表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生を望んだら戦国時代の遠野に来ました  作者: 海胆の人
文亀4年/永正元年(1504年)
99/189

第九十八話 工部卿としての初仕事

横田城 阿曽沼孫四郎


 ということで工部卿となった。折角なので職工たちを集めて顔見せを兼ねて各人を集める。


「元服もまだだが、工部卿を拝命したのでな。みなよろしく頼む」


 一同がひれ伏す。


「各々面を上げよ。まず全体の確認だが、弥太郎、いや工部大輔、農具の製造はどうだ」


「ははっ。当面各村に二台の馬鋤に馬鍬、各村に一台手押し田植え機を回せるようになりました」


「もう少し早く作れるようになればよいのだが、そなたは研究もあるしな」


「ねえ若様、手の空いた人たちを集めて手伝ってもらったらどう?」


 雪が合いの手をいれてくる。そうか分業か。アダム・スミスの富国論だったか?あれ国富論とも言うんだっけ?どっちが正しいのだろう。それはともかく分業したほうが生産効率が上がるとか言ってたね。


「ふむそうだな。農家の次男坊三男坊に娘どもを集めて作業所を作るか。工部大輔、すまぬが今年は分業制の確立にも力を注いでくれ。他のものは簡単なものから分業出来るように支度をしておいてくれ」


「承知しました」


「ははっ」


 改良などは弥太郎の手が必要だろうが、作るのなら分業してしまおう。それに分業にすれば全体像を知っているもののみ守ればあとは少し漏れてもちんぷんかんぷんだからな。


「次に箕介、紙の出来具合はどうか?まだ生産量は増やせるか?」


「は、単刀直入に申しまして原料も人も足りませぬ。従いまして作れるものも今の量が限界でございます」


 むうそうか。とりあえず目の上の瘤の一つである三戸南部は爆砕したが、他にも周辺の大名が厄介である。


「他の木々を用いて作ることは能わんか?」


「試したことはありませんがわかりました。一つどうにかして他の木々からも紙が作れぬか試してみます」


 上手くいけばパルプから作れるようになるかもな。そうなれば紙の大量生産が可能になり高級紙以外は我らが独占することも可能だろう。


「続いて、孫八郎、船の建造はどうか?」


「はっ。竜骨船は早ければ春にも試験船が進水する予定です。そこでの経験を元に改良したものを拵えていく予定です」


「帆は確保できるか?」


「帆ですが麻が足りませぬ。麻糸でも亜麻糸でも良いのですがとにかく足りませぬので、今年は大槌湊を整えるために切り崩した山を麻畑としようと思います。帆布ができるまでは筵帆を使う予定にございます」


 麻糸が足りんか…麻用の農地を増やそうにも人手が足りんな。移民局使って攫ってくるか?まずはその地の次男坊三男坊を駆り出すか。


「それともう一つお願いがございます」


「なんだ?」


「大槌川に橋を架けるお許しをいただきたく」


「もちろん構わんが、渡しの者共はどうするのだ?」


「橋守をやらせます」


 橋は修繕が必要なので通行料を取るようにするとか。通行料から橋の修繕費を出させて残りを橋守の取り分とすると。雇用の創出という面でもしばらくはそうせざるを得ないか。いずれインフラの修繕も税でまかないたいものだな。


「すでに話がついておるのだろう?そなたに任せる」


「ははっ」


「それと気になるのが湊の整備とな?」


「は。昔ながらの船ならば今の湊でも良いのですが、竜骨船は喫水が深くなりますのでこのままでは湊に入れることができないのです」


「それで海が深くなるところまで岸壁を作ると?」


「そのとおりでございます。若様の今後のご予定を考えれば今のうちに埠頭のプロトタイプを作るべきかと」


 今後の予定ね。まだまだ小身だからどうなるかわからないような。しかし埠頭整備までは思いつかなかったな。持つべきものは友だね。


「続いて登り窯だが、どうだ右近?」


「はっ、はっ、ようやく火が安定して参りました故、春頃から本格的に焼き始める予定にございます。また合わせてより大きな窯を設けようと思ってございます」


「そうか。もっと掛かると思っておったが順調そうだな。そなたの窯が阿曽沼の命運を握っていると言っても過言ではない。頼むぞ」


「はは!この命に変えましても!」


 そこまで覚悟しなくていいよ。でもようやく本格稼働か、これで耐火煉瓦の他に普通の煉瓦も作れるようになるだろうから、構造物の耐火性が上がるのでだるまストーブや暖炉などの設置が可能になるな。


 そして俺の火薬はまあなんとかなっているとはいえ、三戸を燃やすのにほぼ全部使ってしまったからまた生産していかないとな。


「ところで、ねえ若様ぁ?石鹸はまだですの?」


「ぐっ…。昨年も石鹸は作ったのだが、泡立たなかったのだ!」


「それどころか手の皮がボロボロになってたわね」


 そうだ。分量がわからなかったので灰をこれでもかといれたらば、すごいアルカリ性だったみたいで手の皮が剥けてすごく痛かった。というか知ってるくせになんで聞くんだよ。


「今年は毛皮で手袋作らせたからな。なんとかしてみせる」


 大豆の収穫が増えたので大豆油も少し増えたしな。今年こそ石鹸を作りたい!


「そういえば一郎、時を計る絡繰りはどうなっている?」


「はっ。間もなく一号機が出来上がります故、お楽しみにしていてください」


 最初の時計というとどんなもんだろうか?ちょっと楽しみだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