第25話
更新がかなり遅くなってしまい、申し訳ありません!
25階層のボス階へ続く階段の手前にあるセーフゾーンで、罠地獄で疲れた心と体をしっかり休め出発しようとした時に彼らは現れた。
物々しい装備に身を固めた彼らは、まっすぐにこちらに向かって来る。
「クロキリ兄妹だな?我々はアルファード王国・国王直属部隊【ラパス】だ。大人しく我々と一緒に来てもらおうか」
一番偉そうな奴が、従うのが当然と言わんばかりの態度で話しかけてきた。
この国の権力持ってる奴等って、何でそんな話し方しかできないんだろう。
後ろに居るギュスター達が微妙な顔してる。こいつ、嫌われてんのか?
「あのなぁ、そう言われて素直に従うと思ってるのか?」
「あまり傷つけたくはないが、力づくでも連れて行くぞ」
そう言うと、他の騎士に抜刀の指示を出した。
他の冒険者がいないのは幸いだが、この状況をどうにかしないと。
あ、いい事思いついた。
「傷つけたくない、ねぇ。だったら、次のボスをあんたらが倒せたら大人しく着いてってやるよ」
「兄さん!?」
「イサオ君!?」
笑って言ったオレの言葉に、紅音とウィリディスは驚いて声を上げる。
対照的に、【ラパス】のお偉いさんはそんな事でいいのかと鼻で笑った気がした。
「お前達がそれで良いなら、我らは構わんぞ。ここは1度攻略したダンジョンだしな」
「じゃあ、さっさと行こうぜ」
オレが先頭に立ってボス階までのぼり、部屋の扉の宝玉が青なのを確認する。
「オレが扉をあけるから、先に入ってくれ」
有無を言わせず扉をあけて彼らを先に行かせ、オレ達は後から着いて行く。
能力制限の装備は、ここに来る前にある程度外してある。
オレが扉を開けた時、紅音とウィリディスは何とも言えない複雑な表情をしてたなぁ。
「兄さんって、敵には容赦ないよね。今度は何が出るんだろ・・・」
「僕もアカネちゃんに賛成。自業自得とは言え、彼らに少し同情するわ」
アスワドも、何とも言えない目でこちらを見ている。
自分達で何もしなくても敵がいなくなるんだから、別にいいと思うんだがなぁ。
少し進むと、階層の真ん中に何かがいるのが見えた。
「オレ達はここにいるから、サクッと倒してきてくれよ」
真ん中にいるモノを指して、オレは【ラパス】のお偉いさんに言う。
「分かっている。ギュスター、お前の小隊はここに残り彼らを見張れ。この層のボスなど、我らだけで十分だ」
「承知しました。エルバラース様、ご武運を」
オレ達の所にギュスターを含めて5人程が残り、残りの10人程がボスの討伐に向かった。
さてさて、今回のボスは何だろうな。
「イサオ殿、大人しく王宮に行くおつもりなのですか?」
お偉いさん達が離れた後、ギュスターが不思議そうに聞いてきた。
と言うか、普通に話しかけて来たな。
「そんなわけないだろ?アイツらにここのボスは倒せないよ」
結界を張りながらギュスターにそう返すと、不思議そうな顔で首をかしげた。
「あ!兄さん、戦闘始まったみたいだよ」
「うわぁ、今回のボスはアメジストドラゴンロードだし。この間のブラックドラゴンより強い奴じゃん」
「「「「「は!?」」」」」
オレ達の会話に、【ラパス】の連中が声を上げる。
まあ、信じられないだろけどな。ブラックドラゴン倒したとか。
そこら辺は置いといて、アイツらがどれだけ持つか分からないし情報交換をしときますか。
遠くから叫び声と怒鳴り声、そしてドラゴンの咆哮が聞こえるが無視する。
呆けていたギュスターを正気に戻して聞いた所によると、オレ達の居場所はこの間助けた冒険者達からバレたようだな。
口止めするのを忘れたから、しょうがないと言えばしょうがないのか。
そして、ここに残ったギュスターの小隊の隊員は全て、今の国のあり方に不満を持っている者達だそうだ。
今後の動き方などを話合い、以前ギュスターに渡した〈魔法を移植したコボルトの魔石〉を壊しておいた。
「よし、そろそろ行きますか」
「僕らは?」
「待っててくれ」
ヴィミラニエを左手に持ち、右手にリボルバーを構えながらドラゴンロードに近づいて行く。
その際にリボルバーに込められるだけ魔力を込め、魔法を付与しておく。
よく見ると、2人ほど生き残っていた。瀕死っぽいけど。
とりあえず助ける為に、邪魔な尾の付け根を狙ってリボルバーを1発。
――― ドガァァァン ―――
あ、消音処理するの忘れてた。今度、時間出来たらやっとかないとな。
弾は狙い通り尻尾の付け根に命中するが、それだけではちぎれない。だが、ダメージは大きいようだ。
『グォアァァ!』
ドラゴンロードは自分にダメージを与えた相手を的確に認識している様で、目の前にいる瀕死の2人からオレの方へと向き直り威嚇の咆哮を放つ。
もちろんそんなモノでオレが怯むはずもなく、先程の弾丸に付与した魔法を発動させた。
正直たいした魔法ではなく、弾丸の形状をウニの様にするだけだ。
しかし、先程の弾丸は貫通していない。
『グギャァァァ!!』
変形した弾丸が肉に食い込み、動くたびに激痛が走るようだ。
更に数発、同じものを右前足に打ち込み魔法を発動させる。
『グァァ!!』
再度ドラゴンロードが痛みに叫ぶ。
だがオレの攻撃の正体が分かったのか、弾丸がある個所を自分で喰いちぎり排出する。
その傷口を淡い光が包み、出血が止まったので多少の回復魔法も使える様だ。
『グゥゥ』
ドラゴンロードは痛みに呻きながら、怒りと憎悪の満ちた眼でオレを睨んできた。
「良いねぇ。楽しくなりそうだ」
思わずそんな言葉が漏れ、自分が笑っている事に気づいた。
オレ、戦闘狂だったっけ?
