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箱庭異世界の観察日記  作者: えろいむえっさいむ
ファイル1【アリの観察日記、改め極小世界観察日記】
1/58

4月15日(日) 晴れ

 いくら小さい虫とかの観察が好きだからといって、さすがにやってしまったと思った。ついに買ってしまった。


 元々趣味でやっていたアリの巣観察。最初は小さなプラスチックコップから初めて早10年、どんどん規模がでかくなってきてとうとう手を出してしまった大型観察ケースである。

 縦76cm、横202cm、高さ50cmという大学の研究室でも滅多にお目にかかれないアクリル板の大型観賞用飼育ケース。初めてキロ単位で注文した水分を多く含むパーライト。湿気を自動で調整してくれる小型の専用加湿機に、カビと雑菌対策のための設置型消毒液も多めに用意した。

 朝・昼・晩で明るさを調整してくれる偽陽光ライトも欲しかったけれど、さすがに値段が高すぎて手に入れられなかった。今まで使っていた小型のライトとあとはキッチンタイマーで適宜頑張って対応するつもりである。


 宅配のお兄さんに苦笑されたほどの大荷物を何とか一人で荷ほどきし、自分の部屋に設置するだけで半日かかった。こういうとき家族の手を借りられない一人暮らしは大変だと実感する。

 だが、一人暮らしでなければこんなアホな買い物できやしなかったので、功罪相殺といったところだろう。なにせアリの観察だけにン十万円も使ってしまったのだ。我ながらやり過ぎだと思わなくもない。

 でも一人暮らしを始めた際に叔父からの臨時収入があったうえ、お年玉も手付かずなところに運よく宝くじまで当たったのだ。手元に札束ができたときは手が震えた。

 ここまで纏まったお金が手元にある機会なんてそうそうないし、そんな幸運でもない限り絶対手が出ないと思われるので、思いきって購入して良かったと思う。領収書の金額を見て若干後悔したけど、もう手遅れだ。


 とかく、大学生になって初めての一人暮らし、そこでここまで大規模な観察ケースを用意できたのは純粋に嬉しい。本のような薄いアクリルケースでアリの巣観察をするのもいいけれど、やはり本来はこういった自然に等しい環境下でアリの生態を見るのが一番のはずだ。

 趣味が特殊すぎて、同年代だと親友か従妹くらいしか呼べない部屋になってしまったけれどそれでもいいんだ。どうしてもやりたかったんだから!


 そしてこの風呂と見まごうばかりの大型ケースに入れるアリはもう決めてある。

 クロオオアリ。体長およそ1㎝。日本でもっとも広く分布するアリで、土があればどこでも生息し巣を作るアリである。見たことない人なんていないのではないか、というくらい典型的な黒アリである。

 何気に日本国内では最大の大きさを誇り、そして飼いやすさでも随一といわれるくらい生命力の高いアリだ。戦闘能力が若干低いと言われているが、それは単体での話、集団での力はアリだけでなく昆虫の天敵・クモすら狩るほどの殲滅力を持つ。


 よく小学生が細い四角形のアリケースに、クロオオアリと土を入れて巣の観察をする。もちろん自分もやったことがあるし、その研究は良くしている。

 しかし、ここまで大型のケースでの巣作り観察はしたことがない。地表での活動もじっくり見れるのも相まって、今から興奮してしまう。


土の準備はすぐ終わったので、そこに女王アリを投入した。脱翅痕があるのをきちんと選んだので、間違いなく産卵するだろう。

 予備でもう一匹を放ち、脱出防止用の返し戸と二重蓋を閉じる。コロニーが二つできてくれたら、間違いなくアリ同士の戦争が見れるだろう。それが今から楽しみだ。


 餌は明日、学校の帰りに買ってくればいい。一日くらい女王アリならどうとでもなる。

 せっかくの大型虫籠を買った記念に真面目な観察日記を書いてみよう、そう思い至って急遽パソコンを立ち上げて日記を書き始めた。これがそれである。

 明日からきっちりアリの観察日記を書いていこうと思う。

本当は日にち合わせたかった……orz

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