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転生を望んだら戦国時代の遠野に来ました  作者: 海胆の人
文亀4年/永正元年(1504年)
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第百二十六話 水銀

遠野の田んぼ 阿曽沼孫四郎


 田植えが始まる。まだ冷たい風が時折吹き付けるなか、温床苗床により大きく育った苗を植え付けていく。


「これが遠野の田植えですか」


 そう聞いてくるのは昨年阿曽沼に臣従した小国彦十郎忠直。遠野の農をみたいとわざわざこの忙しい時期に遠野までやってきたのだそうだ。


「そうだ。そこの箱は炭焼きで出る熱を使って暖かく維持して居るので、よく育つ。ある程度大きくなってしまえば、多少の山背ならなんとか収穫を維持出来る」


 それと硝石作りの副産物の完熟堆肥が今年から使えるようになるので、また収量が増えるといいな。窒素分はだいぶ抽出してしまったが。


「それにあの田植えで使っている道具は何ですか!?」


 初めて見る田植機に彦十郎殿が興奮している。


「あれは田植機というものでな、詳しい絡繰りは俺もわからぬのだがあれのおかげで随分と田植えが速くなった」


 弥太郎が蒸気機関にかかりきりになってしまったので新しい農具開発は止まってしまったが、田植機は番匠や指物屋、鍛冶師が結集して量産したためかなりの数になっている。


「来年には小国や世田米などの新たに我が領となった村にも数台投入できるだろう」


「お心遣い痛み入ります」


「それと、どうだ。何人かこちらで学ばせぬか」


「こちらでですか?」


「そうだ。城作りに街道整備、治水などに人手が必要で小国村まで教えに行けぬ」


「なるほど。であれば何人かこちらに遣らせて頂きます」


 そう言うと小国忠直は小国村に帰っていった。小学校なども作りたいけども、まずは飯に直結する農業学校を遠野に設けるほうがいいだろうか。


 ちなみに今の農具は北の袰綿などにまでは持って行けない。途中の茂市などで奪われてはたまったものでは無いからだ。家督を継いでいたならば自分の一存で閉伊郡に攻めいることも可能だが、今はまだ嫡男でしかない。


「焦っても仕方が無い。一つずつできることを増やしていこう」


「なにを焦っておられるのでしょうか」


「左近、いや保安頭か」


「ふふ。若様には左近とお呼び頂きたく存じます。それよりもまだ家督を継げない事に焦りを感じておられますか」


「まあな。家督どころか元服すらしておらぬ。しかしやらねばならぬ事だけが山のように見えている」


「若様が何を見ておられるのかは某にはわかりませぬが、家督継続を急ぎたいのであればお手伝いいたします」


「いやいや早く家督を継ぎたいのはやまやまだが、急いては事を仕損じる。いつ家督を継いでも良いよう、足場を固めるのを優先したい」


「急いては事を仕損じる、面白い言葉ですな」


 この時代にはまだ無い言い回しなのか?まあいいか。


「それよりもだ。蝦夷地にそなたらの手のものを送り込めるか?」


「すでに一人、モシリヤの集落に置いてきております。」


 釧路に残ったという春雄とか言う男は保安局の者だということだ。相変わらず手が早い。


「次の航海ではベッチャロにも人を遣ります」


「頼もしいな。ところで蝦夷地にはみずかね(水銀)が有ると聞いておる」


 このほか伊勢にある丹生鉱山でも水銀が採れるが、どうにもしようが無いので北に向かうしか無い。水銀が得られれば水銀アマルガム法で金銀抽出が容易になるし鍍金にも使える。汚染はどうしようもないけれども。硫黄蒸気と混ぜたら硫化水銀になるだろうし、可能な限り回収して再利用したいな。


「ほほぅ。となればかの地の言葉と風習を学ばなければなりませんな」


「それとな、この地に来たい者が居たら連れてきてくれ」


「よろしいので?」


「もちろんだ」


 こちらで学んで帰ることを繰り返せば、ゆっくりとだが確実に同化できて欲しい。前世のようにアイヌの叛乱があるのもあまり良くないし。

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― 新着の感想 ―
灰吹法は鉛に金銀溶かす方で、水銀を使うのがアマルガム法なのでちょっと間違ってます
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