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第24話

「あの兄妹はまだ見つからんのか!!早くわしの所に連れて来い!!」

 部屋に陛下の怒声が響き渡った。

 彼らが城から逃げ出して、3日が経過していた。

 傷が痛むのか、時折肩に手を置いて忌々(いまいま)しそうに顔をしかめているのが愉快でたまらない。

 そんな感情は表に出さず、いつもの無表情で現状を報告する。

「陛下、落ち着いてください。今、騎士団総出で探しております。彼らには懸賞金もかけておきましたので、居場所が分かるのは時間の問題かと」

 彼らの報告の次はいつもの定期報告をしていく。

 陛下はケガをしているとは思えない位、部屋を動き回り苛立ちを隠そうともしない。

 全く、ケガをしている時くらいは大人しくしてもらいたいものだ。

「イスクロ、あ奴らを見つけたらすぐに【ラパス】を動かせ。宝物庫にあるアイテムも使用して構わん」

「承知しました」

 指示を受け陛下の部屋を後にし、すぐに【ラパス】の面々に陛下の言葉を伝える。

 ギュスターには、内密に別の指示も出しておくのを忘れない。

 彼らの居場所が分かれば、十中八九陛下は私兵も動かすだろう。自身に傷を負わせた相手を、あの方は過小評価しないはずだ。

 …まぁ、彼には勝てないでしょうがね。

 クァッド様がクーデターを起こすのなら、陛下の私兵が一番の壁になるでしょう。

 実力は冒険者で言えば討伐ランクB以上に相当する実力者の集団であり、特殊な訓練を受けた正真正銘陛下の切り札だ。

 それでも、あの兄妹に勝てるとは思えない。

「はぁ、キアラに会いに行きますか」

 考えるのに疲れてしまったので、診療室と言う名の牢獄に囚われている妻に癒してもらいましょう。

 彼女も早く解放してあげたいものです。




 コミールス様に連れられてレベルを上げるために来たのは、王家が隠している洞窟型の上級ダンジョンだった。

 ここにはレベルが100を超えてから来る予定だったから、わたしには少し辛い。

 親衛隊の人達に助けてもらいながら、何とかコミールス様について行く。

「…」

 コミールス様はここに来てからあまり話してくれないし、すごい形相で魔物を倒してるしで、親衛隊の人も戸惑ってるみたい。

 一応パーティーは組んでいるからわたしのレベルも上がっているんだろうけど、コミールス様のレベルはいくつ上がっているんだろう。

 ずっと戦ってて、疲れたよぉ。もう限界…

「コミールス様、そろそろ休みませんか?」

 恐る恐る声をかけてみたら、魔物を倒したコミールス様がこちらを向いてくれた。

 返り血が滴ってて怖いけど、ちゃんとわたしの声が聞こえてたのは嬉しいかも。

 親衛隊の人がある程度安全を確保してくれたので、少し広めの通路の隅で休憩を取る事にした。

 持って来ていた布でコミールス様の返り血をぬぐい、飲み物を手渡して疲労回復の魔法をかける。

「無理やり付き合せてすまないな、サキ。だが俺様は、どうしてもアイツに勝ちたいんだ。…幻滅するか?」

「いいえ。わたしは何があろうと、コミールス様の側にいると決めましたから」

 いつもより弱気のコミールス様が安心出来るように笑って答えると、抱きしめられた。

 人前でそんな事をされるのが初めてで、思わず固まってしまう。

 親衛隊の人達もぎょっとして慌てて視線を逸らしたり、回れ右をしたりと少しざわざわしている。

「コミールス様!?」

「少しだけ、このままでいさせてくれ」

 そんな事もありつつ、地下20層まで進んで引き返す事になった。

 魔物もたくさん倒したしボスも今までよりかなり強い魔物が出たから、レベルも十分上がってるはずだよね。

 城に帰ったら鑑定してもらって、十分にレベルが上がってたらあの人達を探そうかな。もう誰かが見つけてるかもしれないけど。




 兄妹が城から脱出して4日目、一人の非番の兵士から彼らの居場所が判明した。

 兵士の話によると、酒場で4人の冒険者が騒いでしたらしい。。

 その冒険者達の話を何となく聞いていると、兄妹と思われるパーティーに助けられただの妹が可愛かっただのと話しており、まさかと思い詳しく聞いたそうだ。

 聞いた容姿とテイムしていたモンスターの情報が兄妹と一致したため、急いで城まで報告に来たそうだ。

 報告を受けた上司が更に上司に…と報告していき、最終的に宰相の元まで情報が届けられる。

 報告を受けた宰相は、ため息をつきながら部下にいくつか指示を出し、国王へと報告に向かった。

 宰相が国王の部屋に出向くと、第一王子も何かの報告に来ていたようだ。

「イスクロか。何か進捗でもあったのか?」

「はい。あの兄妹の居場所が判明しました」

 宰相の言葉に、国王と王子の目の色が変わる。

「既に【ラパス】に指示を出し、彼らを追わせております」

「場所は?アイツはどこにいる!」

 王子に詰め寄られ、宰相は少し眉間に皺が寄る。

「コミールス、少し落ち着け。で、どこにいるのだ?」

「中級ダンジョンだそうです。彼らに助けられた冒険者がいたようで、非番の兵士が話を聞いてきました」

「分かった、その兵には褒美を渡しておけ。後は【ラパス】に任せて、わしは待つ事にしよう」

 国王は満足そうに笑い、彼らをどうするか考えているようだ。

 国王とは逆に、王子は怒りに顔を歪めている。

「親父、俺様も中級ダンジョンに行ってくる。アイツともう一度戦って、ぶちのめしたい」

 彼に負けたのがよほどプライドを傷つけられたのだろうか、かなり執着しているようだ。

 国王は少し考え許可を出したが、ただし…と続けた。

「死んでも知らんぞ。あそこの罠とボスは凶悪だからな」

「一度クリアしたダンジョンだ、そう簡単には死なねぇよ」

 王子はそれだけ言うと、早々に部屋を出て行った。

 国王と宰相は何も言わず見送り、これからの打ち合わせをするのだった。

またプライベートが忙しくなって来ました。

当分、月一更新出来るかどうかという感じになりそうです。


投稿を初めて1年経ちました。

読んでくださる方々に感謝です。

これからも、よろしくお願いします(^^)

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