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第21話

大分間が空いてしまいました。

待っていてくださった方、お待たせしてすみません(>_<)

 はい。やってまいりました、中級ダンジョンです。

 王都からは馬車で3日かかる場所にある中級ダンジョンだが、時間が無いのでギルドにある緊急移動用の転移魔法陣を使わせてもらった。

 昨日ギルドの宿泊施設に戻った後、クァッド王子達とクーデターまでの残り時間の使い方を相談した。

 ダンジョン攻略に使えるのは10日、戻ったら準備してクーデターを決行、と言う段取りになった。

 ダンジョン自体はまた最短距離で攻略するつもりで、紅音とウィリディスの2人と話し合ってある。

 今回のダンジョンは塔タイプで、全35階層。魔物も初心者用ダンジョンより質も量も上がるそうだ。

 戦闘自体は紅音とアスワドにまかせて、オレとウィリディスは探索と罠の警戒を主にする。まあ、前回とそんなに変わらない。

 さあ、攻略を始めようか。

「兄さん、何かワクワクするね。後、ここにいる間に良い事が起きる気がするんだ」

 紅音が目を輝かせながら、うきうき顔ではしゃいでいる。うん。可愛い。

「アカネちゃん、楽しそうだねぇ」

 ウィリディスも、何だかんだ楽しそうだ。

 オレは2人を促し、塔の中へと歩を進めた。

 中級ダンジョンも下層はレベル上げ目的の冒険者が多いようで、あまり魔物に会わずに進んでいく。

「やっぱり、下層の魔物は他の冒険者が倒した後みたいだね。さっさと進みたい僕らには、ちょうどいいけど」

「だな。さっさと20階まで進もうぜ。本番はそこからだろ?」

 そう、このダンジョンが怖いのは20階からなのだ。

 魔物のレベルがいきなり平均で10程上がり、罠も性質の悪い物になるらしい。

 モンスターハウスに入った途端に麻痺毒付の針が飛んで来るとか、いきなり上の方の階のモンスターハウスに飛ばされるとか、パーティーがばらばらに違う場所に飛ばされるとか、意地の悪い罠が多く設置されていて解除も難しく時間がかかるらしい。

