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第5話

 グラーサさんに連れられて、訓練場の横の一室に来ました。紅音です。

 勉強用の部屋なのか、本がたくさんある。

 一人用の勉強机が3つ並んでいて、その一つの椅子に座るように促された。

「よーし。じゃあアカネには、テイマーって職業がどういうものかを説明するよ」

 グラーサさんはそう言って、目の前の机に数冊の本を置いた。

 タイトルをざっと見ると、テイマーについてとか魔物についての本みたい。

「まず、何となく解ってるとは思うけどテイマーとは魔物をテイム、つまり仲間にして戦う職業だね。最初にステータスを見たときに、『テイム枠』っていう項目があったと思うんだけど見た?」

「はい。確か『テイム枠:1 残1』って書いてあったと思います」

 まぁレベル1だし、当たり前だよね。

 早くテイムしてみたいなぁ。最初の子は、妥協せずに吟味するって決めてるんだ。

 ゲームとかだと大体最初はスライムって感じだけど、そこはセオリーを崩して行きたい。兄さんに話したら、何か分かるって苦笑いしてた。

「うん、最初はそうだね。次にテイム枠が増えるのはレベル20だから、最初のパートナーは良く考えるんだよ。じゃないと、死ぬからね」

 真剣な表情で言われて、頷く事しかできなかった。

 この世界は意外とキビシイねぇ。あのショタっ子が作った世界とは思えないよ。

「分かってくれればいいんだ。テイマーは魔物のテイム以外に、《魅了》の魔法で同士討ちさせる事も出来るんだ。魔法の使い方とかは、また後日教えるよ。で、肝心なテイムの仕方だけど、感覚でどの子がテイム出来るかは分かるから悩む必要はないからね。その子を弱らせるか何かして、こちらへの敵意が薄くなったら軽く当てる感じで魔力を放出する。完全に敵意がなくなったら名前を付けて、テイム完了だよ」

「結構手順が多いんですね」

 正直、もっと簡単にテイム出来ると思ってた。

 でも、何となく理屈は理解できたよ。

 弱らせて、魔力でパスを作ってから名前で縛る。この一連の動作が『テイム』というスキルなんだと思う。

 この世界では、同じ事をしても『スキル』がなければ結果が伴わないんだろな。

「まぁ、あたいは感覚でやっちゃうから、詳しい説明とか出来ないんだけどね」

 グラーサさんは鼻の頭をポリポリかきながら照れ笑いをしている。可愛い。

「次は魔物の事を教えるよ。多分、最初に戦うのはスライムになるね。スライムは不定形の魔物で、触れた物は何でも取り込んで溶かしてしまう厄介な魔物だよ。厄介だけど斬撃に弱いから、剣で斬れば楽に倒せるんだ。見つけたら、イサオに斬ってもらうと良い」

 この世界のスライムは、某有名RPGの様なプルプルかわいい系ではないらしい。残念。

 可愛くてもテイムはしないけど。

「次はゴブリンかな。人型の魔物の中では最弱なんだけど、子供並みの知能があるのが厄介かな。子供と一緒で何するか分からないのが、怖いと言えば怖いんだよね。何年か前の遠征の時にキャンプの焚火にスピーサっていう、爆発性の木の実を放り込まれた事があってね。焚火の近くにいた兵士達が火傷しちまって、酷い奴は片目にはじけたスピーサの破片が入って失明しちまったよ」

 その時の事を思い出しているのか、グラーサさんの眉間に皺がよっている。

 投げ込まれたのは1つじゃなかったのだろう。悪戯程度の考えでそんな事をされては、たまらない。

 ゴブリンの出現地域は特に気を付ける必要がありそうかな。…兄さんがいれば、問題なさそうだけど。

「後は、コボルトだね。二足歩行の犬だけど、どちらかと言えば人に近い知能を持っていて、色々な武器を使う種類がいるよ。大概群れを作っているから、1匹見かけたらたくさんいると思って警戒する事。大規模な群れになると上位種もいたりするから、最初は見つけたら逃げるのがいいね」

 犬とか狼とかの習性か、コボルトも群れを作るみたい。

 上位種っていうと、ハイコボルトとかコボルトキングとかかな?

「ちなみに、コボルトの上位種は将軍コボルト。最上位種はオスが皇帝コボルト、メスが皇妃コボルトだよ。皇帝と皇妃がいたら、騎士団総出の案件になるから絶対に手を出さないように」

