09-2:中世風の世界観で出てくる刀って存在そのものが無双感
機械の設置場所は貯水槽の近くがいいのでは、なんて私達は二人で話していた。
それにしてもこの洗濯機? という機械はよく出来ていて凄い。
まだ幼いのに、何でも思いついたまま作ってしまう彼女に私は驚くばかりだ。
なのにどこか抜けてて小悪魔的で、おませなトコロとのギャップもキュンとする。
……それにしてもこの機械を外に運んだり水を入れたは誰のものだろう。
いくら賢くて可愛くても、小さい体のテファちゃんには到底無理だ。
アカネさんかお爺さんが手伝ったんだろうか?
「……あれ? そう言えば」
「ん? どうかしたの?」
「いえ、今日は金属を打つ音が聞こえないので」
気がついて倉庫の方へと目を向けた。
「お姉ちゃんも作りたいものが出来たみたいだよ?」
「そうなんですか?」
「うん! でも思ったとおりに作れなかったって怒ってた」
テファちゃんの言葉にアカネさんの意外な一面を知る。
あのお爺さんの武器が上手く治らなかった、という事だろうか。
私の印象での彼女は、いつでもニコニコしている。
けれど何かに真っ直ぐ向き合い、時に感情を顕にする事もあるんだ。
それだけ真剣になれる鍛冶とは、彼女にとって何なのだろう。
今までその鍛冶をやらなかったのは何故だろうか。
……脱水も終わり、早速洗濯物を干していく。
隣にはシャボン玉を膨らませて遊ぶテファちゃん。
一見楽しげに遊んでいる様に見えて、水気の多いのかすぐ弾ける石鹸水に彼女は不満そうだ。
その内一斉に沢山飛んで、ずっと浮いてるシャボンの機械なんかを作ったりしそう。
なんて妄想をしながら洗濯物を干し終え、玄関の方へと向かう。
するとそこにはお爺さんと、荷車を押すをアカネさんが立っていた。
「あれ? アカネさん」
「あー、見つかっちゃったぁ」
私は小走りになって駆け寄り、お爺さんの隣に立つ。
すると「根性なしめが」と皮肉る声がボソリと聞こえた。
声はアカネさんにも聞こえていた様で、彼女は「アハハー」と笑って躱す。
「どうかご安全に」
「うん、行ってきます」
……彼女が荷車を持っているということは、また外に出かける事を意味していた。
でも一旦出ると一週間以上彼女は戻ってこないので、送り出すのは私にとっても抵抗がある。
そう、お爺さんと同じ様に。
「行くならせめてテファにも挨拶せんか! 全く……」
「だぁってさー、いっつも引き止められるんだもーん」
「だから、そういうことなんじゃ。分からんのか戯け」
「御免ゴメン、いやー辛いなー」
「……ハァ」
やがてお爺さんは口から呆れるようにため息を漏らし、諦めた様に家の中に入っていく。
思わず私も苦笑いが出た。
どちらの言い分も気持ちも分かる、なのでなんとも言えない。
「あはは、無言もそれはそれで困るなぁー」
「あっ、ごめんなさい」
「いやいや、じゃあ次もお肉いっぱい持って帰ってくるからね!」
毎度湿っぽくなるのは彼女としても心苦しいに違いない。
何せ、全く戻ってこないというわけではないのだから。
でも一週間以上空けて、一週間待たずにどこかに行かれるのだって苦い事には違いない。
……なんて考えていても仕方がないので、私は一気にパッと雰囲気を変える。
「遊びのついでに……ですか?」
「うっ、痛い。ナナさんもお爺さんみたいにチクチク来るようになったかー」
「ウフフ」
私達はお互いの名残を打ち消すように、言葉で戯れた。
「じゃあ、テファによろしく言っといてね」
最後にそう言って一歩踏み出す彼女の視線が前を向き、外れる。
その寂しさに私はつい言葉を漏らしてしまった。
「せめてこの家が街の近くにあれば、もう少し事情が違ったのかも知れませんね」
「……あはは!」
一瞬足を止め笑顔で返すと、彼女はまた歩き始めた。