少しショックを受けながら《無限収納》にリボルバーをしまい、ヴィミラニエを構えてドラゴンロードを鑑定する。
【アメジストドラゴンロード】
Lv.350 ランク SS
体力:SS
魔法力:S
攻撃力:SS
防御力:SS
魔法防御力:S
素早さ:A
魔力:S
器用さ:S
魅力:S
ドラゴンって奴は、どうしてこうも頑丈なんだろうな。
この前のブラックドラゴンよりレベル自体は低いのに、上位種族と言うだけで強い。
どの程度攻撃が効くか試して、必要なら武器を変えるか何かしないとな。
物は試しとヴィミラニエに魔力だけを込めて、正面からダッシュで向かって行く。
ドラゴンロードがブレスで迎撃してきたので、走る速度は緩めず紅音達に当たらない様に右前方へと避けた。
そのまま大きく回り込み、ドラゴンロードの尻尾めがけて走る。
相手も気が付いたのか、尾を振り上げ鞭の様に打ち込んで来た。
「っ!?」
ジャンプして避ける以外に無く仕方なくジャンプで避けたが、返しの尾を避けきれずに吹っ飛ばされた。
だがただでやられる訳もなく、尾にぶち当たる瞬間にヴィミラニエの刃に魔力を集中して切れ味を上げて刃が当たる様に防御してやった。
片刃の剣で良かったよ。
『ガァァァ!』
その結果、ドラゴンロードの尾の先が斬り落とされて床でビチビチしている。
飛行魔法で吹き飛ばされた体制を立て直し、首を狙って後ろから突っ込むが素早くこちらを向いたドラゴンロードの前足に邪魔され、前足に傷をつける程度のダメージしか与えられなかった。
堅ってぇな!
このままだと時間がかかりそうなので、使いたくないけど魔法を使うしかないか。
魔法剣と違ってこの世界の魔法じゃないから、使用を控えてたんだけどなぁ。
そう思いながらも、使い慣れた魔法を組み上げて行く。
膨大な魔力が体から溢れ望む形に組みあがるのを、ただ事ではないのを感じ取ったドラゴンロードの焦りが混じった攻撃を避けながら待つ。
ドラゴンロードが焦るのも無理はないだろう。
この魔法はアースフィリアにいた頃に、ドラゴン達を束ねる王を倒した時に使った魔法だからな。
膨大な魔力を使う代わりに、指定された者は避ける事も出来ずに飲み込まれ絶命するオレだけが使える魔法だ。
組みあがった魔法は徐々に小さく圧縮され、オレの手のひら位の大きさの魔力球になる。
「さようならの時間だ」
オレはそう言うと、ドラゴンロードの心臓めがけて魔力球を打ち出した。
ドラゴンロードも魔法障壁を張って何とか逃れようとするが、魔力球は障壁を簡単に破り心臓部分へ吸い込まれていった。
『!!??』
目標地点に到達した魔力球の魔力が解き放たれ、ドラゴンロードの心臓を飲み込んだようだ。
最後の叫びも許されず、こちらに驚きと怯えの混じった眼を向けたドラゴンロードは、ぐらりと傾くとそのまま床に倒れた。
――― ズズゥゥン ―――
ブラックドラゴンの時もそうだったが、ドラゴンの最後の叫びは何かと呪いをかけられやすいから、なるべく叫ばせない様に倒すアースフィリアの時の癖が残ってるなぁ。
まあ、こっちでも同じかもしれないからいいけど。
そうこうしていると、倒したドラゴンロードが淡い光となって縮んで行く。
光がおさまった後に残っていたのは、豪奢な宝箱だった。
さて、宝箱は後であけるとして瀕死の2人を助けますか。
亀の様な更新ですが、お付き合い頂けると嬉しいです。
次はもうちょっと早く更新出来るよう、頑張ります。
・・・正月に休みなんて無いんや・・・




