不穏分子
拙いと思いますが、生暖かい気持ちでお願いします。
チヨママ ヒロインさんごめんあそばせ を読むと話がよく解ります。
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しかしそろそろうちの両親が来そうだわ。
お互いに顔を見合わせ
「マーベルとリディアーヌは婚約成立って事でいいわね。」
とマリエ夫人が言うと
「いっそうの事、婚姻成立にしてくれ。ポンデリングマジこえーから」
と涙目のマーベル様。
いくら何でも10歳と5歳の結婚って逆ハーレム以上に終わってる。
そう思うとスンと遠い目になる私。
この歳で、結婚に夢を見ないとかホントいろいろと終わってる。
それはマリエ夫人も思ったのだろう。
「あなた達もう少し若さが必要よ。若さが!!」
そう訴えられる10歳と5歳。
可愛い盛りの幼子な時期なんだけどな………
ホント終わってる。
「しかしいろいろ話していると、うちのグラッセ領って何かと関わってるな。」
「ホントね。本家の元奥さん隣国の裏工作員じゃないかしら? 」
「いくら何でね?」
私がまさか~と言うような顔で言うと
「だって次の宰相の親族よ」
そうなんだ………
それを聞いてスンとなった。
「「「………………」」」
私達は顔を見合わせて三日後に会う約束をする。
チヨちゃんのところで待ち合わせをする。
その後うちの両親が来て仲よく会食となった。
「婚約じゃなく婚姻はいかがですか?と訊ねましたら、母から若さがないと叱られてしまいました。私としては、それ程待ち遠しく思います。」
とマーベル様が話されて、うちの父は苦笑し、母は顔を赤らめアラアラと赤らめ喜んでいる。
私とマリエ夫人はそれだけポンデリングが嫌なだけだろと冷めた目を向けていたが ……
それを見た母はアラアラと更にいい。
「フフフ確かに若さと言うか、盛り上がりは必要ですわね。」
と言って、父は私の顔を見てなんとも言えない顔をした。
「ねぇあなた。まだまだお子様でしてよ。フフフ」
優しく父に諭しほほ笑む母。
「そうだな。まだまだ早い。ゆっくりと成長すればいい」
と満足げに頷く父に「すまん精神はアラサーです」と謝る私。
それを遠い目で見るマリエ夫人とマーベル様。
なんともカオスな会食だった。
******************
【 グラッセ領 】
傍らには旦那様がいる。
ここ最近はホントに濃い日だわ。
グラスに入ったワインを飲みながら今後の事を考える。
何もわからず、とにかくがむしゃらにやってきたけど………
フフフなんとも愉快な事に、的を外さず、見事ピンポイントを突いて行ったようだ。
「楽しそうだな。マリエ」
旦那様がユラリと立ち上がり私の隣に座る。
そしてソッと首筋にキスをした。
それにビクッとすると、更に肩に優しくキスをし私を見る。
その瞳に映るのは欲望。
「マリエ今日は私もいろいろと頑張ったよ。」
そう言って口に軽くキスをする。
「ありがとうございます。旦那様」
私はそんな旦那様を見つめながら礼を言う。
こんな目で見られると女である事を意識する。
包み込むように抱きしめられ囁くように聞かれる。
私もそれにソッと応えた。
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【 王城 チヨちゃんの部屋 】
つくづく思うのは、もう思いっきり外堀を埋めているヤツの存在だった。
もうほとんど嫁扱いじゃない?
「ユリウス殿下の部屋って、チヨちゃんの部屋の隣なの?」
私は首を傾げて無邪気に聞く。
マーベル様は能面のような顔で怖い事になってる。
「ああ、その方が何かと便利だからな」
淡々と魔道具作りの作業をしながら言う。
その姿は王子と言うより技術者だった。
「今日は何を作っているのですか?」
私は先程から作っている物が気になる。
なかなか大掛かりな物のような気がする。
大きな布を踏んで音を鳴らす、そうミュージックマットのようなものだ。
ジーと見つめる私に、ユリウス殿下はチラッと見て
「何だ欲しいのか?チヨの後でいいなら作ってやるぞ」
えっ?!作ってくれるの?
監禁ヤンデレな人が??
