02-1:日常回とかいらないんじゃない?
「テファちゃん、朝ごはんが出来ましたよー」
「サー、イエッサ! じゃあお兄ちゃんも呼んでくるねー」
「え? あっ、ちょっと!」
返事に答えた彼女は年にして8歳ほどで、元気の良いツインテール少女。
ビシッと敬礼をして2階への階段を小気味よく登っていった。
……少し私は気になって、彼女が登っていった階段をドア越しにのぞき見る。
するともう起こし終えたのか、早速戻ってきた。
しかし、様子がおかしい。何故か後ずさるようにお尻を向けて降りてきている。
不思議に思いながらじっと眺めていると、彼女が降りてきた後にはロープが伸びていた。
「何ですか? それ」
「うん、ちょっと待っててね。すぐお兄ちゃん来るから」
テファちゃんは言いながら、滑車のような機械にロープを巻き付け魔源を挿す。
「えい!」
するとその滑車は、自動でロープをどんどん巻き上げていった。
ウイィィィィィン
「……」
何か嫌な予感がした。
いや、でも流石にそんな酷いことは。
……と思ったのも束の間というか案の定、階段から彼の声が鳴る。
「ンガッ、ガッ、ガッ、ガッ、ガッ」
グンマさんはそのロープに足を牽引され、打つ頭の衝撃で声を発しながら階段を落ちてきた。
「テ、テファちゃん! その機械を今直ぐ止めて!」
「えー」
「えーじゃなくて!」
「はぁい」
しかし言っても機械はすぐに止まらない。
階段を落ちきったグンマさんはやがて部屋の間切に手やら足が引っかかり、引っ張られる。
「ググ……ギギギィ!」
何か変な声まで……正直、怖い。
人間じゃ有り得ないような体制で白目をむいてるし、泡のようなものまで出している。
「ちょっ、まだ止まらないの!?」
「えーっと? ナナさんゴメンなさい、止める機能を付けてなかった」
「じゃあ魔源そのものを外して!」
「あ、そっか!」
テファちゃんは私の言葉にハッと気づ、機械から伸びている線を引っ張り魔源を切った。
「グンマさん大丈夫ですか!」
張力から開放された彼を逆に引っ張り、正常な体制へと戻す。
さっき変な声出してたし泡も吹いていたし、今回は流石に怪我でもしているんじゃないか。
「……ZZZ」
と思ったけれど、彼はあんなことをされてまだ尚寝ていた。
泡を吹いていると思ってたのもただの鼻提灯……。
「……はぁ」
思わず肩が落ちる。
心配損というか、また朝から疲れてしまった。
「テファちゃん……試したい物があるなら、せめてお兄ちゃんが起きている時に了解をもらって試そう」
「そう……だね! お兄ちゃんが起きたら一回引っ張る!!」
にっこり歯を見せて笑うテファちゃんに、苦笑いが更に引きつる私。
「と、とりあえず食器を並べててくれるかな? 私おじいちゃんを呼んでくるから」
「はーい」
彼女に頼むとおじいさんもまた同じ目に遭うかもしれない。
そんな懸念から、私はその足で自ら畑に向かう。