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第五十五話 釜石視察

狐崎邸


「玄蕃よすまぬな」


「殿……、いえ得道様構いませぬ」


 ドスドスドス、大きな足音が鳴り、応接の間に宇夫方守儀が入る。


「宇夫方様、若様のご容態は如何ですか?」


「うむ。今はよく眠っておる。おそらく疲れで熱が出たのであろう。すまぬな玄蕃よ」


「いえ、孫四郎様の御身が大事なれば」


「熱が下がったら挨拶をさせる故、しばし逗留させて貰うぞ」


「なにもないところではございますが、ごゆっくりなさってくださいませ」



謎空間


 また熱出してしまった。それも旅の最中だなんて参ったね。狐崎にはあとで謝らないとなぁ。


「久しぶりね」


「神様、ご無沙汰しております」


「正確には主上の使いだけど」


 俺からすればあまり変わらない。


「こうやってお会いできたと言うことは、何かあるので?」


「そうよ!少し領地拡大したじゃない」


「ええ、それが?」


「お祝いをしてあげようかと」


「熱出して倒れるのがお祝いってのは少し悪趣味かと」


「違うわよ!貴方のとこに行ってもいいって人が居たのよ!」


「どんな人ですか?」


「もうあんた会ってるわよ?」


「え?」


「その人達は近々目覚めるわ。」


 ん?達?複数人居るのか?


「さあ、あんたもいい加減目を覚ましてあげなさい。付き人が心配しているわ。」


 あ、お願いしそびれた。まあまた今度にしよう。



狐崎邸


「んん、ここは?」


「おお!若様、目を覚まされましたか!」


「清之か。俺はどれくらい眠っていた?」


「おおよそ二晩眠っておられました」


「そうか、心配かけた」


「何か粥でも持ってこさせます。」


 清之が安堵した表情を浮かべ、小姓に声をかける。


「ふぅ。人心地ついた」


「体調はもうよろしいようですが、今日一日は安静にしていただきますぞ」


 まあ仕方が無い。意識がなくなるほどの熱だったわけだからな。


 翌朝、すっかり食欲も戻った。


「すっかり快癒されましたな。童は回復が早くて羨ましいですな」


 得道と清之に連れられて評定の間に入り上座に座る。


「阿曽沼左馬頭守親の名代として来た孫四郎だ。皆よろしく頼む。いきなり迷惑をかけたな。狐崎玄蕃よ礼を申す」


 狐崎が深々と平伏する。簡単に挨拶を済ませた後、釜石の集落を見に行く。今日も白星に乗せて貰う。俺が倒れたときは叔父上も乗れたそうだが今日は完全拒否していた。


「白星、驚かせたな。今日も頼むぞ」


 任せろと言わんばかりに大きく鼻息を吐く。


 狐崎城をでて海岸線に沿って移動する。甲子川の対岸は前世では釜石製鉄所の巨大な工場が鎮座しているわけだが、まだこの時代には田んぼが広がるばかり。海岸にそって走る浜街道を南へいく。


 このまま海岸線を行けば平田という集落に出る。平田の南、石塚峠というところが現在の千葉氏との境界線という。


「ここは?」


「ここは鎌崎というところです。ここからは釜石と平田のどちらも眺められる良い場所でございます。」


 現代なら確か観音像があったな。船が作れるようになったら観音像の灯台を築き、航路の安全を図りたいな。

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