03-1:肉がない! 肉は大事だ!!
「……zzz」
「はあ、たまにはお肉が食べたいなぁ」
食事をほぼ終えたテファちゃんが呟く。
しかしその言葉に、私を含め誰も反応する人はいなかった。
「あーあ、たまにはお肉が食べたいなぁ!」
……申し訳ないけれど、私は今ある材料でご飯を作るだけ。
居候でしかない私には食材の購入など、お金に関わることには立ち入れない。
それにお肉ならば一応というか、僅かではあるもののおかずの中に入れてはいた。
そんな私の事情を知ってか知らずか、やがてテファちゃんの苛立ちは理不尽な暴力となってグンマさんを襲う。
「……お兄ちゃん!!」
彼女の右隣でウトウトし続ける兄の脇腹に、彼女の手刀が刺さった。
「グァ……お、ああ飯だな。食う食う」
しかし彼は声を出して反応しつつも実際全く動じず、思い出したように落ちていたフォークを再び手に取る。
「違う! 話聞いてなかったでしょ!?」
「……あー、聞いてた聞いてた。ウン、だから叩かないで」
「……じゃあ、何の話してたか言ってみてよ」
今まで寝ていたのに答えられる訳がない、適当過ぎる。
何故そんな所で嘘をつくのか、実際その場限りの嘘はグンマさんをさらに追い詰めた。
「……お金がない? だから機械の部品が買えない? とかだな。今の話の流れだとそうだ」
どんな話の流れなのか。
「違う! まだ起きてない!!」
「ゥッドゥ……!」
テファちゃんの手刀がまた脇腹に突き刺さった。
「お肉! お肉が食べたいの!! ねえお兄ちゃん、何で働かないの?」
「そうじゃグンマ、働け! テファが可愛そうじゃろが!!」
間髪入れずに二人の会話の脇からおじいさんが参戦する。
きっと自分が標的にされるのを恐れての事だろう。
しかしグンマさんはここに至って、まだウトウトと眠りかけていた。
そんな兄を見て、グズる様に表情を変えるテファちゃん。
「……寝ないでぇ!!」
そうお願いする声と相反して脇腹を突いた手に力が入り、捻りが加わる。
「……あたたた。何だテファ、政教分離の件は諦めるって言ってたろ」
今ほんの少し寝てる間に、どんな夢を見ていたんだろう。
「わぁぁぁぁぁ! お肉お肉ぅー!」
「おお、今日もいい天気じゃ。さて今日も散歩にに出てくるとしようかの」
癇癪を起こすテファちゃん。
おじいさんは状況から逃げるように、その場を去っていった。
「……はぁ」
私は仕方がないと、外の倉庫に残った焼きリト肉の小さい缶詰を持ち出して、テファちゃんに差し出す。
「テファちゃん、よければこれ食べて」
「……はぁぁぁぁぁぁ♪ やったあああああ!」
眼の前のお肉に、彼女の目が瞬時に輝いた。
そして興奮で更にグンマさんの脇腹がえぐられる。
「グェ!!」