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第8話

 医務室に運ばれ、奥のベッドへと運ばれた。

 紅音が心配そうに傍についてくれている。罪悪感がすごい。

「兄さん…」

「アカネさん、心配しなくても大丈夫よ。一時的に酸欠に陥って、意識を失っているだけだから、すぐに目を覚ますわ」

 副ギルドマスターが、優しく紅音を慰めてくれている。

 ダメだ、完全に起きるタイミングを逃した…どうしよ。

「…いい加減、起きろ」

 そう言ってギルマスが、オレの額を叩いた。バチィン!といい音がする。

「痛ってぇ!!」

 このおっさん、本気で叩きやがった!油断してたから、飛び起きたよ。

 額をさすっていると、紅音が泣きながら抱き着いてきた。

「兄さん!心配したんだから!!」

「悪い」

 紅音はあまり泣かないから、相当心配してたのが分かる。

 申し訳なく思いながら、落ち着かせるように頭を撫でてやった。

 紅音の後ろで、ギルマスと副ギルドマスターが生暖かい目で見ている。…恥ずかしい。

「さて2人とも、吾輩の部屋で色々聞かせてもらうぞ」

 …来たか。

 とりあえず、ギルマスの部屋に場所を移して話をする事になった。

「先にあたしの自己紹介をしましょうか。あたしはフィークス・ウォルンタークス。元Aランクの冒険者で、魔法使いよ。よろしくね」

 ぱちりと妖艶なウインクをしながら、副ギルドマスターことフィークスさんは自己紹介をしてくれた。

「本題に入るぞ。お前ら、ステータスを偽造してるだろ?」

 やっぱりばれたか。

 流石に、あの攻撃をほぼ無傷で受けたのは不味かったか。

 正直に言うべきか…迷う。


―― お兄ちゃん、その人達は大丈夫だよ ――


 不意にテラリオルの声が聞こえた。

 大丈夫、か。後々必要になるかもしれないって事なのか、ばれても問題ないって事なのか…どっちだろうな。

「ああ。オレ達は自分達の身を守るために、ステータスを偽造している」

「やっぱりな。今、こちらの手元にあるステータスがこれだ」

 ギルマスはそう言って、2枚の書類を差し出した。

 そこには、城で鑑定したオレ達のステータスが書かれている。


【黒霧 勲 25歳】

Lv.23 魔法剣士


体力:C

魔法力:C

攻撃力:B

防御力:D

魔法防御力:D

素早さ:E

魔力:C

器用さ:D

魅力:A



【黒霧 紅音 20歳】

Lv.21 テイマー


体力:E

魔法力:C

攻撃力:D

防御力:E

魔法防御力:D

素早さ:D

魔力:C

器用さ:C

魅力:A

テイム枠:2 残 1

従魔:アスワド(グーロ)


「本当のステータスを見せてもらえるか?」

「一応信用はするが、口外無用で頼む。オレ達も色々と訳ありでな」

 テラリオルの事は、極力話さない方がいいだろう。逆に彼らを危険に晒すかもしれない。

 オレは覚悟を決めてステータスを呼び出した。

≪ステータスオープン≫


【黒霧 勲 25歳】

Lv.732 勇者・賢者


体力:EX

魔法力:EX

攻撃力:EX

防御力:SS

魔法防御力:S

素早さ:SS

魔力:SS

器用さ:SS

魅力:EX


 表示されるのは、オレの勇者としてのステータス。

 あちらの世界を救った当時より、1つだけレベルが上がった状態だ。

「「!?」」

 ステータスを見たギルマス達が目を見開いた。何か叫ばれる前に、慌てて防音結界を張る。

 ちらりと紅音を見ると、分かるわ―と言いたげに頷いている。

「紅音、お前もステータスを出せ」

「はーい」

 ムスッとした声で言うと、紅音はくすくす笑いながら自分のステータスを表示した。

≪ステータスオープン≫


【黒霧 紅音 20歳】

Lv.68 勇者・テイマー


体力:C

魔法力:B

攻撃力:C

防御力:B

魔法防御力:A

素早さ:B

魔力:A

器用さ:B

魅力:A

テイム枠:3 残 2

テイムモンスター:アスワド(グーロ希少種)


