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第五十三話 大槌視察2

大槌城 阿曽沼孫四郎


「ようこそお越しくださいました、孫四郎様」


「孫八郎殿。息災でしたか?」


「すでに我らは若様の臣下であります。敬称は無用でございます」


 得道に注意される。呼び捨てにしなければならなかったか。


「では改めて、孫八郎よ息災であったか?」


「はっ。お陰様でございます。このような場でお話するのもなんですので、どうぞお上がりください」


 孫八郎に案内され、館に上がる。


「ご遠慮なさらずに上座へどうぞ」


 促され上座に座る。左側には守儀叔父上、右側に清之が座る。下座の正面には大槌の当主を譲られた孫八郎が座り、左手に得道、右手に狐崎が、そのほかのものが後列に座る。


「改めまして、ようこそお越しくださいました。我ら一同、阿曽沼への臣従をお誓い申し上げます」


 孫八郎を筆頭に皆が平伏する。前世もただの平社員だったからこういう対応は正直むず痒い。


「父上の名代として来た孫四郎だ。皆よろしく頼む。まずは土産をやろう」


 土産と聞き、皆の目つきが変わる。


「恐れながら孫四郎様、土産でいただけるものとは……」


「燻製肉だ。そなたらが大層気に入ったと得道より聞いておる」


 燻製肉と聞いて皆、目が光り、よだれを拭う。待ちきれぬと言ったところだな。


「孫四郎様、大変良いものいただきまして感謝申し上げます。遅くなりましたが、ぜひ宴をお楽しみくださいませ。海の幸によりをかけたものとなっております」


 こちらとしては海のものが食いたかったので願ったり叶ったりだ。


「生憎と当地は碌に米が採れませぬ故、糧飯になっております。鱠は牡蠣の甘酢和え、坪は鰈の煮付け、汁はマツモの味噌汁、猪口はヒラメの刺身にしております。平にサザエの味噌煮、もう一つの汁はわかめの味噌汁、焼き物に鮑でございます」


 正直ベーコンなんかよりこっちの方がすごいご馳走ではないか。鮑のステーキなんか前世ではとても食べられるものじゃなかったぞ。転生、万歳!


「おお!これは美味いな!」


「あとでこの魚や貝の調理法を教えてくれ」


 清之や宇夫方の叔父上も満悦のようだ。



「美味い馳走であった。そなたらの歓待、痛み入る」


「皆様のお口に合ったようで何よりです」


「このあたりは魚介が豊富なのだな。他の時期が楽しみだな」


「四季折々の魚介をこれからはお召し上がりいただけまする」


 いいな。やはり日本人たるもの魚介は避けられぬ。この時代は冷凍できないからアニサキスやサナダ虫のリスクがあるが、アニサキスはともかくサナダ虫はどうせすでに回虫居るし気にしなくて良いだろう。


 となると虫下し……征露丸の開発がしたくなるね。そのうち考えていこう。


「孫八郎、大槌や釜石の船大工は集められるか?」


「無論にございますが、どうなさるので?」


「いやなに、商いをするために大きな船を造りたいのだ」


 そう、弁財船と樽廻船に似せたものを造りたいのだ。よく不利と言われているが、モノコック構造の和船はしっかり作られれば三千石積み船まで出来る程度には頑丈だ。20世紀になっても使われたそうだし。


 それに今の船と大きく構造が異なるでもないので造りやすい。山にはいくらでも木があるし、ジブとスパンカーとあとはキールと舵の取り付け構造を西洋帆船に倣えばそうそう見劣りしないだろう。


 それでも喫水の浅い和船では遠洋航海が難しいかな。西洋帆船も造らせたほうがいいかな。

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[一言] 大槌で牡蠣の燻製とか作ってみたら?
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