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第五十九話 窯が必要です

「孫四郎、陶器を作りたいと?」


「はっ。外に売れそうなものは何でも作ってみたく存じます」


「しかし、横田ではもう人手が足りんぞ」


「となると葛屋に頼んで人買いしますか?」


「陶工が手に入るならそれでも良いがな」


とりあえず陶工がほしいのは間違いないので次に葛屋が来た際に来れるものが居ないか聞いてみよう。


「おや兄上に神童ではないか。今度はどんな悪巧みをしようとしておる?」


「おお守綱か。いやなに孫四郎が陶器窯をつくりたいと言い出してな」


「陶器か……、俺の領地でいいなら土地と人手を融通しよう」


「叔父上、よろしいので?」


「松崎だけ美味いことやっていると妬むものも出る。多少割り振りしたほうがよいぞ」


それもそうか。今までは実験的要素が強かったので誰も気にしていなかったが、ある程度紙漉きや田畑がうまく回りだしたのでそろそろ新しいことをやりたいものも出てくるだろう。


「して、叔父上の土地で良い土が採れるとこはございますか?」


「しらん。まあ神童、そなたのことだから既に土探しは始めておるのだろう?」


鱒沢の叔父上の信頼が篤くて助かります。


「左近めに申し付けて手当り次第、試してみることにしております」


俺の返答に叔父上も満足そうであった。


登り窯の土地はなんとかなりそうなので、弥太郎や左近などを連れて適地になりそうな場所をさがす。


「日当たりがあまりよくない使いみちのない土地が良いかな?」


「まあ無難でしょう」


「となると川の南側だな。叔父上、あの辺りは使ってよろしいか?」


川向うの北側斜面を指差す。土を乾かすときに日陰になって乾きすぎないだろうし丁度いいかもしれん。


「ふむ、和野か。いいだろう」


叔父上の許可も頂いたので斜面を伐採していく。鱒沢氏の居館のある鳴沢からもほど近くなだらかな傾斜地になっている。

一回目の麦踏みも終わり、しばらく仕事がないので手の空いている民を動員する。


「ところで若様、登り窯の構造はご存じで?」


「いやしらん。誰かしらんか?」


一同首を横に振る。まあ登り窯は知っていても構造はしらんよなぁ。立杭焼でみたのはたしか一定間隔で竹の節の様な横向きの出入り口があったな。中身はしらんが。


「穴窯でしたらこの清之も存じておりますが。登り窯とやらは初耳でございますな」


「うむ、明や朝鮮では使われているらしい」


「なるほど、明の窯ですか」


雨や雪で濡れないように屋根を組んでから木枠を組んでいく。


「若様、そのまま筒状になっていては登り窯にならないのでは?」


「そうか?じゃあどうする?」


「なら、壁をつけてみますか?」


「一郎、どうするのが良い?」


「いやぁ登り窯は詳しくありませんので……。ただまあ上に抜ける構造だと対流によって熱がそちらに抜けますので、壁をつけるなら下方につける方が良いかもしれません」


なるほど対流か、すっかり忘れてたな。とりあえず試験窯なので焚き口を入れて四個の部屋を作りそれぞれ人が入れるような横穴を組む。最上部は立杭の窯のように蜂の巣みたいな穴沢山にしておく。


壁とかどうなってたっけか、なんか煉瓦っぽかった気がするけど今できる煉瓦って日干し煉瓦くらいだな。とりあえず土で作って駄目なら試してみよう。


「対流?この一郎という童は何者でございますか?」


「こやつは弥太郎の丁稚よ。筋が良いので色々弥太郎にたたき込まれているそうだ」


「なるほど、弥太郎殿の」


一応納得してくれたようだ。


「火入れはいつ頃できるだろうかな?」


「しっかり乾かさないと割れてしまいますから……、年明けでしょう」

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