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06-2:お色気シーンはどうか脳内で保管してください!

 先にテファちゃんの髪の毛や体を拭いてあげると、彼女は目を瞑ってすまし顔になり、まるでお姫様気分でも味わっているかの様だった。

 実際彼女の髪は金髪で、髪留めから解くと細かいウェーブがかったセミロングが解き放たれる。

 まるでフランス人形の様で名前もそう……とてもグンマさんの妹だと思えない。

「気持ちいい?」

「う~ん。なかなか?」

「それはようございましたお姫様。それでは両手をお上げになってください」

「こうかしら?」

「有難うございます、それではお脇をお拭きさせて頂きますです」

 そう誘導してワキを擽ると、彼女は一層はしゃいで見せる。

「あはは!」

 ……やがてすっかり表情もほぐれて、彼女は逃げるようにその場を去っていった。

 良かった。子供が不安げにしていると私の胸までざわついてしまう。

 今もまだ少し残っているけれど……それも多分その内収まるに違いない。

 そう、時々感じる不安。きっとそれは記憶が無い事から来る無意識の怯え。

 そういうものなんだと私は思っている。

 だって私はあの日目覚めてから、まだ一年程度の記憶しか持っていない。

 ……。

 さあ私も早く髪を乾かさないと、風邪を引いてしまう。

 そう考えふと自分の頭を触ると、巻いていた布が無かった。

「あれ? ……あっ!」

 そういえば風に飛ばされ落としたんだった。

 気付いて明かりを消した暗い浴室に戻り、月明かりを頼りに手拭いを手に取る。

 少し重い、濡れていた髪に巻いたのだから結構湿っていた筈。

 なのに、それだけ風は強かった。

 私はそんな外の様子が気になって、確認がてらそっと窓を開ける。

 すると少し開いたその隙間から、大きな風の音に混じってお爺さんの声が聞こえた。

「ええぞ! 今日は結構な数が来るじゃろうしワシも加勢してやるから後ろは気にするな!」

 ……こんな風の夜に、誰と。

「漏らさねーよ! 絶対だ!」

 耳を澄まして効き続けていると返ってきた返事の声はやっぱりというか、グンマさんだった。

「さあ、来るぞ! ワシはちょっとばかし準備があるからのぉ!」

「準備だけで終わらせて、もっと信用させてやるから!」

「はぁっ、生意気な!!」

 二人の掛け合いが終わると同時に、吹き荒れる風に乗せるかのように甲高い声がした。

 雷が大地を打つ轟音に似た声が聞こえた。

 笑う声、威嚇する声、怒る声、発狂する声。

 様々な声が家の外、暗い森の向こうから響いてくる。

 ……この声、この圧、この胸の中の暗い影。

 私は、どこかで確かにこの感覚を味わっている。

 胸に手を当てた。

 このデジャヴは無くした過去の記憶と別のもので、ただ掴みづらいだけ。

 そしてきっと良い記憶、そう心がそう言っている。

 だって今思いだそうとした私の胸の中には、暗い影も簡単に吹き飛ばせそうな光があった。

 その光は多分、今聞こえたあの人の声と共に生まれたものだと思うから。

 だから私は恐れず見れた、そこから始まる彼らの戦いを。

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