 いやぁ、紅音も大分強くなったわ。

 スキルに『取得経験値5倍』ってのがあったから、レベルがサクサク上がって楽しかったんだよな。

 オレの経験値も『譲渡』のスキルで渡してたから、尋常じゃないスピードで上がっていく紅音のレベルに2人で思わずはしゃいだっけ。

「お、お前達はいったい…特にイサオ!お前のステータスはおかしいぞ!!」

「アカネもおかしいわよ!レベルを上げ始めてから、20日も経ってないんでしょ!?」

 やっぱり叫びだした、先に結界を張っておいてよかったな。

 しかもフィークスさんが素が出たのか、ちょっと砕けた話し方になってる。

 でも、皆してオレのステータスがおかしいって言い過ぎじゃない?地味に傷つくんだよ。

「2人とも落ち着いてくれ。ちゃんと説明するから」

「お、おお、すまんな。あまりにも非常識なステータスに、我を忘れてしまった」

「ご、ごめんなさい」

 何とか落ち着いてくれたみたいだな。

「ガリーザさんもフィークスさんも、こんなので驚いてたらこれから大変ですよ。兄さん、もっとすごいですから」

 何故か紅音がドヤ顔で、言い放った。どしたの?紅音さん、何かテンション高くない?

 詳しくは話さないよ?

「先に言っておくがオレ達が勇者であるという事と、素のステータスは他言無用で頼む」

「もちろんそれは構わんが、勇者である事をなぜ隠す?城での待遇もいいだろうに」

「わたし達には、やらなければならない事があるんです。誰にも邪魔される訳にはいかないんです」

 オレ達の目的の為には、1つの組織に縛られる訳にはいかない。

 だが冒険者ギルドはある程度自由だし、メリットとデメリットを考えればメリットの方が大きいので所属する事にした。

 国とかに縛られるのは、御免だ。それは、紅音も同意見らしい。

「オレのレベルの事とかそこら辺の理由は、申し訳ないが話す事は出来ない。オレ達にも色々ある、とだけは言っておくけどな」

「…どうしても話せない、と言う訳か」

 オレの表情からこれ以上聞いても無駄だと悟ったのだろう、ギルマスが渋々ながら引いてくれた。

 テラリオルは大丈夫だと言ったが、まだ彼らを信用する事は出来ない。

 この辺の情報は、一つ間違えると厄介な事になるからな。

「分かった。お前達が勇者である事と本当のステータスは、絶対に口外しないと主神テラリオルに誓おう」

「あたしも誓うわ」

 この世界でテラリオルに誓うという事は、違えた時に何をされても文句が言えない誓約になる。そう、殺されても文句は言えないのだ。

 しかもどういう理屈か、違えた時に相手に分かってしまうそうだ。

 覚悟がなければ、テラリオルに誓うとは言えない。これで、秘密が漏れる事はほぼないだろう。

「ふぅ。では試験結果だが、さっきのステータスも加味して、2人とも討伐がCで採取がEだ。本当は討伐Aにしたいが、B以上は信用と実績が無ければ上げる事は出来んのだ」

「構わない。いきなり高ランクになっても、変に目立つだけだからな」

 高ランクになって城に戻ったら、絶対に目をつけられるからな。

「じゃあ、あたしは2人のタグを作って来るわね」

 そう言ってフィークスさんが席を外した。

 冒険者の証として、ランクの刻まれたドックタグを身分証としてもらえる。

 タグがあれば、都市間の移動も国家間の移動もスムーズに出来るようになる。

「ダンジョンに潜る時は、必ず吾輩に声をかけろ。ギルドから1人、サポートする人員を派遣する」

「サポート?」

「そうだ。クァッド王子の要請だから、連れて行くしかあるまい。今ちょうど王都に、吾輩が一番信頼している探索者の職業を持ってる奴がいる。口も堅いから、適任だと思うぞ」

