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第百七十話 引き出物を用意します

 文亀四年の年が明ける。数えで八歳になった俺は田植えが終わった水無月あたりで雪との祝言をあげることになっている。前世では結婚のけの字もなかったのに早いものだ。新年の挨拶に何故か大原殿が参加していた。葛西の新年の挨拶にいかなくて良いのだろうかと謎だったが、祝言の日取りなどを相談に来たようだ。

 

「んふふ~。ねぇねぇ若様!」


「ん、どうした?」


「えへへ!呼んでみただけ!」


 祝言の話が来てから、雪はごきげんだ。こんな感じに特に意味もなく名前を呼んでくることも見られる。俺も周りも目と心の保養になっているので問題はない。……一部まだ祝言を挙げていない若手の武将らが身悶えている気がするが問題はない。


 雪は二重まぶたのパッチリクリクリお目々なのでこの時代の美人には該当しないが、俺の好みにはなっている……か?あいにく前世でもロリコンではなかったのでな。


 雪は嬉しそうにしているけど、本当に俺でいいのだろうか? 転生者で顔もよく、家柄も良いとなれば大槌孫八郎得守なんかのほうがよほどイケメンだが。まあ嬉しそうだし、俺のうぬぼれでなければ、少なからず好意を抱いてくれているのだろう。


 しかし数え八つで結婚か。この時代の結婚は前世と比べても早いとは言え、それでも元服前は早すぎる気がする。葛西様はもちろん言い出しっぺだから問題ないが、他家はどの様な反応なのだろう。


「左近、俺の祝言について何か他家の動きはわかるか?」


「はい。まず和賀ですが、我関せずといったところのようです。稗貫は葛西様と当家が結ぶことで影響力が大きくなることに危機感をつのらせ、家中で当家に与するものとこれまで通り敵対をするものに分かれている様子。斯波は攻め入る予定が狂うことに怒りつつも安堵していると聞いております。」


 まずは昨年戦った家々のうち、和賀は当主の座を簒奪した和賀定行は家中の統制に意識が行っており俺の祝言には興味が無いようだ。稗貫は割れたか。斯波は戦続きだったこともあり兵力回復の時間を得たと判断しているのだろう。


「大崎や伊達はどうだ?」


「大崎は興味ないようです。伊達は大膳大夫殿(尚宗)は興味を示しませんでしたが、嫡男殿が出し抜かれたと言っていた様子。嫡男殿は祝言には使いを遣るとも聞いております」


 伊達稙宗は本当にこちらに縁を作る気だったようだ。もしかしたら娘の一人や二人くらい送り込まれたかもしれないと思えば、元服前のこの時期に正室を得るのは間違いではなかったようだな。


「左近、鉛の盃は手に入れられるか?」


「造作もありませぬが?」


「それを伊達次郎高宗(稙宗)の遣いにもたせて返す。表面には金箔で松の絵をつけろ」


「……?御意に」


 この時代鉛の害は知られていない。飲めば甘みのます鉛の盃で気持ちよくなっていただこう。このまま放っておくとうつろが形成されて手が出せなくなる。


「それと他領からもっと人を呼び込みたい」


「当家の良さを宣伝するのでございますな」


「うむ。だがまだ食い物に余裕はないので過剰にならぬ程度にしてくれ」


「御意」


 伊達の対抗策はこれでいいだろうか。最上家に援助することも検討しなければならないか。そのためには上浦郡(現在の横手市や羽後町周辺)や山本郡を得ねばならんが、あのあたりは小野寺の地。攻略は難しいが米の安定収穫のためにも是非とも欲しい土地だ。

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― 新着の感想 ―
頭やられて、アポなし、突撃、気に入らない国!とかな暴走ならなきゃいいけど。ローマのネロ陛下は鉛のワインであっパラパーで火付けな話しを聞いたが、、、
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