対。
悍まし過ぎて目を背けたくなる。
でもそれはチヨちゃんを標的に狙っているのだ。
考えただけでも腹立たしい。
私の天使に何してくれてんの!!
絶対許しませんわ。ええ絶対に………
「リディアーヌ……お前魔力漏れてるぜ」
「へッ??」
「怒り狂ってるからだろうけどさ。バチバチいってマジ痛いからちょっと落ちつこうか」
周りも私を見て驚いている。
手を見るとバチバチと静電気が起こっていた。
電気だね………そんな属性あったけ??
ユリウス殿下がとても楽しそうに見ている。
なんでかな?今一いつも閉まらない私。
落ち着いてお茶を飲む。
バルトル子爵の書類をジッと見ています。
隣にはチヨちゃん。
二人引っ付いて、イヤホンから流れる曲に合わせ左右に一緒に揺れている。
ホントそれだけなんだけど、なんかとても楽しい。
チヨちゃんも、楽しそうに歌いながら揺れている。
だから私も、その歌にハモリを付けて歌い揺れる。
チヨちゃんはキラキラした目で私を見て、さらに機嫌よく歌う。
だから私もそれに情調をつけてハモる。
そういえば前世で私、ハモリ大魔神だったなと思いながら………
すると弦の音がしだした。
ユリウス殿下が弦を弾きながら、ニヤリと機嫌よく笑う。
チヨちゃん喜んでいますからね。
わかりますとも(笑)
マーベル様もそれならと、笑いながらスプーンでコップを叩いた。
チーンと調子はずれな音♪
それが可笑しくてみんなで笑う。
チヨちゃんがいるだけでこんなにも景色が変わる。
やっぱりチヨちゃんは天使だ。
だからこそ、絶対守らなきゃと誓うのだった。
神様 どうか私に守る力と知恵を下さい。
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【 ギルバート視点 】
子供たちが楽しそうに歌っている。
今まで殺伐とした話をしていたが、とても楽しそうにしている。
「なかなかのものです」
ニコニコ微笑みながら宰相は言う。
「初めて聞く歌だわ」
マリエは考える様に聞いてくる。
「もともとはユリウスが作った曲だな。チヨちゃんがそれにあわせて適当に歌っていたモノを、リディアーヌ穣が調和する音で歌い出したんだ」
それに陛下が答え、歌に聞き入っている。
「ハモリね。上手じゃないリディアーヌ♪」
フフフとほほ笑むマリエ。
「ユリウス殿下も無邪気に楽しんでいますね」
バルトルも書き終わったのかのんびりとしている。
「ホントにいい歌じゃないか」
陛下が皆を見回して言った。
「そうですね。だからこそ絶対守らなければなりません」
宰相は静かに言って、鋭さの増した目を向けた。
「ええ。とても大切者達ですから。」
俺はただ静かに言った。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)