表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/189

第四十七話 うどんと山葡萄

横田城のそば 阿曽沼孫四郎


 水車小屋が増えた。横田城のそばを流れる五万堂沢では足りなくなったのでその隣、不動沢にも水車を設置した。こちらの水車小屋は石臼を備え、搾油あるいは製粉に供せられる。


「結構喧しいな」


「しょうがないですよ。石臼がすれるんですから」


 ポピーシードオイルを作ろうかと思ったが、思ったほど種がなかったので取りやめた。代わりに乾燥の終わった小麦を挽いている。


「若様、麦を挽いてどうするのです?」


「大和の三輪では素麺が、讃岐に弘法大師様が広めた饂飩なる食い物があるという」


「それを作ると?」


「そうだ。麦を美味く食うための策よ」


一斤(600g)ほど小麦粉ができたところで城の厨房を借りる。


「水と塩を少し入れると粉がまとまるらしい」


 流石に一斤を1人でこねるのは大変だし、適正なコネ具合もよくわからんので清之と弥太郎、なぜか紛れ込んだ宇夫方の叔父上がこねていく。


「若様、水と塩はこんなもんでしょうか?」


「わからん。使った水と塩の量を記帳しておけ。どれが一番美味いか調べていく」


 皆一生懸命こねている。俺も全体重をかけてこねるがいまいち粘りが出ない。半刻ほどこねて疲れ果てたので麺棒でのばして包丁で切っていく。太さはバラバラだ。


「なるほどそういう感じになるのか」


 宇夫方の叔父上が納得したようで綺麗に斬っていく。さすがは我が家の包丁番。包丁捌きがピカイチだ。


 よく沸かした鍋で茹でていく。確か半刻ほどだったか?んー時間がわからん。多分こんくらいだろうからヨシ!時計が無いから仕方がない。


「よし皆できたな。食ってみよう」


 んーやっぱ俺の体重では足りなかったか、コシが足りない。続いて麺の太さが綺麗に揃っているこれは叔父上のか。ふむ俺のより美味いがやっぱり少しコシが足りないな。弥太郎のはしょっぱくて食えぬ。清之のはもそもそしておりコネ方も茹で方もいまいち足りてない。


「叔父上のが一番美味いな。弥太郎は塩が強すぎる。清之のはぼそぼそしとるな」


「ふむ。柔らかくて食いやすいが、出汁に合わせる事を考えるともう少しコシを持たせた方が良さそうだな。あとは俺にまかせろ。美味いのができたら神童殿に教えてやろう」


 これは叔父上に任せるのが良さそうだな。美味いレシピができたら量産して乾麺にできたら保存食にもなるし、商品として売り出すこともできるだろう。


「ねぇ若様」


「どうした雪?」


「うどんも良いけど、パンも食べたい」


「パンか……イーストの分離法なんてしらんぞ」


「干しぶどう使えば良いんじゃ無い?」


「干しぶどうから採れるのか。しらなかった。じゃあ山葡萄でもいいから探してみるか。うまくいけば葡萄酒も作れるかも知れない。」


「お、若様、山葡萄から酒を造れるのですか?」


「清之聞いておったか。うむ、明や南蛮では葡萄から作った酒が飲まれているそうだぞ」


 酒が造れると聞いて清之の目が光る。


「あんな食えぬものなら、山に行けばいくらでもありますぞ」


「ヨシ!では、明日葡萄の木を採りに行くか。」


 葡萄酒ができればブランデーとかグラッパとか色々酒も豊富になるな。何より食えないものを飲み食いに使えるようになるなら儲け物だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