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06-6:お色気シーンはどうか脳内で保管して下さい!

「さぁて! もうそろそろ中に入ろうかのう!」

「!?」

 思わず私はその声で我に返った。

 強い風もいつの間にか消え、静かな夜にお爺さんの声が木霊していく。

「? ……そうだな、今日は有難う爺さん」

「礼はいらんから帰ったら腰を揉め、その方が嬉しい」

「爺さんも歳だもんなぁ」

 そんな会話と供に玄関へと周っていく2人。

 私は何故か焦りながら浴室を出て、タオルとパジャマを手に取り、屋根裏の自室に戻った。

 急いで濡れた足を拭き頭を触る……髪はもう自然に乾いて広がり、ゴワゴワ。

 パジャマに着替えて、呼吸を整え、枕を抱え……これで多分大丈夫だと思う。

 今の時間は11時。

 そっとテファちゃんの部屋を開け覗き込むと、もうちゃんと寝ていて少し安心した。

 時間を置き、何事もなかったかのように一階へと降りていく。

 見た感じは如何にも眠たそうにでいて、何か物音がして起きたという体が大事だ。

 階段最後の一歩手前、私は再び呼吸を整え、演技を始める。

「ふぁ……お二人ともどうしたんですか? こんな夜中に」

「おお、ナナさん。ちょっと2人で飲んでおっての!」

 二人は居間に居て、飲めないグンマさんがお爺さんに晩酌をしていた。

 見るとその体は、元の細くてシワの多い体に戻っている。

「そうですか。もうお年ですし程々に」

「ふむ……そうじゃの、気遣いありがとう」

「いえいえ、それより……」

「ん?」

「……何か、大きい音がした気がしたのですが、何かありましたか」

 その言葉に、グンマさんがわかりやすいぐらい体の動きを止めた。

「フム、今は収まったが、さっきまですごい風が吹いておっての。わしゃあ畑を見に行っとったんじゃが……」

「そうなんですか」

「きっと窓を叩く風の音で起きたんじゃろ。そういうときは寝つけの一杯がええぞ」

 グンマさんと違ってお爺さんは上手い、何も嘘は言っていないんだから。

「え!? いえ多分私お酒を飲める年じゃないと思うので!」

「それじゃったら匂いだけでも嗅いで行きなさい。ぐんと眠気が上がるぞ、ホレ!」

「は、はぁ……」

 寝てたのに物音で起きたという設定じゃ、お爺さんの言うことを聞くしか無い。

 私はお爺さんの横に近づき、その匂いを嗅ぐ事になった。

「さあ、顔を近づけて」

「はい」

 おチョコを持つ手に顔を近づける、その時だった。

 お爺さんが無言で私の髪を触っているのに気がついて、一瞬驚き視線を移す。

 しかし、変態! ……と思いかけた瞬間言葉に詰まり、お爺さんの目を見る。

 髪を触ったお爺さんの手には紫色の泥が突いていて、同時にお爺さんも私を見ていた。

「……」

「……あ、ああ。有難うございます。お陰で少し眠気が出てきました」

「それは良かった、ではお休み」

「はい、お先に失礼します」

 私は焦りを必死に隠し、二人に背を向けて屋根裏へと向かい、ベッドに潜り込む。

 そして悶々と頭の中で考え続けた。

 お爺さんはきっと私が覗いていた事を知っていた。

 だから誘導するように私を近づかせて確認したんだ。

 髪を触ると、まだ泥が微かに残っている……でも今から降りて洗うのはもう無理だ。

 多分これは、窓の隙間から髪にかかったもの。

 でも何故だろう。

 何故2人は夜中、隠れるようにして戦っていたのだろう。

 何故その話を一度も私に話さないんだろう。

 謎が謎を呼ぶ。

 でも、ふとした瞬間推測できた事はあった。

 もし私に話さない、気づかせたくないという事なら……。

 強風の中でお風呂を覗きに来たのなんて、きっと嘘。

 お湯を張りすぎたなんて話も、結局私を早く寝させる為なんじゃないか……という事。

 そしてきっと、理由はわからないけれど。

 私を助けてくれたように何かしらの優しさがあるんじゃないかという事だった。

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