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09-3:中世風の世界観で出てくる刀って存在そのものが無双感

 二階の掃除中、突然勢いよく玄関の戸を開く音が響く。

「爺さん、爺さぁん!!」

 この声は……アカネさん? さっき出た筈なのにどうしたんだろう。

 声から察するに相当急いでいるみたいだけれど、送り出してからまだ一時間も経っていない。

 何か急な用事が出来たのだろうか……と階段を降りていく。

 すると、彼女は玄関で一人の女性をおぶっていた。

「その人、一体どうしたんですか?」

「お爺さん家に居ないの!? じゃあ畑だ! 私行ってくるからその人寝かせて!」

「え? は、はい!」

 彼女は返事も待たず私に女性を託し、直ぐに外へと出ていった。

 あんなに急ぐなんて一体何なのだろうと、渡された女性の顔を覗き込む。

 すると女性はぐったりとした顔で意識を朦朧とさせ、肌を青白くさせていた。

 思わず私は驚いて、その場に寝かせ、近くから座布団と掛け布団を持ってきて彼女にかける。

 薄い呼吸、青い血管が透けて見える顔。

 歳はまだ若そうだ、私屋アカネさんと同じぐらいだろうか。

 苦しさも疾うに過ぎて、その姿は今にも消える火のように見える。

 正直、見ていて恐ろしく、何も出来ない自分が怖かった。

 任されている今の一瞬の間に、この人の息が止まってしまったらどうしよう。

 時間の感覚が伸びて、私の気まで遠くなっていく。

 せめて何か出来る事があれば。

 ……そう思った時、聞こえるかどうかという小さな声が私をハッとさせた。

「……ぁ」

 薄く開いた唇から助けを求める様に漏れた呻き。

 その僅かな動きにそうだ! と私は思いつく。

 すぐに台所からコップ一杯の水を注ぎ、彼女に駆け寄り話しかける。

「大丈夫ですか?お怪我はないみたいですけれど……お水飲みますか?」

 そして体を少し起こし、紫色に変わった唇に水を注いであげようとしたその時

「飲ませるなっ!!」

「ひぃっ!」

 お爺さんの剣幕が玄関に響き渡り、思わず手元のコップが飛んで割れる。

「おじいさんこの人!」

「ああ。しかしここまで薄いとワシではもう無理じゃ」

「じゃ、どうするの?」

「……本人の生きる力を信じて、山から下ろすぐらいしか手はない」

 戻ったアカネさんは2人で再び彼女の様子を見て、早速助ける段取りを話し合い始めた。

 飛び散ったコップの破片を見る。

 水を飲ませてはいけなかった?

 だからきっと私は怒られたのだろう。

 じゃあきっと、お爺さんは何の症状か知っている。

 でも何が原因でこの症状に……この人は一体何処で倒れていたのだろう。

「私がおぶって下に降りる!」

「お前では遅い、それに病院の場所は知っとるのか。意識が戻った後が大事じゃ」

「爺さんだって体力きついじゃん! じゃあ連れて行くのは……」

 2人の話の中、ふと私は思いついてアカネさんの目を見る。

「あの、この人魔術で直せないんですか?」

「……」

 困窮する様な顔で見つめ返され、一瞬異様な空気が流れた。

「これは……魔術では直せん」

 静かに発せられたお爺さんの言葉が、また時計の針を動かす。

「じゃから、ナナさんはアカネやテファと一緒に留守番しててくれ!」

「あの……はい!」

 再び動が戻った。

 後に続く言葉に、アカネさんは奥から直ぐグンマさんを起こして連れてくる。

 また驚く、現れた彼の顔はまるで何時もと違った……それ程切迫する状況なんだ。

 寝起きに拘らず早速テキパキと段取り確認をして、布団に包んだ彼女を抱き上げる。

「爺さんも一緒だよな、荷車は?」

「アカネが道の途中に置いたままのがある、そこまでお前が背負っていけ」

「そこまで爺さんも走りだけど」

「早く行くぞ!」

「よし、じゃあ行ってくる」

 そして一言残し、グンマさんは先に行ったお爺さんを追って出て行った。

「……」

 思わず私は息を呑む。

 一連の流れはまるで、頻繁に起こる事を想定していたかの様な動きだった。

 アカネさんも何か思う所があったのか、玄関からゆっくりと外へ出ていく。

 ……自身の放心もすぐ戻り、私は割ったコップの処理を始めた。

 テファちゃんが勢い良く走って破片を踏んだりしたら大変だ、と箒を動かす。

 そして全てが塵取りに収まると、手が止まった。

 そういえば……おかしい。

 さっきはあんなに慌ただしくしてたのに、テファちゃんが様子を見に来なかった。

 私達以外には誰も住んでいない山の一軒家だ、声が響かない筈がない。

 何か、嫌な予感がする。

 心がざわつく。

 私は次第に胸の鼓動が抑えられなくなって、テファちゃんを見に外へと飛び出した。

 でも彼女は何処にも居ない。

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