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神人共存

神祓い達の休日

作者: 秋暁秋季

ちょっと口の悪い妹が出ます。

嫌な予感がなさった方、回れ右をお願い致します。

「ねぇ、街に買い物に行くに当たってさ、一つの困ったことがあるんだけど」

私の部屋で正座し、真顔で私と慧さんの顔を見比べる。その眼鏡越しから覗く真摯的な眼差しに、私も姿勢を正す。でもなんだろ。気が強くて大抵の事は動じない彼女がそこまで悩むことなんて。でもまぁひとつ上げるなら。

「道に迷うとか?」

「いや、兄貴がナンパに会う」

「............................」

.......ガチのブラコンだったわ。この子。万人の命と兄貴の命を天秤にかけるまでもなく、万人を惨殺するレベルのブラコンだったわ。とゆか朝からベッタリと添い寝をし、え、何なの? 『兄妹なんて関係ない!! お兄ちゃんと付き合う!!』とかコメディー的展開を人の家ですんの? とか思わせて来る奴だったわ。

思わず真っ白な目になる私を差し置いて、眉間に皺を寄せて考え込んでいる。その表情からも分かる通り、彼女は彼女なりに真剣に考えているのだ。ならば私も真剣に応えねば。そう思って口を開いくと、別の人に遮られた。

「知らない女の人に靡くほど、単純じゃないかな? 色季ちゃんのが心配」

女のように柔和な顔、艶やかなロングヘア。一目見ただけでは男性だと分からないような雅な人は、この子の兄の慧さんだ。その見た目に違わず、性格も大変穏やか。苛烈な妹とは真反対だ。

慧さんは私を気遣うように、優しい顔をしていた。菩薩だったんじゃないかな? この人。

「兄貴の事を知らない輩が気安く声掛けるのが許せねぇんだよ」

この子も慧さんに負けず劣らず美人だが、如何せん目付きが悪い。人を、いや、世界を射殺す程の眼力は一目見ただけで怖気ずく。少なくとも、並の人間なら。

彼女はぶすくれた様子で私と慧さんの裾をぎゅっと掴んだ。上目遣いで見てくると、彼女も女なのだと実感した。

「道歩く時さー、誰真ん中にする? あたしは側だとして、問題は二人のうちどっちが側になるか」

「そりゃ僕でしょ?」

「今の話聞いてた?」

ナンパされる前提で話が進んでいる。本当におっかない兄妹だ。

そんな私を差し置いて、慧さんは少し困ったように笑った。憂いを帯びた顔が未亡人を彷彿とさせる。この人の魅力って綺麗さだけじゃなくて、この儚さにもあるんだよな..............。

「じゃあ色季ちゃんを外にするの?」

「.....................」

黙り込んで頬を膨らます彼女に対し、私は絶叫した。

「あー!! もう、分かった!! こうしよ」


「で、こうなったと」

私が提案したのはこうだ。彼女を真ん中に、私と慧さんを彼女を挟む形で道を歩く。こうすることで私達二人の腰に手が回る事になる。所謂、両手に花の状態。彼女の眼力は端から寄ってくる男女を問答無用で遠ざけて行く。伊達じゃないよ、君の目。

「男前で困っちゃうね」

「本当ブラコン.......」

困る私達を他所に、上機嫌で腕に力を込める。もっと寄れ、くっつけとのお達しだ。その言葉通り、私達は身を寄せる。仕事以外でも頼りになる。

「ねぇ、あの人すっごく綺麗じゃない?」

「本当だー。声掛けちゃう」

「あのメス猫共、うちらの姿見えてないんかな? あたしより目ェ悪い訳じゃないの?」

道行く綺麗な女人達が慧さんを見ながらはしゃぐ。頭のてっぺんからお洒落して、首や腕には華やかなアクセサリーが着いている。それを見て、眼力を強めて睨めつける。目があった女性達は短い悲鳴を上げて、目をそらす。

「こーら。口が悪いよ」

「そりゃ、綺麗でお洒落だけどさー。兄貴には釣り合わないかな」

窘められて口を尖らせる。その表情は幼子が見せるそれだった。大人なのに子供のような仕草をする。何だか可愛らしくて、思わず笑みが零れる。

そう思っていたら別の声が聞こえてきた。若い男の人の声。髪は染め上げていて、イマドキの人と言う感じがする。

「あの子達可愛くない? 誘おうよ」

「話付けて来て良い?」

「あ、こら。んな事する前に見せてれば良いじゃん。ほら、くっつけ」

にこやかな笑顔の裏では青筋が浮いている。それを宥めるように背を撫でる。それを受けて、彼も妹の背中に手を回した。彼女も彼女で甘えるように頭を預ける。

休日は始まったばかり。満喫せねば。


友達と三人で出掛けると、こんなこと起きません?

誰が真ん中になるか。

もっと三人でイチャついて欲しい。仲のいい兄妹みたいな感じでいて欲しい。

ちなみに、お兄ちゃんがナンパされるのは本当。故に警戒。

次回作のキャラページも準備予定です。


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