04-1:そもそも何で町に引っ越さないんだ?
縁側に座るおじいさんの視線を背中に浴びながら、洗濯物を干し終える。
すると丁度その頃、荷車いっぱいに籠を乗せて自らの手で牽引するグンマさんの姿が見えた。
とても重そうに見えるけれど、積み込みだって何だって結局全部彼1人でやってしまうのだから、流石というかやる時にはやる男の人だ。
ゆっくり歩いていく彼の姿を見て、私は少しばかりの名残惜しさを隠しつつ手を振って見送る。
「いってらっしゃぁ~い」
するとその声に反応して、彼は不意にハッとしていた。
……私はその仕草になんだかものすごく心配になってきて、確認にと近寄り声を掛ける。
「あの、今もしかして……」
「……駄目だ、どうしても寝てしまう」
……多分この人、ほおっておいたら絶対町に行けない。
と私は確信した。
「もし……もしよければですが、あの私も一緒に行きましょうか?」
私の言葉に空を仰ぎ、彼は黄昏れる。
「……じゃあまあ、今日は二人で行くか」
不甲斐ない自分を嘆くような……というより全てを投げ捨て死んだ魚のような目で呟いた。
さっきはまだ何かしようという顔をしていたのに、やる気が抜けるのが早すぎる。
……ともあれそのお陰で、私は初めて町に行ける事となった。
以前から気になっていたこともあったし、とにかくお昼だけは作り置きをしたいとグンマさんに話をする。
すると後ろからおじいさんが近づいてきた。たぶん今の話を聞いていたのだろう。
私はお爺さんに、テファちゃんを見てもらえるよう話をするつもりで振り向く。
「あの……」
「グンマ、お前ナナさんを町に連れてくとか言っとるが……ナニしに行くつもりじゃ!」
「何色ボケてんの爺さん、頭に栄養届いてんの?」
私は瞬時に罵倒で返した。