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箱庭異世界の観察日記  作者: えろいむえっさいむ
ファイル2【極小世界の観察、及び人的交流の開始】
6/58

4月20日(金) 晴れ

 今日は大型虫籠ケースの変化がめまぐるしくて、何から書いたらいいものか……。


 とりあえず大雑把にまとめた内容を時系列順に書きます。


・ケースの中央、僕が作った池のすぐ近くに家ができていた。

・ミニ人間と一応コミュニケーションを取ることができた。意思疎通の魔法らしい。ってか魔法ってなんだよ!?

・でもろくな情報は得られず。詳細は不明。

・ミニ人間の名前はリュウというらしい。たぶん女の子。でも名前で判断すると男? 結局どっちなんだろう。


 こんな感じ。


 まず真っ先に家に帰宅し、いつものごとく何よりも先に巨大虫籠ケースに飛びつき、物凄く驚いた。


 ケースの中央に家ができていたのだ。


 木で作られた簡素な家だったけれど、間違いなく家だ。ログハウスというより掘っ立て小屋に近い。たった一日で家が作られたという事実に目を見張るくらい驚いた。

 縦長の巣穴観察ケースにアリを入れると、わずか1日でものすごいアリの巣ができあがる。いつもどんな形の迷路になるのか楽しみでたくさんの女王アリを捕まえてきたけど、それとはまた違う感動と驚愕があった。


 あのミニ人間が作ったのだろうか? 子供だと思ってたけど、本当は大人なのだろうか。それとも他にミニ人間がいて協力して作ったのかもしれない。


 昨日のミニ人間が作った事はすぐに確認が取れた。そのプチ掘っ立て小屋から頻繁にミニ人間が出てくるのだ。

 池で水を汲んだり、森の方へ向かったり、何か家の中で作っている様子だったり、なかなか動きが激しい。まるで早送りのビデオでも見ているようだが、あんなスピードで作業はちゃんとできているのだろうか。疑問を覚える。


 時折空を見上げているようだった。今日もまた関わっていいのかどうか少しだけ悩む。基本的にアリの観察は餌やり以外手を出さない主義なんだけど、このミニ世界は関わっちゃっていいものか。

 少し悩んで、馬鹿らしくなった。別にいいよね、自分の虫籠ケースの中の話だし。というかもうすでに1回関わっちゃったし。今更手遅れだし。

 それに何より好奇心が抑えられないし。


 ただなんとなく恥ずかしかったので、ミニ人間が家の中に入ったタイミングで二重蓋を開ける。

 急いでプチ掘っ立て小屋の前に昨日のマシュマロを1個おき、そのまま手を引っこ抜いて様子を伺った。


 ちょうど二重蓋を閉じた瞬間にミニ人間が出てきた。目を細めて凝視してみた。

 どうやらものすごく驚いたようで、マシュマロを触ったり摘まんだり、あと小さすぎてよく見えなかったが、たぶん食べたようにも思える。そしてその後、天空を仰いだ。

 最初は立ったまま、少ししたらその場に座り込んでずっと上を向いている。


 二重蓋越しにミニ人間を見つめあって30分くらい、かな。さすがにここまで来ると、ミニ人間は間違いなく自分のことを待ってるんだとわかった。

 だってマシュマロ配達してから全然動かないし。こっち見てるし。


 なぜかものすごく気恥ずかしいが、とかく待たせるのもなんだし、手を突っ込んでみる。

 と、やはり僕のことを待っていたのだろう。ミニ人間の反応がすごかった。立ち上がってこちらに大きく手を振っている。


 昨日と同じように、ゆっくりミニ人間を指の腹に乗せ、落とさないようにゆっくり持ち上げる。

 2回目だから慣れたのか、すぐにミニ人間は僕の指の上に乗った。感覚はなかったが、ぎゅーっとしがみついているのがわかる。


 ガラスケースの天井の上までゆっくり引っ張りあげ、落とさないように注意深く移動させ、平らで透明な二重蓋の上にミニ人間を乗っける。

 透明なところに降ろそうとしたからか、妙に抵抗されたのが印象的だった。プラスチックがあるとはいえ、確かにミニ人間からしたら天空遥か高みに落とされそうになったわけだ。そりゃ恐怖顔でしがみつくよな、と変に納得した。


 下が丸見えの状態を不安そうに眺めながら、ミニ人間がしばらく周囲を見回していた。

 頭でも痛いのだろうか、なんか顔色が悪く見える。顔が小さいからそう見えるだけだろうか?