目を見開いてびっくりする私。
どうやらやっぱり人格形成がだいぶ違うようだ。
やっていることはほぼ同じなのに………
「ユリウス、リディアーヌは三日前から俺の婚約者になったんだ」
マーベル様が復活したようで、いつものニヤニヤ顔になった。
「そっか。それならお前は俺の姉になるんだな」
作業しながら私に淡々と言った。
私がフラフラしていると、マーベル様に支えられる。
私はマーベル様に無音で必死に訴える。
マーベル様もうんうんと頷いて頭を撫でてくれた。
ユリウス殿下が弟だと………
ユリウス殿下が弟だと………
私の心はブリザードだった。
「リディアーヌ…… お前いつもと違うな」
そしてユリウス殿下は静かに私を見る。
「いつものですわお嬢言葉じゃないな。どうしたんだ?」
探る様に私を見る目はとても静かで真摯だった。
それを見てあぁ、チヨちゃんは大丈夫だと思った。
ユリウス殿下は病んでいなかった。
チヨちゃん私安心しましたわ(涙)
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「それでお前たちは俺に何を聞きたいんだ?」
ユリウス殿下はそう言ってテーブルに飲み物を持って来た。
そう、ユリウス殿下がお茶を入れているのだ。
メイドはどうした?
「ユリウスどうしたんだ?メイドに入れて貰わないのか?」
やっぱりそうだよね。一か月前は一応メイドが飲み物をくれたと思うが………
「最近、城内に不穏分子が紛れているようだ。それも踏まえて、俺も部屋を移動したんだ」
私達二人を見つめて話すユリウス殿下。
「お前たちは確実に味方とわかるから話しているんだ。」
どうやら何かあったようだ。
「つい一週間前だ。睡眠薬を混入した水差しがこの部屋に入った。」
眉間にしわを刻んで、ジッと私達を見つめている。
「俺はこの部屋に入るの者は徹底的に限定している。基本チヨ一人になったら魔道具を発動して、警備を強化しているんだ。ついでに睡眠薬を持ち込んだ者は処理済みだ。」
ニヤリと笑い、入れる予定だったお茶をカップに注ぐ。
「俺の乳母が持ち込んだんだ。俺がたまたまおらず、メイド達も俺の乳母だからと気抜いた様だ。俺も用心してたんだが、乳母だった事にはショックを受けた。だがチヨを想えばどうとでもなるな」
そう言って、蔑んだ様な荒んだ目をしてニヤリと嗤った。
「抜け抜けと命ごいしやがった。幼い頃よりお仕えした私を捨てるのかとな。どうして自分は大丈夫と思っているんだろうな?たかが睡眠薬でとかも言っていたなぁ、私よりあの子を取るのかともな。頭悪過ぎてぐちゃぐちゃにすり潰したくなるよな。要らねぇだろ?そんな頭はな?!」
うわ~~………ユリウス殿下やっぱり病んでいませんか?!
めちゃくちゃ狂気を孕んだ嘲り交じりの笑顔、アナタほんとに11歳?!!
マーブル様と私はプルプルと口を噤んで、狂気の嵐が過ぎ去るのをただ祈るのみだった。
マーブル様がユリウス殿下が落ち着きを取り戻すと
「それじゃあ少しは情報が入ったんだよな?」
慎重に確認するように訊ねる。
ユリウス殿下は座れっという様に顎で促した。
「だいたいの内容は聞き取ったと思う。年寄りの自尊心高い女は要らん事を言うからありがたよなw」
愉しくてたまらんと、馬鹿にしたような顔で話す。
「実は俺達も気になる情報が在って、うちの両親も今日ここに来る予定なんだ」
私もうんうんと頷いて同意しておく。
そんな私達を呆れた様に見ている。
「何よ?…… 」
私を睨んだように見て言う。
「イヤ、3日前婚約した割には、偉く仲が良いよな。やっぱり相性か??」
なんか恥ずかしい事突っ込んで聞かれている。
マーベル様を見ると顔を真っ赤にして震えている。
それを見て私も瞬間湯沸かし器の様に体温も顔も熱くなった。
「そっか。そっかぁ…… なるほどなぁ(笑)」
ニヤニヤしながら私達を見ている。
”コンコン”
ノックの音がする。
入ってきたのはチヨちゃんのご両親と陛下と宰相様と年輩の男性………
「待った?」
ニッコリ笑ってマリエ夫人が聞く。
私はフルフルと頭を振る。
「フフフ、あの話はもう陛下達に話したから、この部屋では素で大丈夫よ。それからユリウス君あり
がとう。まさかここまでしつこいとは思わなかった。」
「いいえ、チヨを守るのは俺自身の為でもあるので、気にしないでください。」
そう言って、またお茶の準備をするユリウス殿下。
これは私がしないとダメなヤツではないのかな?!