「そうだね。20階以降の罠は、見つけたら必ず教えて。時間かけてでも解除しないと、大変な目にあうからさ」

「上の階のモンスターハウスに飛ぶ罠だけは、使っても良いと思うけどな」

 オレが笑いながら言うと、ウィリディスは少し呆れ顔でかもね、と言った。

『姫!そっち行ったよー』

「オッケー」

 魔物数体とエンカウントすると、紅音はアスワドを呼びだして戦闘を開始した。

 紅音とアスワドの連携も、大分スムーズになって来たみたいだな。遠慮もストレスもなく戦えている。

 相手はイルテサーペントと呼ばれる蛇型の魔物で、状態異常をおこす攻撃を多用してくる厄介な奴らしいが攻撃される前に全て倒してしまった。

 戦闘のテンポもいいな。それに楽しそうだ。

 罠に注意しつつ、どんどんと先に進んでいく。オレ、何にもしてないな。

 順調に進んで10階に続く階段前のセーフゾーンに到着、休んでいる人数も少ないので今日はここまでにしてオレ達も休む事にした。

 セーフゾーンでは、5組のパーティーが思い思いに休んでいる。

 オレ達も空いている隅に陣取って、『安らぎのテント』を設置した。防音の結界も忘れない。

「イサオ君。全員でテントに入るのは、多分良くないと思うよ。いいアイテムを持ってると、冒険者狩りって呼ばれる面倒なのに目を付けられるからね」

「わかった。今日は紅音とアスワドにテントを使わせるか。オレ達は見張りだな」

「良いの?じゃあ、今日も頑張って夕飯作るね!期待してて」

『姫のご飯、おいしいから楽しみ!』

 夕飯の為にテーブルやら簡易キッチンやらを用意しながら、周りの冒険者の様子を見てウィリディスがアドバイスをしてくれる。

 やっぱりどこの世界にも、冒険者を標的にする冒険者っているんだな。

 紅音1人でも返り討ちには出来るが、余計な揉め事は勘弁願いたいので避けられるなら避けた方がいいだろう。

 ま、アスワドがいるから、下手に手は出してこないだろうけど。

 その後も他愛もない話をしながら紅音を手伝ったり、デザートを作ったりした。

 ウィリディスは弓の手入れをしている。

「出来たよ〜」

 料理をテーブルに並べ終え、紅音が皆に声をかける。

 オレもデザート作りが終わったので、出来たデザートを≪魔法の鞄(マジックバッグ)≫に仕舞って席に着いた。

 今日のメニューは道中で倒したオークの肉を使った生姜焼きと、ご飯に味噌汁だ。生姜醤油のいい香りが、食欲を刺激する。

 匂いにつられた他の冒険者が、物欲しそうに見ているが無視する事にした。

「うわぁ。これはまた、美味しそうだね〜」

『いい匂い〜』

 ウィリディスとアスワドが、生姜焼きの匂いに鼻をひくひくさせている。

「さあ、食べましょ!で、デザート食べながら明日の事を決めようよ」

「そうだな」

 このダンジョンに入ってから、やけに紅音の機嫌が良い。

 戦闘とかの動きも良いから問題は無いが、この後何かありそうで怖いな。注意しとくか。

 特に問題なく食事を終えたのでデザートを配ると、3人ともキラキラした目でそのデザートを見ていた。

 紅音とアスワドは分かるが、ウィリディス…いい歳したおっさんがその顔って。

 いや、まあ似合わなくはないんだけど、本当に甘い物好きなんだな。

 ちなみに今回は、4〜5階で倒したリベルピャントと言う植物系の魔物のドロップで作ったタルトだ。

 色々なフルーツをドロップする面白い魔物だったから、フルーツタルトを作ってみたんだが思ったより好感触で良かった。

「君、天才なの?」

「いやいや、ただのタルトだから。さっさと食って今後の進路の相談するぞ」

 感動しまくっているウィリディスを何とか宥めて、明日からの進路を確認した。

 このダンジョンは10階ごとにボス部屋と言うかボス階があり、その階には階段を上がるとすぐ扉があるそうだ。

 初心者ダンジョンの時と同じで、他のパーティーが中にいたりボスがリポップしていなければ開かない。

「そうすると、明日はボスだけで終わる可能性もあるって事か」

「運が悪いとそうなるね。ここに着いたのも、僕たちが最後だったし」

「焦ってもしょうがないし、時間が出来たらゆっくりするのもいいかもしれないよ」

 紅音の言う通り、ゆっくりするのもいいかもしれない。テントの中でなら、アイテムの加工とかも出来るし。

 明日は、他の冒険者との話し合いから始まりそうだな。




 次の日、セーフゾーンにいたパーティーの代表で話し合い、オレ達はボス階を3番目に攻略する事になった。

 セーフゾーンにいたうちの3組はまだ上に上がれる実力が無いとかで、10階の扉前にある転移魔法陣で地上に戻るそうだ。

 さて、時間までどうしようか。

 最初のパーティーは今ボス部屋の中、次のパーティーは部屋の前で待つと言っていた。なので、今セーフゾーンにはオレ達しかいない。

 なので、誰か来るまでは自由に過ごす事にした。

 紅音はアスワドの毛並みを整えている。長毛種だから、すぐ毛に埃やら汚れやらが絡まってしまうからな。

 2人とも久しぶりにのびのび出来るからか、楽しそうだ。

 ウィリディスは、時間まで休みたいという事だったのでテントで寝ている。

 探索は意外と神経使うから、休める時に休んでもらおう。

 オレは、捌ききれなかったコボルトの毛皮で紅音用の肩掛けポーチを作っていた。何の付与もない、普通の物を。

 前に呼ばれた世界で、アイテムや武器・防具の職人等に色々と聞いてある程度は作れるようになっている。

 小物の作り方は女性に喜ばれるとかで、何故か皆がこぞって教えてくれた。

 紅音に作ってやれるから助かったんだが、オレを呼び出した国の女性陣が期待に満ちた目をしていたのがちょっと面倒だったな。

「兄さん、何作ってるの?」

「肩掛けのポーチだ」

 紅音が不思議そうに聞いてきたので、完成間近のポーチを見せて答えた。

 茶色の毛皮が多かったが、白い毛皮が数枚あったのでそれを使ってがまぐち型の物を作っている。

「…兄さんが使うの?」

「何でそうなるんだよ!お前のに決まってるだろうが」

「えへへ、冗談だよ。ありがとう」

 そう言った紅音の笑顔が、すごく可愛いです。

 そうこうしていたら、オレ達の前にボスに挑戦するパーティーの一人がセーフゾーンに戻って来た。

「あ、君達!私達これからボス部屋に入るから、扉の前に移動するといいよ」

「ありがとう、すぐに行くよ。わざわざすまない」

 わざわざ知らせに来てくれたのか。助かる。

 知らせに来てくれた人に軽く手を上げて答え紅音にウィリディスを起こすように言い、オレはテント以外を片付け始めた。

 ちょうど片付け終わる頃に、ウィリディスがテントから出て来た。

「おはよう」

「おう、おはよう。良く寝れたか?」

「うん。紅音ちゃん達は?」

「先に扉の前で待ってもらってる。オレはテントをしまってから行くから、先に行っててくれ」

「了解」

 ウィディスには先に紅音達と合流してもらい、オレはテントをしまってから合流する。

 扉の宝玉の色は、まだ赤なので前のパーティーが挑戦中なのだろう。

「入れるようになったら、私が扉を開けるね」

「イサオ君は絶対に、絶っ対に!扉に触らないように。ブラックドラゴン以上の魔物が複数出てきたら、僕とアカネちゃんじゃ対処できないから」

 扉を眺めていたら、2人から触らないように釘を刺されてしまった。

 前回のブラックドラゴンがトラウマになっているようで、2人の勢いが怖かったから素直に頷いておいた。

「今回オレは手を出さないから、好きにやってくれ」

「じゃあ、今回は僕がアカネちゃん達に指示を出そうか。それでいい?」

「うん。アスワドも良いよね」

『うん、弓のお兄チャンの言う通りにすればいいんだよね?』

 オレを無視して、ウィリディスを中心に大まかに作戦を決めて行く。うわぁ、疎外感半端ないなこれ。

 だけど、メンバー的にはバランス良いと思う。

 近接はアスワド、中距離に紅音、遠距離は全体を見ながら指示を出すウィリディス。

 経験豊富なウィリディスが指示を出してくれるなら、安心して見ていられるしな。

「でも何が出てくるか分からないから、油断はしないようにね。マジでヤバくなったらイサオ君、助太刀よろしく」

「おう、任せとけ」

「何が出てくるかな?ワクワクするね〜、アスワド」

 本当に何が出てくるのやら。

 そんな話をしていたら、宝玉の色が青になった。

「あ!青くなったよ!!」

「じゃあ、行こうか。いつも通りにすれば、絶対に負けないからね」

『姫は、アスワドが絶対に守るよ!』

 3人は顔を見合わせて頷きあうと、紅音が扉を開けた。

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