 ただ、ここで僕は困ってしまう。なんとなく期待されてる感じがあったし、事実その通りだったようなのでミニ人間に手を伸ばしたが、結局何をやればいいんだろうか。言葉通じないし。

 衝動的にミニ人間を引き上げてしまったが、冷静に考えれば無意味だった。


 また日本語が通じるか実験してみようか、と思った。もしくは、アリの餌を与えてみたりとか文字なら通じるだろうか、などなど。

 僕が困惑していたら、ミニ人間が僕の方に手を伸ばしていた。大声を出しているような素振りも見えたが、ほとんど音は聞こえない。

 誘われるままに指を伸ばしたら、いきなり攻撃を受けた。


 ミニ人間が僕の指に触れた瞬間、何かが目の前で弾けたような気がした。大昔、友達にロケット花火を向けて撃たれたことがあったけど、あんな感じで目の前がパーンとなった。

 あまりに予想外の現象だったため僕は驚いてのけ反ってしまう。


 その時、手が滑ってミニ人間を潰さなかったことは幸運だったし、変に大型ガラスケースを蹴っ飛ばしてミニ人間の上に常夜灯が落っこちてこなかったのも奇跡だった。

 ただ僕が尻餅をついた衝撃が地震のように伝わったため、物凄く驚いた、と後程リュウが語った。


 その後お互いパニックになって少々すったもんだしていました。ミニ人間曰く「これは意思疎通の魔法だ」というようなことを、その魔法を用いて教えられました。


 ……うん、いきなり突飛な単語が出てきたよね。かくいう僕も戸惑ったよ。


 正確に表現しようとするとなんて書けばいいのか全く分からないけど、大雑把に言ってしまえば「お互いの考えていることを直接伝えあう魔法」らしい。

 実際はもっと、こう、首筋がムズムズしてこめかみがギリギリ締め付けられるような感覚があって、相手の考えてることって言っても単語とか映像がきちんと伝わるわけでもなくて、もやっとしたイメージが伝わるだけなんだけど、とにかく何を伝えたいのかが何となくわかるのだ。


 その、ふんわりとしたイメージで「魔法です」みたいなことが何度も頭の中で繰り返された。

 なので僕が「魔法?」と頭の中で質問を返すと、自分の体より大きな人差し指に抱き着いていたミニ人間が拡大鏡越しにはっきりわかるくらいの大きな笑顔で何度も頷いてくれた。


 正直言われた直後は戸惑った。魔法なんて言われても、いきなり信じられるわけがない。

 でも現実問題として多少あやふやではあるものの、音声に頼らずリュウと意思疎通ができている。信じるしかなかった。


 その後、30分ほど魔法でお互いの言葉を確認しあおうとしたのだが、どうにも上手くいかなかった。どうにかまともに意味を理解できたのが上記3つである。


 僕はもっと質問したかったのだが、どうやら魔法というのは体力を消耗するらしい。疲れきったらしいリュウがへたり込んでしまったため、慌てて魔法をやめようと提案した。

 リュウもきつかったらしく、最後に「家に」と下の小屋のイメージが伝わったため、僕は力なくダレてるリュウを丁寧に持ち上げて小屋まで返した。


 小屋は指2本で跡形もなく潰せそうなほど小さかったので、リュウを中まで持っていくことはできなかった。

 無理をさせてしまったのに池の畔に放置するお詫びと、魔法まで使って教えてくれたお礼に、2個目のマシュマロを置いておいた。


 そして今、僕はパソコンを立ち上げて今日あったことを書いている。今度はきちんとメモ帳を用意しておこう。

 スマートフォンで動画を取っていたのだがあまり役に立たなかった。僕の指にしがみつくちっちゃい人間しか映っていなかった。

 これはこれでインパクトのある映像だけど、発言記録としては何の価値もないよ……。


 リュウからもっといろいろ話を聞いてみたかったけど、無理をさせるわけにもいかないだろう。

 2時間くらい休憩した後に再度引っ張り上げることも考えたけど、明日もあるし僕も寝ないといけない。今夜は諦める。

 ファンタジー物語ではありがちだけど、リアルではお目にかかったことない魔法という単語が出てきてしまい、しかも目の前で見せられたのだ。興奮して寝られるかどうか自信がない。


 明後日は日曜か。明日帰った後が楽しみすぎてヤバイ。

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