そう思い手伝いに行く私。
しかし………
横目でチラッと見たユリウス殿下は
「リディアーヌ、お前にお茶を入れるのは無理だ。気持ちだけ貰おう。」
と言われた。
そんな私をマリエ夫人は、笑いを堪えて愉快そうに見ていた。
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皆思い思いの席に座り、お茶を飲んで寛ぐ。
こうやって見ると年齢も立場もバラバラだ。
そんな中マリエ夫人が
「今日はいろいろと話し合う必要があって、ここに集まって貰ったの。不安要素が不明確だと不便でしょ。だから今皆が持っている情報をすり合わせたいの。」
とニコニコ笑いながら言うと、宰相様も頷いて
「先程リディアーヌ嬢から頂いた情報も面白いものでした。実際ここに集まった情報で、視えるモノがあるなら幸いだ。皆心する様に」
皆が先の未来のために真剣だった。
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始めに私リディアーヌから話した。
マリエ夫人と同じ転生者であること。
乙女ゲームの事。私も完全に覚えていないが、マリエ夫人よりマシだった。
・マリエ夫人が流行り病でなくなり、マーベルは孤独になる。
ギルバートは気落ちで廃爵になる。
もちろんチヨちゃんは生まれない。
・バルトル子爵(ギルバートの兄)の奥さんが領地の維持費を莫大に使い込む。管理費も別の者が使っていた。それもどうやら奥さんの親族筋らしい。
バルトルの奥さんは、ユリウス殿下の母親の紹介だった。
・ギルバート侯爵(グラッセ領)の調べでは流行り病の兆しはここ数年ない。
バルトル子爵の元奥さんの愛人は隣国ボクワイの人間だった。
「フ~ン。それじゃ俺から、一週間前の睡眠薬混入は俺の乳母だった。乳母が言うには俺は裏切り者らしい、堕落者と言われたよ。人を当てにするばかりの癖に、ホント図々しい事だ。もちろん母の縁者だ。」
「偉くグラッセ領の、隣の国ボクワイは騒がしいですね。」
宰相が目をすがめて皮肉気に言う。
私は言った。
「本来なら、流行り病で宰相様は亡くなります。数名の大臣も亡くなります。それで国力が著しく低迷したから、ボクワイが進軍をし紛争が起こります。そして騎士団長など有力な騎士が大けがをし戦力を欠きます。ですが一応停戦します。ただその時グラッセ領の半分はボクワイに吸収されたような………」
「なるほど…… 国力も戦力も低迷。そしてその時の宰相があの男とは、どうしてでしょう?」
宰相様が頭を捻って考えていると
「多分、戦争終結に際して何かあったんじゃないか?アイツの嫁はユリウス殿下の乳母だった者の娘だ。」
陛下が憶測を話す。
「とにかく…話しているだけでもボクワイは関わり過ぎです。紙に書き起こし整理しましょう。」
宰相様は頭が痛いという様にバルトル子爵に依頼していた。
皆の情報をすり合わせていくと、とても長期的計画であることがわかる。
全てが一本の道のように繋がっていくのだ。
「こうやってあった年を入れて行くと、全ての始まりはマリエ夫人がギルバートと結婚した次の年から起こっていますね。あなた方の結婚には何か秘密でもあるのですか?」
宰相様がチヨちゃんの両親に聞いています。
もちろんマリエ夫人は記憶を失っているのでわからない。
バルトル子爵も首を傾げているので知らないのだろう。
そうなると、ギルバート侯爵は………
考え込みマリエ夫人を見ている。
もちろんキョトンとした顔で見ているマリエ夫人。
「何かやっぱりあるのですか?」
宰相様が更にギルバート侯爵を詰問する。
皆が注目している中、ギルバート侯爵は葛藤しているようで………
それを見ていたマリエ夫人は、ギルバート侯爵を揺さぶる。
「ねぇ。私の亡くした記憶に何か重大な事があるの?隣国に関わる何かあるのかしら?それなら教えてよ。だってなんでチヨちゃんこんなに狙われるのよ。ムカつくっ足らないわ。うちの子よ。なんで一緒に住めないのよ!!ねぇ、いったい亡くした記憶に何があるのよ!!」
部屋には、マリエ夫人の溜まりに溜まった慟哭の声が響いた。
読んでくれて、ありがとうございます(*´ω`*)