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第五十二話 大槌視察1

 蕎麦の刈り取りも終わり、まもなく小麦の播種時期だ。ここで一度大槌、釜石を視察しておきたいと父上に申し出たところ、宇夫方の叔父上が護衛に付く条件で行けることとなった。


 転生前であれば秋刀魚が捕れる時期のはずだが、集魚灯がないこの時代はどうだろうか。


 道案内として大槌孫三郎改め、大槌得道を名乗っている。


「得道よ、普段はどのような魚を食っておるのだ?」


「よく食うのは鰯ですな。とにかく網をかければ穫れますのでこれが第一にございます。これからの時期ですと鱈と言う魚がよく獲れます。これは干物にして海が荒れた際には戻して食うものでもあります」


「なるほど。他にはなにか食うのか?」


「夏前にはウニと言う一見毬栗のようなものや海鞘ほやというものもあります。鮑などの貝もよく獲れますし他にもいろいろありますぞ」


 ウニ、鮑か。海鞘はどうだろう?美味いのか?


「なかなか海の幸の豊かなところなのだな」


「時化さえなければ良いところでございますよ」


 笛吹峠の小屋で一服する。老夫婦に米などをやり、水と飯を食わせてもらう。


「爺さん、婆さん、久しぶりだな。あいかわらずでかいな」


「このなりでは里で目立ちますので、若様に拾っていただけねばどうなっていたやら」


「不便をかけてすまんな。ところで爺さん、この峠は随分険しい。もう少しなだらかな道はないものか?」


 爺さんが思案する。なかなか答えないので婆さんが助け船を出す。


「爺さん、界木峠はどうですか?」


「あそこか。たしかにあちらなら水場も近いし、雪解けも早い。ある程度登ればなだらかになって進みやすいのぅ。もっとも、道は有りませんがな」


 なるほど界木か。ここより北にあり、少し遠回りにはなるとのことだが、長大トンネルを掘削する技術も当然ないので急峻では大量輸送に向かないからな。来年あたりに調査をして街道整備しよう。


「では爺さん婆さん世話になった。達者でな」


「あとは下りだけですが、橋野までが険しい道でございますのでお気をつけて」


 老夫婦に見送られ、峠を大槌に向けて下っていく。徒歩では既に歩けなくなっていただろう。白星に乗っているので平気だけどね。引き馬は清之がしている。清之以外に紐を引かせないからしかたないのよな。わがままちゃんめ。


 青ノ木あたりまで居りてくると右手に深い谷が見える。あれが橋野高炉跡になる谷か。当然だが深い森に覆われてなにもない。そのまま川に沿って下っていくと谷に少し平地があり、まばらに人家が見える。萩の洞と言うらしい。そのまま狭い平地を下り続けて行くと海に到達する。


「おお、海か!」


「ここは鵜住居うのすまいと言う村になります」


「なるほど、ここがか」


 前世では確か河口の右手に復興スタジアムがあった。ラグビーなんぞもできれば面白いかもな。


「ここから南に行くと釜石に、北に行きますと大槌に出ます。まずは我が居城である大槌に案内いたしましょう。」


 海沿いの切り立った浜街道を伝い、大槌に抜ける。間にある峠を越えられれば楽なんだがな。


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