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第四十八話 山葡萄には雄の木、雌の木があります

遠野近くの山中


 ということで今日は山葡萄の木を探しに山に来た。


「若様、この程度で音を上げているようでは立派な武士になれませんぞ。」


 ちょっとまって。こんな山の中だとは思ってなかった。抗議しようにも息が上がってしまい、声を出すのも辛い。数え5歳なんだからまだそんな長距離歩行は無理だ。


 この獣道すらない山の中では白星も歩けないので、ずっと徒歩のままだ。


「少し休むか。神童殿、山葡萄から酒が造れるとは本当か?」

 

 守儀叔父上が問いかけてくる。


「ぜぇ……ぜぇ……。み、明の書物に、ぜぇ……、書いてました」


「なら本当のようだな。この先に山葡萄が群生していると山伏殿に聞いている」


 息を整え、水を飲む。少し落ち着いたところで出発だ。崖になっているところを越え、暫く行くと山葡萄の群生地に着く。


「ちょうど房みたいなものがついておりますな」


「これが葡萄か。房の大きなものと、房の小さいものがあるが、房の小さいものはあまり数が無いようだな」


「どっちが実になるのでしょうな?」


「わからぬならとりあえず採っていけば良いだろう」


 叔父上がとりあえず五本ずつ枝を切り取る。これで挿し木すれば何年かで実もつけるだろう。たぶん。帰り道は途中で足が震えて動けなくなってしまったので、清之に負ぶって貰って下山する。


「神童殿といえど身体はまだまだ子供よの。素振りや乗馬も始めたようだが、もう少ししたら走るのも良いぞ」


 叔父上がからからと笑う。成長と共に体力は付くはずなので今はまだ勘弁して欲しいです。


 さて横田城まで戻ってきた。日当たりの良く水はけが良くなる南向き斜面がよいのだろうがなだらかな傾斜地なんてあんまりない。とりあえず金ヶ沢の稲荷より山側で傾斜と平行に五本ずつ挿し木する。間隔もどれくらいが適正かわからないのでとりあえず広めに植え込んでみる。


「うまくできると良いな」


「そうですなぁ。若様の神通力でなんとかなれば良いのですが」


「俺が貰えるのは知識だけだからな。それにあんまり神仏に頼ってばかりでは、見捨てられるかもしれんぞ」


 山葡萄は山に生えるものだが、やはり肥料はやった方が良いんだろうか。とりあえず刈った下草を挿し木の根本に積んでおく。水やりは葉がしおれてくるようならするとしよう。


 あとそうだ、ワインの作り方はしらないな。ついでにブランデーやグラッパも。雪なら知ってるかも?


「ああ、グラッパ?それならワイン絞った後の滓を蒸留するのよ。ブランデーはワインをそのまま蒸留したらいいわ」


「え、グラッパって絞り滓からできてたのか」


「そうよ。その御蔭であんなに香りがいいのよ。苦手な人も多いみたいだけど」


「んー絞り滓から作れるなら、食料に影響しないか」


「若様、もしかしてグラッパ作るの?」


「え、だって勿体ない」


「それもそうね。アルコールは取れるし蒸留滓は餌にできるし悪くはないわね」


「じゃあ」


「「弥太郎に相談だ!」」


 勢いで弥太郎の水車小屋に突撃したが、蒸留器作るだけの銅がないし鉄で代替するとしても、蒸留器にスルような余裕はないということであえなく撃沈した。葡萄ができるまでまだ何年もかかるだろうから、大槌獲得して余裕がでてからにしよう。

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