 皇帝って…すごい名前。

 でもそんな名前が付くくらいだから、その群れの規模は相当なんだろうね。

 その後もどんな魔物がどの辺りにいるのか、ダンジョンでの魔物の違いや注意点を教えてもらった。

 この世界の常識や、この国と周辺の国の事も。

 初めて知る事がたくさんあって、話を聞くのがすごく楽しい。

「これで、この辺に出る主な魔物の説明は終わりかな。取り合えず数日は戦闘訓練して、王都の近くで少しレベル上げをする予定だからね」

「分かりました。…ところで、グラーサさんのテイムしてる魔物って、どんな魔物ですか?」

 ずっと気になってたんだよね、グラーサさんの魔物。

 最初はスライムとかかな?って思ってたんだけど、説明を聞いた後だと強い魔物をテイムしてそうだしね。

「ん?気になる?ちょうどテイムしたモンスターをどうするか、って話をしようと思ってたから紹介するよ」

「やったー」

 わたしの喜びようにクスリと笑いをもらすと、グラーサさんが自分の影に呼びかけた。

「クルークス、ヴォレーラ、出ておいで」

『がうぅ』

『ピュイっ』

 グラーサさんの影からするんと出てきたのは、金色の毛並みのとても綺麗な狼と水色の羽根の燕のような小さな鳥だった。

 狼の方はグラーサさんの足にすり寄り、鳥の方は彼女の頭の上を楽しそうに飛び回っている。

 可愛いなぁ。わたしも、もふもふ飼いたいなぁ。

「この子達があたいのテイムした魔物だよ。狼の方がグロムヴォルグっていう狼型の魔物で、名前はクルークス。雷を操る事が出来るんだ」

「へぇ、すごい子なんですね。撫でてもいいですか?」

「もちろんだよ」

 やったー!もふもふー!!

 一気に行くと怖がらせちゃうから、ちゃんとゆっくり近づいて目線を合わせてから話しかける。

「こんにちわ。わたしは紅音、よろしくね」

『がう』

 わたしの言葉が分かってるんだね。頷いて頭を少し下げてくれた。

 そっと頬の部分をゆっくり撫でる。雷っていうから、静電気みたいなものがパリパリしてるのかと思ったけど、すごくふわふわしてる。

 グラーサさんが愛情込めてお世話してるのが、毛並みに現れてるんだね。はぁ、幸せ。

 一通りクルークスを撫で終ると、私も構ってとでも言うように鳥が肩に止まった。

「その子はヴェントロンディネっていう鳥型の魔物で、名前はヴォレーラ。風を操り情報収集が得意なんだよ」

 グラーサさんが紹介してくれると、ヴォレーラはお辞儀をするように軽く羽根を動かした。

 動きがすごく優雅で綺麗。でも、こんなに目立つのに情報収集が得意なんだね。

「紅音だよ。よろしくね」

 ゆっくりと頭を撫でると、羽根のつるつるとした肌触りが気持ちいい。

『クルルルル…』

 ヴォレーラは、目を細めて気持ちよさそうにしている。

「見て分かったと思うけど、テイムした魔物は自分の影の中に潜ませておく事が出来るんだ。後、魔物の大きさを変更する事も出来るよ。見てて」

 そう言ってグラーサさんがクルークスに手を翳すと、クルークスがどんどん小さくなっていく。

 子犬位の大きさで変化は止まった。

 …ぬいぐるみだ。金色の狼のぬいぐるみ。

「可愛い…」

「この位の大きさにしとくと、街の中とかでも外に出しておけるからね。でも小さくしっぱなしも可愛そうだから、用が済んだらちゃんと元に戻してやりなよ」

「了解です。あ、大きさの変更って、魔物に負担って掛かるんですか?」

 これはちゃんと確認しておかないと、変に負担を掛けて戦闘で支障が出るのは避けたい。

 わたしの質問に、グラーサさんが満足げな笑みを浮かべた。

「心配しなくても、そこまで負担にはならないよ。でもね、長時間のサイズ変更で元の大きさでの感覚を忘れてしまったら、魔物自身に色々と支障がでるはずだからそれは覚えておいて」

「はい」

 グラーサさんは、本当にテイムした魔物の事を大事にしているんだなぁ。こういう人にテイムしてもらえれば、魔物も幸せだろうな…と勝手に思っちゃう。

 多分、間違ってはいないと思うけど。だって、クルークスもヴォレーラもグラーサさんが大好きみたいだしね。

 わたしも、グラーサさんみたいなテイマーになりたい。

「もう少しやったら、昼ご飯を食べに行くよ」

「了解です。兄さんが寂しがる前に、合流したいですね」

「あんたたち兄妹は本当に仲がいいんだねぇ、うらやましいよ。あたいは、兄貴と仲が悪いからさ」

 少し寂しそうに笑うグラーサさん。本当は、お兄さんと仲良くしたいんだろうな。

『キューン』

『ピュィィ』

 クルークスとヴォレーラが、グラーサさんにそっと寄り添う。

 グラーサさんは2匹を優しく撫でると、自分の影の中に戻した。

「ごめん、暗くなっちまったね。気をとりなおして、もう少し魔物について教えるよ」

 わたしも深く聞く事はやめて、続きを教えてもらうことにした。

 この世界には本当に色々な魔物がいるらしい。どの子を最初にテイムしようか、すごく悩む。

 最初にテイムするのによさそうな魔物について相談していると、お昼ご飯の時間まであっと言う間だった。

 最初の魔物、兄さんにも相談してみようっと。

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