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第百八十話 凶作後は苗が足りません

大槌城 大槌得守


「出航の支度はどうか」


「八分方終わっております」


 明後日には二回目の蝦夷地航海だ。この梅雨入り前の時期は釧路近辺はたしか濃霧に覆われる可能性が高いから行けるかどうか。十勝内部の探索と入植を考えるか。

三隻目のスループはまだ帆ができていないので二隻での航海になる。


「米も酒も武具も多く載せております」


「うむ。葛屋殿のお陰で積み荷の管理も楽ができる」


「こちらも大商いさせていただいてますんでこれくらいは当然にございます」


 大変結構だ。大槌の湊は少しずつ形ができてきた。あと数年もすれば直接接岸できるようになるだろう。一方で蝦夷地にも湊がほしいので何人かベッチャロに入植させて湊の整備と街の整備を始めたい。ということで農具や工具も積み込んでいく。


「馬は出航の直前に積み込め」


「雄雌どちらもですか」


「そうだ。あちらには馬がいないのでな。毎回こちらから運ぶわけにもいかないのでいくらか連れて行くしか無い」


 釧路に贈った騙馬と違い今回は繁殖用の馬だ。前世のように畑が広がっているわけではなく、まだ鬱蒼とした森林地帯と湿地帯になっているので馬が活躍するのはしばらく先になりそうだが、今のうちに馬にも慣れてもらったほうがいいだろう。



根城(八戸) 南部薩摩守治義


トン…トン…と扇子が机を叩く音が響く。


「むう……今年は去年よりは暖かいが、作付する苗が足りなかったか」


「はい。幸い稗はよく育っておりますので……」


 田に広がるのは稲ではなく稗の苗。稲よりも育ちが早く寒さに強いため広く栽培されているが、収量も味も米には遠く及ばない。


「そういえば久慈は阿曽沼にも誼を結んでおるようだな」


「次男を人質に送り込んだようです」


「お陰で九戸らと久慈の関係がびっこしゃっこ(ぎくしゃく)しておるようだな」


 あちらで不和になってくれればこちらも三戸奪取しやすくなるので悪い話という訳でもないのだが。


「しかし当家が邪魔したとは言え庶兄の北左衛門佐(致愛)を当主につけなかったのだな」


「どうやら一戸や九戸らも宗家を名乗りたいようですな」


「ふん……宗家であれば当家で十分であろうに。とはいえその様な中での久慈の動きはさてどうなるか」


 一戸が持っていた宮古などはすでに阿曽沼に落とされておるし、久慈が阿曽沼につくと阿曽沼とも接することになるか。


「どうしますか? 当家も阿曽沼と誼を結びましょうか?」


「ははは、なかなかいい冗談だ。いかに日の出の勢いで葛西の後ろ盾を得たとは言え斯波に取って代わったわけでもない。久慈が付いたとて当家が遅れを取る相手でもない」


「はぁ……」


「が、要らぬ横やりを入れられるのも確かに困りものだからな。ご機嫌伺いくらいはしておこうか」


 三戸を奪うくらいまでは下手に出て良いだろう。その後によく儲かっているらしい阿曽沼を攻めてやればよい。斯波は舐めてかかって下手を扱いたようだが、我らはそう易易とやられはせぬ。大きな音のなる武具は驚異ではあるようだが、数が少ないようだから大きな問題にはならぬだろう。しかしその新しい武具は手に入れたいものだな。


「それとなく新しい武具も調べさせるか」

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