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転生を望んだら戦国時代の遠野に来ました  作者: 海胆の人
文亀4年/永正元年(1504年)
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第百三十六話 千徳(現宮古)へ出兵

横田城 阿曽沼孫四郎


 大槌に行こうと思い、父上に相談しにいったら捕まった。


「蝦夷交易を増やすのは良い。だが今は船を出せぬ」


「なぜでしょうか?」


「千徳の奴らが周辺へと乱妨働きに出てきて居るのだ」


「なんと」


「神童よ、今年は山背が異に強く吹いておるでな。米はほとんどとれぬだろうな。故に米を得るために我らの土地を襲うわけだ」


 守綱叔父上が補足してくれる。なるほどそれで乱妨働きにでてきていると。


「飯を与えて臣従させては如何でしょうか?」


「それができるほど我らにも余裕はない」


 父上が貯蔵食料の書かれた書に目を通しながら答える。人口が増えたため食料消費量も増えているらしい。


「ならば蝦夷交易を増やして食料を集めるのが先ではないでしょうか?」


「それも一理あるのだが、閉伊川には鮭が上がってくるのでな 」


 なるほど鮭の遡上地か。ならば優先順位は上がるか。それに千徳城を得れば閉伊郡の統一がなるか。田老の銅も得られるかもしれんし、ここは千徳城攻略を優先するのが妥当か。


「すでに臣従している者たちは戦の支度を終えている。あとは我らが出向くことになる」


「なるほど。某もご一緒しても?」


「流石に十にもならぬそなたを戦場に連れて行くことはできぬ」


 守綱叔父上にあっさり止められる。流石に七歳では戦場に連れて行ってくれないか。


「ところで一戸は三戸に出ずっぱりで城主がおらぬのでないですか?」


「そう思うのだがな、千徳城には百ほどの兵が守って居るようで、そうそう落とせぬようなのだ」


 そうなると国人領主では合力しても同数程度だろうから対応が難しいか。


「昨年の戦に続いて、となると兵は如何ほど集められるのでしょうか?」


「それだがな、鍋倉山の築城がそろそろ終えつつあるであろう?」


「はい。つまり人夫を戦に用いると」


「そうだ。先の京の大乱で使われた足軽というやつだな。頭数は得られるし、見どころのあるやつは取り立てれば良い。死んだとて農民が大きく減るわけでもないから懐も痛まぬしな」


 ガハハと父上が笑う。笑いながら言うことでもないと思うが、この時代は人の命なんてタダ同然だたら仕方ないが、人は生えてこないから大事にして欲しいのだけど。


「それでだ、人夫を足軽に仕立てて寄せ掛けるのは守綱にやってもらおうと思っておる」


「はは。お役目ありがたくお受けいたします」


 守綱叔父上が恭しく礼をする。


「そして閉伊郡の取りまとめは、小国よ、そなたに任せる」


「そ、某でございますか!」


「そなた以外の領主共にはまだ文のやり取りしかしておらんのでな、そなたに取りまとめてもらいたいのだ」


「はっ、はは。この小国彦十郎忠直、身命に代えましてもお役目を果たしてご覧に入れまする」


 一礼し、小国が飛び出していく。


「栃内兵部を副官にして小国を監視させろ。我らも支度する。大槌に知らせよ。わしは孫八郎とともに海から千徳に向かうとな。わしも新型船に乗りたいのだ」


 伝令が退出し、父上なども戦支度を始めるため手持ち無沙汰になったので自室に戻る。


「左近、居るか?」


「ここに」


「千徳に人はどれくらい入っている?」


「十人ですな。城にも数人入れております」


「相変わらず抜かりがないな」


「当主の一戸政英は九戸城に詰めておりますが、嫡男の一戸政明が残って指揮を執っております。ただまあ兵達の士気は大変低いですな」


 なるほどな。


「できれば嫡男を生け捕りにできんか」


「難しいですな」


「なら、九戸城に逃がしてくれても良い」


 左近がいぶかしげな表情になる。


「殺せばすぐに襲われるかもしれんからな」


 とは言え取り逃さぬほど厳重に陣を敷けるほどの兵も出せないが。


「なるほど。承知しました」


 一礼し左近が去っていく。皆が戦に出ているのにこの手持ち無沙汰、早く初陣を果たしたいな。



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