ー第12話 椎名美花
ー第12話 椎名美花
対談は、凄まじい(すさまじい)おまけ付きで終了した。
私は、4人と挨拶を交わして、イスに座り込んだ。4人は、2次会にどこかに行くつもりらしく、出て行った。
上から声がした。
「竹山さん。美花が話しがしたいと言ってます。上がって来ませんか?。」
振り返って見上げると、能登島さんが笑っていた。
スタッフは、撤収を始めている。カメラマンの杉本君は、現像するために、急いで社に戻って行った。北島氏は、ロバート キミヅカに食いついたまま居なくなった。
観客席に上がって行くと、能登島さんが美花さんの隣りに促した(うながした)。
美花「竹山さん。これは記事になるんですか?。」
竹山「高宮さんも妙子さんも、そのまま書いてくれて構わないと言ってますが…最終稿はメールを使って、校正してもらうつもりです。」
美花「実は。阿部部長の事なんですけど。」
竹山「はい。」
美花「妙子さんと、つきあってた訳じゃないんです。」
竹山「でも。映画を一緒に見に行ったんじゃないんですか?。」
美花「妙子さんに、愛との間を取り持ってくれるように、頼んでたんです。妙子さんは、見たい映画が有って、交換条件で阿部部長が映画代を出したんです。」
竹山「じゃあ最初から?。阿部部長とデートしたと言うのは…。」
美花「知っていたのは…私と妙子さんと阿部部長だけです。3人以外には、言わない約束でした。妙子さんは、阿部部長を好きでした。交換条件で有っても、妙子さんにとってはデートだったんです。けっして嘘ではないんです。」
竹山「その約束は、今でも有効なんですか?。」
美花「はい。タバコの匂いがしましたよね?。約束を守らせる為に、阿部部長が来たんです。」
竹山「あれは…みんなしてたんですか?。タバコの匂い。」
三崎コーチも能登島さんもうなずいた。
竹山「…これは。書けませんね。スポーツノンフィクションですから。オカルト物になってしまいます。」
このゲームの主役は、最初から最後まで阿部史也だったのかもしれない。…いや。5番目のプレイヤーと言うべきか…。
考え込んでいる私に、三崎コーチが言った。
「どちらにせよ。このゲームは終わりました。次のゲームが待ってます。竹山さんもライターと言うコートで、次のゲームが待ってますよ。勝とうが負けようが、行くしかない。前を向いてね。」
そう。
前を向いた者だけに、未来は扉を開いてくれる。女子硬式テニス ワールドツアー。息子の世界ランキング。性同一性障害の人々を救う研究。
これからも、4人は未来への扉を打たき続けるに違いない。
新たなベストゲームをつかむために。
ー後書きにつづく