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第五十七話 束子が欲しい

横田城 阿曽沼孫四郎


 いつもどおり日が登る前に目が覚める。だいぶ風が冷たくなってきたのでそろそろ麦踏み大会の調整をしなければな。


 犬小屋に行きブチとハチに餌と水をやり、馬小屋につれていく。そろそろ双方なれてもらおう。馬小屋の前で二匹をまたせ、白星を連れ出す。


「白星、目の前の犬の様子を見てやってくれ。敷き藁を替えてくるからな」


 ブチもハチも白星に興味津々に匂いを嗅いでいるが、一方で白星はあまり興味がないようだ。古い敷き藁を堆肥小屋に持っていくための樽に詰めていく。俺の力ではまだ樽を動かせないし、清之にそこまでしなくていいと言われている。


 城の近くにある堆肥小屋からは微かにアンモニア臭が臭ってくる。先日小屋を見たときにはいい具合に発酵しているようで結構暑かった。馬の頭数が増えたので馬糞が増え、結果的に発酵温が今の所維持されている。


 今はこの堆肥小屋は普通の納屋のような木造だが、断熱性を考えれば土をかぶせたほうが良いかな。そういえばマッシュルームの栽培は馬糞の発酵熱を使ってたとかどっかで見たような。


「真冬もこれくらいの室温が維持できればよいのだが。そうすれば椎茸の栽培も見えてくるし。」


 馬小屋からでると白星が横になっており、周りをハチとブチが飛び跳ねている。


「そなたら随分仲良くなったな。白星、水場に行くぞ」


 白星がのっそりと起き上がり、ハチとブチがその周りを駆けながらついてくる。水場に着くとハチとブチが恐る恐る沢を眺める。まだ雪は降っていないのが沢の水はすっかり冷たくなっている。勢いも弱いので子犬でも流されないだろう。


 水をくみ上げ縄束でこする。そういえば束子たわしって無かったな。確かシュロかなんか使ってたような。ワジュロはたまに東北でも植えられていたし、このあたりでも育てられるだろうから持って来れないかな。


 ここ数日の汚れをしっかり落とす。よし、これでしっかり洗い終わったな。周りを見ればハチとブチが沢の中で跳びはねている。


「ハチ、ブチ、戻るぞ」


 沢から飛び出して来たのでそのまま城に戻る。朝飯までまだ時間があるので少し素振りと腕立て伏せをする。しっかり汗が出てきた頃に朝食ができたと声がかかる。


 栗の入った糧飯と焼き魚の朝食を食べる。魚は大槌から持ってきた干物だ。麻の栽培が軌道に乗ったら海面養殖もできるか、牡蠣の筏とか海鞘の筏とか。養殖法なんて全く知らないけど。


 それはそれとしてそろそろ鉄山は見つかっただろうか。


「左近いるか?」


「ここに」


「以前そなたにも話した鉄山だ」


「申し訳ありませぬ。まだ見つかっておりません。」


 笛吹峠や仙人峠のあたりと言っても広いからな。まだ見つかって無くても仕方が無い。


「いまはどのあたりを探している?」


「笛吹峠から大峰山のあたりでございます。」


 なかなかいい線行っているな。


「人手は足りておるか?」


「生憎と某だけでございます」


「鉄は急がずとも良い。まずはそなたの配下を増やせ。そなたがいくら有能でも一人ではできることは限られる。知り合いの山伏を使っても良いし今度孤児を幾人かそなたに預けてもよい。孤児は見込みのありそうなものを選抜して使え」


 左近が頭を下げ、部屋を出る。優先事項は俺と周りの人の身の安全の確保だけどこれは供回りとか近習などが居るからいいとして、人手を増やしてやってもらわないといけないこともたくさんあるからな。

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