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第百八十一話 弥太郎の外堀は埋まっている

橋野高炉建設地 水野工部大輔弥太郎


 高炉の建設を始めて10日になる。土台になる石組みと円筒状の銑鉄をためる部分と出銑口となる穴を設けた。正直高炉の構造なんて知らないが、若様が鉄の博物館で見た模型は底部が円筒形だったような気がするとのことなのでとりあえずそうしてみた。野たたらは概ね3尺(約90cm)ほどの横長な方形をしているが、高炉は細長かったと思うので若様と相談の上で20尺(約6m)で試作することになっている。


「旦那様、難しい顔をなさってどうされたんですか?」


「小菊か……いや、果たしてこれで本当に鉄ができるのだろうかと思ってな」


「……旦那様、旦那様は若様のことを信じておられますか?」


「無論だ。しかしどうした急に」


「ふふっ。私の信じる旦那様が信じる若様のお知恵です。私は信じたいと思います。それに、一度や二度うまくいかないくらいでへこたれるような旦那様ではないとも信じています」


 きらきら輝くようないい顔で言ってくれる。


「あ、あの……旦那様?な、生意気な口をきいて申し訳ありません!」


 俺が黙っているので怒っていると思ったのか謝ってくる。


「べつに怒っていないさ。……すこし考えすぎていたかもしれんな」


「それなら……。眉間に皺が入ってましたのでてっきり怒っておられるかと」


 ん、そうか、怖がらせてしまったか。まあ今考えても仕方が無い。うまくいかないならそれはそれで検証すればいいこと。


「すまんな。怖がらせてしまったようだ。明日も作業が忙しいからな、しっかり寝ようか」


「はい」


 そういって筵を敷き寝転がるとなぜか小菊が隣に寝転ぶ。


「おいおい、嫁入り前なのにはしたないぞ」


「大丈夫です。皆さんすでに私と旦那様を夫婦だと思っておりますので!」


 え、どういうことだと聞こうとしたが、小菊の可愛らしい寝息が聞こえてきたので起こさぬよう頭をなで、俺も眠りについた。





寺池城 葛西政信


「ごほごほ……」


「父上、ご容態は如何でございますか」


「うむ、悪くはない。ごほっ……」


 いかんな、無理を押して遠野に行ったからか体調が思わしくない。


「やはり遠野にいかれたのが響きましたか」


「そうであろうな。このおいぼれには少し酷であったようだ。しかししばらく休めばまた動くだろう」


 冗談めかしてみたが高信の表情は晴れぬな。


「そういえば遠野には医者がおります。阿曽沼に頼んでこちらに来てもらいましょうか」


 そういえば田代三喜という医者が居ると聞いておった。周りのものを安心させるためにも、医者を連れてきてもらうよう頼む。近習が早速走って出ていく。


「ところでこの城も阿曽沼の鍋倉城に負けぬような城にしたいのう」


「ええ。あれはずいぶんと立派な城でした」


 このところ領内の武将らに不穏な動きが見られるようだ。阿曽沼の城のような立派な城があれば威厳を取り戻すことができるだろう。四層の天守とか言う大きな櫓はあれは見るものを圧倒する。さらに領主と重臣が住んでいるので何かあったときの対応も早く取れそうだ。それに城を中心に町を作りつつあるのも面白い。あれを真似た城を作りたいが武将らを城下に集められるようでなければならん。阿曽沼の如き小さな身であればできるだろうが、当家はまず石巻(葛西宗清)を倒さねばな。

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― 新着の感想 ―
揚げ物という油を大量に使う食事にしても大規模な天守を伴う城づくりにしても内政チートな阿曽沼のレベルで考えると家中に歪を産みそうですね。 単純に油のお金だけでなく油物が食事に多くなることによる健康上の…
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