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ソウセキ2017  作者: 多田野 水鏡
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結果と誓い

 お待たせいたしました! 本編再開します!

 ……別の作品も投稿したいので、また停滞することもあるかもしれませんが、温かい目で見守ってやって下さい。

 翌日の時間割は、丁度テストを行った五教科と総合だった。今日、学期開けテストが返ってくるのだ。一時限目は国語、二時限目は理科だった。これらの時間は、特に何を思う事もなかった。そんな中、次の数学のテストが返ってくるまでは柄にもなくドキドキしていた。理科と数学の間の休み時間から、落ち着かない。元々、オレはテストの点数など一々気にしない性格だ。しかし、今回は違う。ここで情けない点数を取っては、勉強会を提案してくれた柚菜に対して申し訳がない。

 名前を呼ばれて教壇の前に向かう。数学教師が、オレに答案を返す。

 恐る恐る点数を見る。用紙の右上には、赤いペンで『68』と書かれていた。つまり、今回の数学の結果は68点という事だ。別に誇れる点数ではない。しかし、今までのオレの数学の成績を見ると結構な成長と言って良いのではないだろうか。少しだけ、数学が嫌いではなくなった。

 席に戻る途中、柚菜と目が合った。この点数は、柚菜のおかげで取れたのだ。オレは、目で感謝を告げる。柚菜にも、どうやら伝わったらしい。

 

 昼休み、オレと雪華、柚菜と美音といういつものメンバーで昼飯を食べていた。

「桜、数学どうだった?」

 雪華が尋ねる。オレは、待ってましたと言わんばかりに返す。

「かなり上がったよ、柚菜のおかげだね」

 点数を教えてやると、揃って驚いていた。そんなに驚くこともないものだ。いつまでもオレの話ばかりしても仕方がないだろう。

「美音、国語はどうだった?」

 美音に話を振る。

「手ごたえあり、ってところかな」

 前の勉強会では、確か雪華が美音に古文を教えていたはずだ。美音の奴、何度か雪華に視線を向けている。教えてくれたことに、礼を言いたいのだろうか。雪華は、美音の視線に気付いていないようだ。

「ね、ねぇ、空樹さん……」

 ゆっくりと、口を開く。やっと雪華が美音の視線に気づく。

「教えてくれたの、ありがとね……」

 普段よりは、しっかりした口調で礼を言う。どうやら、少しは雪華に慣れたようだ。

「い、いや、蘇芳がちゃんと、ど、努力したからだろう。あ、アタシは別に……」

 当の雪華は、どうやら照れているらしい。夏のことも有り、オレは雪華をからかいたくなった。

「やぁ、雪華の奴照れてらぁ。可愛いなぁ」

 手を叩いてやる。すると雪華は、黙ってオレの頭を叩いた。オレが頭を押さえる横で、柚菜は大きな声で笑う。美音はその横で、静かに笑っている。

 良い連中だな。改めて思う。中学や高校の時にコイツ等みたいなのに会えていたら、オレの人生ももう少しくらいは楽しかったかもしれない。普通の社会人は、再び高校生として生きることは出来ない。しかし、オレは違う。こうして、再び高校生として生きている。

 こんな他愛もない日々、オレにとっては夢に過ぎなかった日々、しかし何よりも尊いその時間を、守り抜いてみせる。三人の笑顔を見ながら、オレは一人、心の中で誓った。


 五限は理科で、例によって試験が返ってきた。これで、五教科全て返ってきたことになる。勉強会の甲斐あってか、どれも期末試験より点数が上がっていた。

 五限と六限の間の休み時間、オレはオタク連中と喋っていた。柚菜たちは勿論オレの大事な友達だ。しかし、オレの中身は男なのだ。たまには、男同士でお喋りという奴をしたいのだ。柚菜と美音は、別の女子と喋っている。あの二人も、オレばかりに構っているわけにはいかないだろう。オレ一人で占領しては、他の女子連中が可哀想だ。雪華は、教室にはいない。トイレにでも行ったのだろう。コイツ等の話は、雪華には興味がないだろう。オレの隣にいさせて気まずい思いをさせるよりは、ここにいない方が気楽だろう。

「やっぱり、このグループの曲は良いよね」

 ジャガイモほどではないが、太った男子がオレに音楽プレイヤーを見せる。コイツ等、『仮免ドライバー』のみならず、好きな音楽グループもオレと同じなのだ。だから尚更話が弾むし、携帯でも連絡先を交換するまでに至った。オレは中身が男なので何でもないが、それを知らないコイツ等からしたら、こんな美少女と連絡先を交換出来たのだ。こんな事を言っては申し訳ないが、女とは縁の無さそうな連中だ。さぞ嬉しいだろう。尤も、入れ替わる前(生前)彼女を作れなかったオレが偉そうに言えたものではないが。

「この元気で可愛い声、癒されるなぁ」

 そう言いながら頷くのは、細身の眼鏡男だ。顔といい髪型といい、コイツもいかにもオタクらしい見た目だ。確かに、このグループ、『フォー・カード』の歌は元気をもらえる。コイツが言った元気で可愛い声で歌う前向きな曲に、オレは何度も助けられた。

「特にこの曲が好きだなぁ」

 プレイヤーのスキップボタンを押し、曲を二、三ほどとばす。再生される曲は、このグループの中でも特に人気の曲だ。オレも『フォー・カード』の曲の中で、これが一番好きだ。せめてオレの音楽プレイヤーだけでも持って来られれば良かったのに。この曲を聴くたびに、そんな贅沢な気持ちが顔を覗かせる。

 そんな事を思っていると、六限を知らせるチャイムが鳴る。太ったのは慌ててプレイヤーをズボンのポケットに押し込む。オレもさっさと席につく。

 椅子に座りながら、ふと思う。やはり、趣味の話ができる人間が身近にいるというのは良い事だ。その話しか出来ないというのは、確かに問題だろう。しかし、人間とは固いばかりではうまく生きられないように作られている。上手い事ガス抜きをしないと、どこかしらが壊れてしまう。そしてどこかが壊れるとまた別のどこかが壊れ、しまいには取り返しがつかない所まで行ってしまう。

 それが分からない者に上に立たれるのは中々の不幸で、オレもその一人だった。就職活動というものは、適当にやるものではない。やり直す機会が出来たのだから、このまま桜として生きて桜として就職するのなら、真面目に勤め先を探そう。密かに、そう決心した。

 ……なんで一月の半ばに八月終わり頃の話を書いているのだろうか。

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