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私鉄から地下鉄に乗り換えると、美鈴とは少し離れて席を取った。美鈴は地下鉄に乗った時点で友達と合流しているから、あとは知らない。
目的の駅でそのまま、別れるとコンビニに寄ってお昼ご飯を調達してから学校に向かう。
いつもの教室に愛想も無く入ると、窓側の前から四番目の席に座り、手提げバッグを机の横に引っ掛け、授業が始まる前にトイレに行くために席を立つ。
仲良しグループが所々に作られている中で、中三の二学期に転校して来た俺がぼっちなになるのは当然のことと諦めているし、高校受験前に友達との関わりなんて煩わしいことに積極的になる気分でもなかった。
とはいえ、周りの席には話をする程度のクラスメイトぐらいはいるし、体育の授業では柔軟体操に付き合ってもらえる程度に協調性をアピールしてはいるが、内心では進んで友達関係を築こうとは考えていない。
今はまだ八時二十分過ぎ、始業時間は八時四十五分からなので、多少は時間の余裕があるのだが、三年五組の教室には、既に三分の二の生徒が登校している。
他のクラスに比べたら真面目な人が多いということなんだろう。
俺に遅れること、約五分後に華やかな三人組の女子が登校してきた。久島香奈枝と橋本美鈴、沢村愛花という学年での有名人三人組だ。
いつも時間ぴったりに現れるのは、沢村と校舎前のバス停で合流してから校門をくぐるためで、このクラスでなくても有名な話だ。
だから、俺は定時なるとこの三人に、こと橋本美鈴に会わないようにトイレに出て行く。この有名人達の中に従姉妹がいるだなんて、誰にも知られたくないという思いからだった。
あいつは転校初日から俺を見つけては、手を振る。だから美鈴に、二度と挨拶しないようにメールでお願いしたのだが、「私の勝手でしょう」との返事が即答で返って来た。それ以上は何も言えず、自分から仕方なく教室から避難しているという次第となのである。
三人組の人気は高く、他のクラスには、あまり可愛い子がいないため、他のクラスの男子生から、このクラスは不公平だという不満を転入からの短い期間なのによく耳にする。
だが、そんなことはどうでも良かった。リア充なんて、既に死語だと思うが、そもそも全く関係ないし、かすりもしない。
こんな冴えない自分になんて誰も見向きもしないし、それは女子に限らず男子生徒からも同様だった。
美鈴は自分とは正反対な奴で、つま先から頭のてっぺんまで非の打ち所がない容姿に、学力を加え、手先も器用で、およそ欠点があるとは思えない。
今のところ同学年に人気者の従姉妹という関係は、退屈な学校生活の格好のネタになると容易に想像できるため、美鈴には誰にも話さないように言い聞かせている。
というのも、美鈴は俺とは正反対の人と関わるのが好きなタイプだったから、それに巻き込まれないように予防線を張ったまでのこと。
つまり、僕と連れになるともれなく美鈴とも仲良くなれるという図式を構築したくなかったわけだ。
だから、学校内で美鈴には必要な時以外は話しかけないようにも言っている。
……のだが、なぜか、あいつはよく話し掛けてくる。
その際は迷惑だと言わんばかりに素っ気なくあしらうのだが、あいつの粘り強さには負けてしまう。
密かに進学する高校は美鈴とは違う所にしようと心の中で強く思った。