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転生を望んだら戦国時代の遠野に来ました  作者: 海胆の人
文亀4年/永正元年(1504年)
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第百四十三話 付け届け

高水寺城 斯波詮高


「阿曽沼が閉伊郡を概ね抑えたか」


 斯波詮高を始めとする武将が揃って評定を行っている。


「なかなか侮れなくなってきましたな」


「うむ。こうも大きくなってきてはな」


 斯波詮高が苦い表情をする。


「このあたりで阿曾沼を食ってしまうのも一計ではあるが」


「先日、阿曽沼の使いというものが、このようなものを贈ってよこしました」


 阿曽沼の家紋が付けられた印籠を梁田中務が差し出してくる。


「これは?」


「なんでも遠野郷で作られている滋養強壮薬で一粒金胆というものだそうです」


「毒ではないのか?」


「はぁ、そう思って試しに臥せっているものに飲ませたところ、たしかに気を取り戻しておりました」


「ふぅむ。おい、誰か罪人を連れてまいれ」


 しばらくして庭先に連れてこられたのは盗みを働いたという賊。


「そこの賊よ。今日はいいものをやろう。この天竺由来の薬湯をのませてやろう」


 突然の出来事に賊は警戒心を全開にする。


「そ、そのような貴重なものは、の、飲めませぬ」


 当然断るのだが、一切認められることはない。


「んー、この儂の慈悲を断るとはな。岩清水右京よ。コヤツを斬れ」


「もも、申し訳ございませぬ!殿様のお心遣いに恐縮し、心にもなきことを申し上げてしまいました!よ、喜んで飲ませていただきます!」


 そう言うと斯波詮高は満足気にうなずき、薬湯を賊に飲ませる。


「どうだ?」


「どうだと申されましても……おお?なんだか体が軽い気が!」


「む、本当に薬だったか。では賊の貴様は特別に入墨刑のうえ、領外へ追放で許してやろう」


 周囲からはなんと寛大な処置かと感嘆が上がり、縄を打たれた賊は領外へと引っ張られていく。


「しかしこのようなものを寄越すとはな。ますます欲しく、いや侮れんなこのあたりでしっかり躾ける必要があろう」


「全くですな」


「稲刈り後に攻めるぞ。稗貫と和賀に使いを送れ。奴らもいれて三千も兵を送れば落とせよう」


「御意」



横田城 阿曽沼孫四郎


 ようやく鍋倉城の本丸御殿が組み上がったので、引っ越しの準備が進められる。


「ようやく新しい城に引っ越しだな」


「若様、こちらはこの行李でよろしいですか?」


「うむ、頼む」


 荷物はそんなに無い。衣類も本もほぼ無いと言っていいくらいだ。母上や父上はそれなりにものがあるようだが。


 天守閣の西側に本丸御殿を置いている。少ない荷物を纏めて、白星の背に載せる。


「白星、今日は荷物運びだ。新しい城まで頼むぞ」


「ブルル!」


 任せろと言わんばかりに歩き出す。


「そういえば先日父上が斯波様に使いを送ったようだが、清之はなにか聞いておるか?」


「いえ、若様の聞かれていること以上は存じませぬ」


「左近、近くに居たら状況を教えてくれ」


 どこからともなく左近が近づいてくる。


「全く気配を感じないんだが、どうやってるんだ?」


「それは忍びの秘術でございます。ところで斯波様への付け届けは、梁田中務殿に渡してございます」


 どうやら無事付け届けできたようだ。


「それで父上は何を考えておられるのだろう?」


「さてそれは、某にはわかりかねます。むしろ浜田殿の方がお詳しいのでは?」


「いや、私にもわかりませぬな。覚えを良くして敵対されぬようにというところかもしれませぬ」


 付け届けをしているのだ、悪いことにはならないだろう。

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― 新着の感想 ―
地理に疎いので、勢力図なんかがあるとイメージしやすいですね。 もし、既にあるならごめんなさい(_ _;)
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