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第1話

 妹と2人で出かけた帰りに信号待ちをしていると、突如、妹の足元が光り魔法陣の様なものが出現した。

 その光景に覚えがあったオレは、咄嗟に妹をかばう様に抱き込んだ。

 妹がびっくりして抗議の声を上げているが、今は我慢して欲しい。

 この光景はオレが以前、異世界に召喚された時にそっくりだった。

 光が強くなったと思うと、浮遊感に包まれる。

 さて、どこに飛ばされるのやら。

 光が収まると、やさしく光が降り注ぐ庭の様な場所にいた。

「ようこそ、神の庭へ」

 声をかけて来たのは、柔らかそうな金の髪に、大きな青い瞳の可愛らしい少年だった。

 ふわりと儚げな笑みを浮かべる少年を見て、妹が隣で理想のショタっ子とかつぶやいている。

 オレ達ヲタクの性か…というか、こいつショタ好きだったっけ?

 おっさんもいいとか言ってた気がするが…守備範囲広いな。人の事は言えないが。

 彼に手招きされるまま、庭の東屋にあるベンチに腰掛けた。

「お兄ちゃん、久しぶり」

「ああ、久しぶり」

 オレ達が挨拶を交わすの見て、妹が目を見開いている。

 ちょっと怖いぞ、妹よ。なぜ、そんな顔でお兄ちゃんを見ているんだい?

「兄さん。どういう事?」

「まぁ、前にちょっとな」

 詳しい話をするには時間がかかりすぎる。後で説明すると約束して、なだめる。

 そのやり取りを、ショタっ子は苦笑して見ている。

「…話してもいい?」

 若干気まずそうに問いかけるショタっ子に、軽く謝って先を促す。

「お姉さんは初めましてだよね?ぼくはテラリオル。今回お姉さんが呼ばれた世界を管理する神だよ。時間があんまりないから、要点だけ話すね。今回お姉さんを呼んだのは、アルファード王国と呼ばれる人間の国で、領土を広げるための戦争の駒として勇者召喚を行ったみたいだね」

 聞くだけで頭痛くなるな。

 そんな勝手な理由で、うちの妹を呼んだのか。許せん。

「だから、2人のステータスは偽装しといた方がいいよ。お兄ちゃん、出来るよね?」

「出来るぞ」

「じゃあ、後で変えておいてね。後は…」

 テラリオルに召喚先の世界の事、オレ達のやるべき事などを教えられ、いくつかのアイテムとお金、そして妹に“ショタっ子の加護”をもらった。

 “ショタっ子の加護”って何だよ。と思ったが、“テラリオルの加護”だと色々と不味いらしい。

 最後にステータスと称号を偽装、スキルを隠ぺいして完了だ。

「色々頼んじゃったけど、お兄ちゃん達なら大丈夫だよね。困ったらどこでも良いから教会に来てね、力になるよ」

「ありがとうございます。テラリオル様の期待に応えられるように、頑張ります」

「ありがとう。お兄ちゃん、お姉ちゃんを守ってあげてね」

「言われなくても」

 いい笑顔でサムズアップしておく。

 テラリオルが手を翳すと、妹の足元が光り出す。

 先程と同じ体制になるように妹を抱き込み、何があってもいいように備えた。




 光が収まると、目の前にはドレス姿でピンクの髪の女が騎士を従えて立っていた。

「ようこそおいで下さいました、異世界の勇者様。あなた様のお力を、我が国の為にお貸し下さい」

 妹をかばったまま視線を女に向け、威嚇するようににらむ。

「あんた、誰だ?」

 女は優雅に微笑んでいるが、なぜか嫌な感じがする。

「わたくしはこのアルファード王国の第1王女、ツィアリダ・フェイ・アルファードと申します」

「アルファード王国?聞いた事ないな」

「無理もありません、ここはあなた方がいた世界とは異なる世界なのですから。あなた方をお呼びしたのは他でもありません、この国が魔族の脅威に晒されております。どうかお力をお貸しください」

 いきなり呼びつけた事に対する謝罪も無く、拒否権のほぼないお願い。

 魔族とやらの危険性や能力、どの位緊急性のある事態なのか、そういった基本とも思える説明が一切ない。

 やっぱり2回目の異世界はハズレだな。

「あの…わたし達にそんな力、ありませんよ」

 妹がおずおずと王女に話しかける。

 王女は予想通りだと言わんばかりに頷くと、いつの間にか控えていた神官が持っている水晶をこちらに差し出した。

「こちらの水晶で、あなた方のステータスを見る事が出来ます。手を翳してみてください」

 王女はオレの方が気になるようで、オレに水晶を差し出してきた。

「下がってろ」

 妹を下がらせ水晶に手を翳すと、淡く光り透明なパネルの様なものが現れた。


【黒霧 勲 25歳】

Lv.1 魔法剣士


体力:D

魔法力:D

攻撃力:C

防御力:E

魔法防御力:E

素早さ:F

魔力:D

器用さ:E

魅力:A


「職業が勇者じゃない…?」

 つぶやく王女の眉間に、わずかにだが皺が寄っている。

 その横で神官がステータスを書き写している。

 写し終ると、妹に手を翳すように言う。

「兄さん…」

「大丈夫だ」

 妹が不安そうに水晶に手を翳すと、オレの時と同じように透明なパネルが現れた。


【黒霧 紅音 20歳】

Lv.1 テイマー


体力:F

魔法力:D

攻撃力:E

防御力:F

魔法防御力:E

素早さ:E

魔力:C

器用さ:C

魅力:A

テイム枠:1 残1


「こちらも…」

 王女は完全に失望した感じだな。

 聞こえないと思っているのか、小さな声でぶつぶつ言っている。

 オレには聞こえているんだが、不愉快すぎる。

 さあ、どう対応するのかな?

「魔法剣士とテイマーですか。とても珍しい職業ですね。ですが、なぜお二人は勇者の職業をお持ちでないのでしょう?“これまでお呼びした方”は、必ずお持ちでしたのに…」

 おいおい、それをオレ達に聞くのか?

 『偽装したからです』とか答えるわけないだろうに。呆れてモノが言えん。

「そんな事、私達に聞かれても分かるわけないじゃないですか。私達の世界にはそんな職業なかったですし、そもそも戦争とかとは無縁の国で育ちました。ご希望の職ではなかったのなら、私達を元の世界に帰してください」

 …珍しい、温厚な妹から怒気を感じる。

 オレ達以外にもこの召喚の犠牲者がいるのが分かったから、スイッチ入ったのか?

 王女がちょっとたじろいだ。反撃というか、言い返されるとは思ってなかったんだろうな。

「この召喚陣はお呼びすることは出来ても、お返しすることは出来ないのです。ですが生活は保障しますので、ご安心ください」

 いや、そういう問題じゃないだろ。

 ああ、こいつと話しているとムカムカしてくる。

「…もういいです」

 あ、諦めた。

 王女には、オレ達の言いたい事は伝わらないらしい。

「では、歓迎の晩餐を開きたいと思いますので、お呼びするまで別室でお待ちください」

 王女は悪びれる様子もなくそう言うと騎士に指示を出し、さっさと引っ込んで行った。

 オレ達は騎士に別室とやらに案内された。

 …ようやく人心地つけるかな?


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