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第五十八話 電気って便利だね

水車小屋 阿曽沼孫四郎


「うーむ、トンネルですか」


「なんとか掘れないか?」


「掘れますよ。作業の安全を無視すれば」


「安全な堀りかたか……NATMとかシールド工法とかくわしいか?」


「私は機械屋ですよ。トンネルというか土木工学は専門外ですんで全くわかりません。ところでなんでトンネル掘りたいんです?」


 遠野と海岸部の物流を改善するためにトンネルが必要である事を説明する。


「なるほど。たしかにトンネルができれば物流はかなり改善しますな」


「トンネルってぎゅいーんってドリルで掘れば良いんじゃ無いの?」


 ドリルは確かに男の子大好きアイテムだが、そんなドリルヘッドは作れないし動力がない。


「なあ弥太郎、ドリル作れないか?」


「無茶を言わないでください。ドリル用の刃なんて無理です。それにトンネル内での駆動力はどうすんです?」


「エンジンかなんかで動かしてるんじゃないの?」


「雪様、そんなことしたらあっという間に酸欠か一酸化炭素中毒で死にかねません。坑内では無理やり給排気筒を着けてエンジンを回すか電動にするしかないですが、どちらもありません。」


 蒸気機関もないからな。電気も水力発電しかないわけだが。


「皆様なんの話しをされているのですか?」


 女給服の助手兼秘書が湯を置く。


「ああ、電気と言うものがほしいなと」


「電気?どのようなものですか?」


「雷のようなものだ。ところでそなた、名は何という」


「小菊と申します。でんき・・・弟がすまほがどうのこうのとかといれがどうのとかよくわからないことを最近つぶやくようになりまして、気が触れたのかと思い、弥太郎様に相談しようと思っておりました」


 もしかして転生者か?いやトイレやスマホを気にするのならまず間違いなく転生者だろう。


「小菊とやら、明日そなたの弟を連れてきてくれぬか?」


 小菊がお辞儀をし、この場を離れる。


「しかしスマホとかいってるんならまず間違いなく転生者かな?」


「多分そうじゃないかしら」


「まともな奴ならいいんだがな」



 翌朝、朝の修練を終え水車小屋に赴く。


「そやつがそなたの弟か。名は何という?」


「一郎と申します。ほれ、ごあいさつなさい」


一郎と呼ばれた男の子が平伏する。


「い、一郎と申します。平素は姉が大変お世話になっております」


 挨拶は普通か。


「歳はいくつか?」


「六歳でございます。ぼ、私がなにか致しましたでしょうか?」


「そのことなんだがな、そう固くなっては話もできん。小菊よすまぬが湯を持ってきてくれんか」


 小菊が一礼し、台所にむかう。


「さて、小菊の居ぬ間に本題だが、そなた転生者か?」


「は、はい。もしや若様も?」


「そうだ。スマホも無ければ水洗便所も風呂もない時代に転生して大変だろう」


「はい。スマホがないのも困りますが、なによりあまりの不衛生さに辟易しております」


 普通はそうだよな。風呂は自由に入れないし、便所は共同のぼっとん便所だし蠅は飛び回っていて不快この上ない。


「そなた前世では何をしておった?」


「小学校の教師です」


 お、技術者がほしかったが、教育者が来てくれたのでこれはこれでありがたい。


「教育に馴染みのあるものが得られたことは大変ありがたいな」


「理科がすきでして、研究で食って行くのも大変そうだったので、あはは……。あと趣味で溶接とかやっていました。アーク溶接ならできます!」


溶接もできるのか。ありがたい。しかし残念ながら電気はない。


「あーでも電気がないんですよね」


「発電機作れるのか?」


「理科の実験でモーターを作っていましたので。それより銅が必要なので銅を作りましょう」


「銅精錬できるんですか?」


「ふふふ。某TV番組で反射炉作っているのを見ましたからね。もちろん自分なりに調べておりました」


 あああの国民的テレビ番組か。確かにあれを見ていたらできそうな気がするな。とりあえず耐火煉瓦からだが耐火粘土の鉱山は岩泉とか久慈のあたりに大きなものがあったが、同じ北上山地系なのでどこかでみつからんかな。


「よし、焼き物用の土を探すという名目で領内各地の土を持ってこさせるか。耐火粘土でなくとも便器はできるさ」


 雪のまだ積もらない今のうちに登り窯の製作にかかろうと言うことになった。本当はホフマン窯を作りたいがあれはコークスが必要なので、とりあえず登り窯で煉瓦などがある程度生産できる見込みを立ててからということになった。

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