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第四十三話 狗の子の躾

横田城 阿曽沼孫四郎


 日が昇り、一日が始まる。身丈に合わせた木刀で汗が噴き出るまで素振りする。白湯をのみ、犬小屋に寄ってブチとハチの世話をする。糞を片付け小屋を洗い首輪をつけて散歩に出る。


 初めて目にする田畑に興奮しているようだ。片っ端から口に含んでいく。近くを少し歩いて横田城に戻ると木の玉をゆっくり転がす。あまり激しく投げると闘争本能を刺激して手がつけられなくなってしまうかもしれない。


 欠けた茶碗をいくつか用意して、一口大の餌を隠す。匂いを嗅いで物を探す訓練で、ストレス解消にも成る。この嗅覚を使う訓練を巧く使えば狸や狐などの狩りにも使えるかもしれんな。


 ブチは餌の匂いを嗅ぐやいきなり器をひっくり返して食べる。一方、ハチは器をひっくり返しはするが食べて良いかアイコンタクトしてくる。もちろん食べて良いのでよし!と合図をする。ハチのほうが作業犬に向いていそうかな。


「若様。こちらにおいででしたか」


「清之か」


 ブチもハチも清之という知らない人間に興味津々のようだ。


「おお、狼の子ですな。吠えぬものですな」


「清之も触ってやってくれ。人に馴れるための訓練になる」


「どのようにすれば良いので?」


「大きな声は出さず、ゆっくり近づいて、手を差し出しながら腰を落としてくれ」


 清之が言われたとおりゆっくり近づいて手を差し出しながらかがむと、ブチとハチが駆け寄って手の匂いを嗅ぐ。


「それでここからどうすれば良いですか?」


「そのまま顎をなでてやってくれ」


 なでられた二匹はコロンとお腹を出して転がる。軽く腹を撫でさせ、


「ブチ、ハチ、戻れ」


 呼ぶと二匹ともこちらに駆けより座る。


「良し良いぞ。そのまま伏せ」


 二匹が落ち着いたところで清之に声をかける。


「済まない。で、なにか用か?」


「ああいえ、そろそろ馬の練習をされてはどうかと思いまして。しかしよく訓練されてますな。狼がこんなにも人に馴れるとは思っておりませんでした。私も狼……いえ犬を飼いたいように思いまする」


「馬か。今日はもう疲れているようだから明日から狼、馬ともにお互いを馴れさせるか。お前らは小屋に戻って良し」


 二匹がじゃれつきながら小屋に戻る。


「では厩舎にいくか。ああそれとそろそろ葛屋が帰るな。あとで葛屋のところに寄ろうか」


「では早速厩舎へ参りましょう」


 くっ!馬に乗れると思ったら厩舎の掃除からか。


「若様、人馬一体と言いますがそれは馬からの信頼があってこそです。まずは馬の世話をしっかりできるようになって、馬の信頼を得るところからですぞ」


 くそ!馬糞重いし臭い。木の鋤で糞をどかし、熊手で敷き藁と飼い葉を掃いていく。やっぱ熊手は便利だな。竹と縄があればできるのも高ポイントだ。


「飼い葉と敷き藁の交換が終わりましたら、馬を洗いに水場に連れて行きますぞ」


 水場は城のすぐそばを沢が流れているので大した距離では無い。水車小屋の水車がくるくるゴロゴロ回っている。

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