表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/33

08-3:おパンツ回来た!(尚出オチ

 倉庫の方へと近づくにつれ、何かガラガラという異様な音が聞こえてきた。

「何の音でしょう?」

「お爺さんかテファが何かしてるのかなー」

 気になって倉庫を見ると、中には誰も居ない。

「あれ、じゃあ裏の加工場だねー」

 扉を締め、裏の方へと壁伝いに歩いていくアカネさん。

 周囲は若干森に囲まれている性もあって、よく見ると建物はやけに長い。

 普段倉庫の入り口しか見えていなかったのだなと、私も壁を眺めつつ後に続く。

 そして回り込んだ先にはサビ混じりの、到る所に工具が吊るされた工房があった。

「……え!?」

 ビックリした。

 中の広さは表の倉庫の約2倍。

 縦長に伸びた片側の壁には、机や何に使うか分からない資材が立てかけてある。

 少し奥には釜戸と機械と机、壁には何かの絵と数字。

 そして一番驚いたのがその部屋の真中で、樽から頭を出し、廻るグンマさんだった。

「グンマさん! 何してるんですか!?」

「ガガガガガガ」

 泡の噴く樽から白目の姿で、ツヤツヤになりながら尋常じゃない声をあげ続ける彼。

 私は只事でないとすぐ近づいて、急いで彼を引っ張り上げようとその服を掴んだ。

 しかし、中の液体の性か手が滑って中々引っ張り出せない。

 それでもアカネさんと2人で無理に引き上げ、ようやく彼は地面にべチャリと落ちる。

 なんというか、まるで狂気の沙汰だった。

「あの、大丈夫ですか!?」

 屈んで声を掛けるも、彼は私の声に全く反応しない。

 まるで生まれたばかりの小動物みたいに濡れてヌルヌルで、ピクピクと動くだけ。

 そしてとても良い石鹸の香りをさせていて……

「zzz……」

 よく見るとやっぱり彼は寝ていた。

「うわー、凄いヌルヌル……これ石鹸水だねー。入ってた樽にも何か機械がついてる」

 濡れた指先を合わせて確認しながら、樽を四方から覗き込むアカネさん。

 私は変な液体じゃなくてよかったと少し安堵し、その後やっぱり頭を悩ませる。

 流石に見てない所で機械を試すのは、いくらなんでも度が過ぎている。

 この悪戯……機械に相手はグンマさん、となればもう犯人は決まっていた。

 辺りを見回し本人を探す。

 すると思わぬ方から声が聞こえた。

「あれ、お姉ちゃんたちどうしたの?」

 振り向くと彼女は私達が来た方から歩いてきて、不思議そうな顔をしてる。

「テファちゃん……」

 やっぱり、と大きなため息が出た。

「あの……お願いだからせめて、お兄ちゃんから離れないであげて下さい」

「何作ったのか知らないけど、機械のせいでお兄ちゃん、顔までぐちゃぐちゃだよ?」

 どこに行ってたんだと呆れる私と、グンマさんを見せるアカネさん。

 しかし彼女は無邪気でもなく、瞳に濁った様子も無い。

 悪戯だという自覚があるなら怒るつもりだったのに、私は思わず出鼻を挫かれた。

 そして眼差しの示す通り、本人も知らないと言った風に話し始める。

「私、機械動かしてないよ? だって魔源が通って無くて動かなかったから離れたんだもん」

「……もしかして、バッテリーに魔力を込めに行ってたの?」

 アカネさんの問にコクリと頷く彼女。

 それを見てアカネさんは床に這った線を摘んで苦笑いを見せた。

「じゃあせめて動力スイッチをつけるか線を抜いとかないと、急に通魔して動くよね」

「……あ、そう言えばそうだね」

 アカネさんが彼女の抜けた返事と一緒に線も引き抜いて、ようやく機械は止まった。


 大量のタオルでグンマさんを拭くと、奥から出してきてもらった布団に彼を押し込む。

 頭を持ち上げ枕を潜り込ませると、石鹸水に揉まれスッキリした顔は穏やかな表情を見せた。

 布団は火の番用に常備されていたものらしく、その火も今アカネさんが釜戸で焚いている。

 少し暑くなってきた、でもこれならグンマさんも風邪を引かなくて済むと思う。

 私は彼の寝顔から離れ、次に機械に方へと目を向けた。

「ところで、この石鹸水が入った樽のような物は何なんですか?」

「ふっふーん。完成してからのお楽しみだよ。はいアカネお姉ちゃん、この部品作って」

 テファちゃんは来た質問を得意げに躱し、一枚の紙をアカネさんに渡す。

「金属で作れるものはいいよ。丸で囲ったものが欲しいんだね」

「うん。お願い!」

 2人でいくつか話し合いをした後、アカネさんは近くの適当な廃材を使い早速作業に入った。

「いつも2人で機械を作ってるんですか? 私知りませんでした」

「だぁーってだって。お爺ちゃん、刃物とか火を使うなって怒るんだもの!

 でも溶接とかはさせてくれるの、不思議でしょ?」

 テファちゃんが不満げに語る。

 溶接……一体どんな事をするのだろうか。

「きっとテファちゃんが怪我しないように心配してくれてるんですよ」

「そうだよー、だからあんまり危ない事しちゃダメだからね。勿論グンマお兄ちゃんにも、ね」

「えー……」

 私達の会話にテファちゃんはあまり納得していないようだった。

 でもよく知らない用語の作業をしている辺り、お爺さんじゃなくても危ないのは分かる。

「例えば機械を考えるのがテファちゃんで、作るのはアカネさん……とかは」

「あー、私金属部品は作れても精密部品が扱えないんだよね」

 私の質問に困った顔をして、頭をポリポリと掻くアカネさん。

「精密部品、ですか?」

「そそ。そこの壁側に転がってる機械の廃品から色々抜いてさー、テファなら作れるの。

 私もだけど皆そういうのチンプンカンプンでさー、手が出せないんだよね」

 初めて聞く話に、思わず我が耳を疑う。

 テファちゃんのような小さな女の子が、大人も顔負けな機械を作っている?

「あの、もしかしてテファちゃんって……凄いんですか?」

「ふっふーん!」

 私の言葉を聞いてテファちゃんが得意げに胸を張った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