 サポートとか正直いらないんだけど、王子の要請なら断るのも疑われそうだな。

 ギルマスが一番信用してるなら、冒険者として信頼出来るんだろう。

「了解」

「ガリーザさん、そのサポートしてくれる人ってどんな人なんですか?」

 紅音が興味深々で、ギルマスに派遣される冒険者の情報を聞き出そうとしている。

 オレも気になるから聞きたい。綺麗なお姉さんだったら大歓迎なんだけどな。

「ん?…当日まで秘密だ」

 にやりと笑うギルマスに、少しの殺意が湧いたのはオレだけじゃないと思う。紅音の笑顔も怖い。

 ギルマスも何か感じたのか、冷や汗をかいている。

「ラ、ランクは教えておこう。討伐A、採取Bだ。一時期ランクSのパーティーに所属していた、腕利きだぞ」

「凄い人が付いてくれるんですね。ちょっと楽しみかも」

「探索者っていう割に、討伐ランクが高いんだな。オレも楽しみかも」

 逆に、何か楽しみになってきたわ。

「お待たせしました。タグが出来ましたよ」

 フィークスさんが戻ってきて、タグを受け取る。

 ドッグタグって何で厨二心をくすぐるのかね?アクセサリーとしても、かっこいいと思う。

「じゃあ、タグの説明をするわね。タグは2枚で1組になっていて、それぞれ討伐と採取のランクが刻まれているわ。ランクによって金属が変わるのだけど、E・Dは銅。C・Bは銀。Aが金で、Sはミスリルよ。2人は討伐がCで銀、採取はEで銅。この2枚の組み合わせね」

 確かに銅と銀のプレートが、細身のチェーンに通されている。

 そのプレートには、自分の名前とランクが刻印されていた。

「でね、このタグのすごい所は、ギルドにある魔道具を使って討伐ならモンスターの種類別討伐数とか、採取して来たレアな素材とかの記録が見られるのよ。君達なら面白い記録を見せてくれそう」

 ふふっ、と楽しそうに笑いながら、フィークスさんは書類を1枚差し出した。

 とりあえず受け取って内容を確認すると、ダンジョン入場の許可証だった。

「マスターは忘れてたみたいですけど、ダンジョンに入るにはこの許可証がいるわ。はじめて入るダンジョンでは、毎回提示する必要があるから気を付けてね。1回提示してしまえば記録に残るから、2回目からはタグだけで大丈夫よ。えぇと、これでお終いでしたっけ?」

「おう、これで終いだ。お前達、今日はこのまま城に帰るのか?」

 今日、ギルドでする事は終わったらしい。

 この後か…せっかく自由に街を見て回れるのだから、買い物したり教会にも行きたいな。

「この後は、街をぶらつくつもりだ。初めて監視無しで街に出られたからな」

「そうか、色々と気をつけろよ。お前達兄妹は、見た目が良いから目立つ。変なのに目をつけられるなよ」

 余計なお世話だと思うが、心配してくれるのはありがたい。

 実際紅音は色々な芸能事務所からスカウトを受けるくらいの美人だしな。

 でもオレが付いている限り、変なのには指一本触れさせるつもりはない。

「ご忠告どうも。もう行くわ」

「今日は、ありがとうございました」

 2人に挨拶して、冒険者ギルドを後にした。色々と濃い時間だった気がする。

 次はダンジョンだな。楽しみだ。

「で、この後どこに行くの?」

「教会へ行って、テラリオルと話せたらいいと思ってる」

「そうだね。お願いの事もあるし、報告しに行こう!」

 と言う訳で、次は教会にお祈りに行く事にした。

 ディナトさんに街の地図はもらっているので、迷う事は無いだろう。

 紅音と他愛もない話をしながら、歩いて行く。

 紅音の足取りが妙に軽い気がする。本当にこいつ、ショタ好きだったっけ?

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